休んでいるのにつらい……。苦痛の内訳と心を落ち着かせる答え

寂しげな女性

「休んでいるのにつらい」
「休みをもらったものの、休めている気がしない」

うつ病で休養をすすめられても、なかなかうまく休めないことってありますよね。

そういう気持ちはどうやって落ち着かせたらいいのでしょうか。

「休んでいることが苦痛なのはなぜ?」

その理由を整理することで、何かヒントが見つかるかもしれません。

「つらい」の内訳と私なりの答え

休んでいるのに心が休まらないどころか、つらくなってしまう理由。

よく耳にする声や、私自身が経験したものを9つ挙げました。

・社会から取り残されるんじゃないかという焦り
・ダメな自分を責めることしかできない
・「こんなことしてる場合じゃない」というもどかしさ
・周囲の目が気になる
・休めと言われるのがつらい
・周りに迷惑をかけるのがつらい
・期待に応えられないのがつらい
・家にいるのがつらい
・何もしないなんて考えられない

これらの思いに対する私なりの答えを書いていきます。解決策よりは共感が多めです。

長いので、気になる項目を適当に見ていってください。

社会から取り残されるんじゃないかという焦り

特に10代20代前半は、学校の存在が大きいですよね。同世代の自分と似たような人たちが、どんな道に進むのか、否が応でも目に入ってきます。

同じようなことをやっているのに、自分だけができていない。

こういうときの惨めさはかなり堪えます。

わかりやすい例としてパッと思いつくのは、体育の授業。私は運動神経が悪かったので、いつもみじめな思いをしていました。自分だけができなくて落ち込む。それが、今度は人生単位になるわけです。みんな当たり前のように仕事をして、実績を積み重ねて、出世して、結婚して、子どもが生まれて……。

今やこの「昔ながらの幸せコース」も当たり前ではなくなりつつありますが、それでも一般的にはこの生き方が主流で好ましいものとされています。

主流から外れること、みんなが当たり前にできていることができないこと、幸せを得られず孤独に死んでいくこと。

考えれば考えるほど、暗くなってきます。焦りが生まれるのも当然ですよね。

ダメな自分を責めることしかできない

「みんなが当たり前にできることさえできない自分はダメ人間」

そうやって自分を責めてばかりいると、つらい気持ちはどんどん大きくなります。

だからといって、自分を責めることをやめられない。なぜならば、私はダメな人間だから。

そんな考え方になっていると、悲しみや絶望ばかりが強まります。すると、良い結果を遠ざけてしまい、悪循環に陥ります。

自分を責めずにはいられない。その気持ちはわかる。わかりすぎるぐらいわかる。

でも、だからこそ、苦しい気持ちを手放すために、できることから始めませんか?

「私なんか」が口癖のあなたへ その痛みを和らげるための提案があります
ちょっとした工夫一つで、気持ちが少し軽くなることもあります。

自分をいじめていませんか?自責の痛みを和らげる5つの作戦
痛みを和らげるために今日からできること。そんなに自分を痛めつけなくてOK。

走れない自分を執拗に責め続ける人に伝えたいこと
できないのはあなたのせいじゃない。甘えでもない。

ダメな自分を責めずにはいられない?悲愴感を和らげ肯定する言葉
相手のことをいつも第一に考えて、自分の気持ちを後回しにしてしまう人に。

「こんなことしてる場合じゃない」というもどかしさ

「もっとバリバリ働いて、社会の役に立ちたい」

そんな思いが強いと、休んでいる現状を肯定するのは難しくなります。

休んでいることは「こんなこと」なんかじゃない。でも、「ダメだ」と言いたくなる気持ちはわかる。だって、休んでいたいわけじゃないんだもの。もっと頑張りたいんだもの。

でも、よくよく考えてみると、自分の本心が違うところで見つかったりします。

なぜ頑張りたいのか。なぜバリバリ働きたいのか。なぜ社会の役に立ちたいと思うのか。

答えは、認められたいから。私の場合はそうでした。

認めてもらうために手っ取り早いのが、仕事をすること。

もちろん、お金を稼ぐことも大きな目的ではあるのですが、「認められたい」「“ダメ”な人になりたくない」という気持ちが強い意欲につながっていたことは間違いありません。

で、気づいたら、それが「仕事ができなければ認められない」「働かないのはダメな人」という認識にすり替わっちゃった。

働くことは、傍を楽にすることだと言います。それはつまり、会社に属して仕事をするだけが働くことではないということです。

休んでいても、誰かの気持ちを楽にすることはできるはず。もちろん、症状が重いときには難しいことですが、つらそうな顔をしていたあなたがふと笑顔になったとき、その姿を見るだけで喜びを感じる人がいることも事実。

だから、自分を大切にすることも一緒に考えていきたい。

それがこれから生きていくためのパワーの源になるはず。

いま必要なことは何か?
なぜそれが必要なのか?
自分の人生の課題は何か?

この機会にじっくり考えてみませんか?

周囲の目が気になる

ずっと家で休んでいると、外出するのが怖くなります。

世間の目が気になる。
親戚、友人知人、ご近所さんは何と思っているだろうか。
昼間にぶらぶらしていたら、遊んでいると思われるんじゃないか。

考えれば考えるほど、悪い考えばかりが浮かびます。

「人は人、自分は自分」
「病気だから仕方ないことなんだ」

いくら自分に言い聞かせても、簡単には納得できませんよね。

でも、何も悪いことをしているわけではない。多数派に入れない生き方は、ちょっと肩身が狭いけど、あなたは何も悪くない。

少しずつ少しずつ、自分のこと、受け入れていけたらいいのかなと思います。

「普通に生活したいだけなのに」を軽くする3ステップ
周囲の目、世間、普通、常識 etc. について一考。

良い子になろうと頑張ってきた人の息苦しさ・原因は何か?
もし周囲の目を気にすることを求められてきたのだとしたら……。

人の目が気になりまくりの対人過敏と双極Ⅱ型障害
人の思惑や言動を瞬時に察知する能力が今はうまく機能していないだけなのかも。

休めと言われるのがつらい

家族や周りの人は優しい。「今はゆっくり休めばいいよ」と言ってくれる。なのにつらいのはなぜ?

もっと頑張りたいと思っているから。
もっと素敵な自分でありたいから。
もっとみんなの役に立ちたいから。

その優しさや向上心はとても素敵なことです。

でも、今はそれを発揮するための準備期間。

みんな、あなたの気持ちを理解した上で、「休みなね」と言ってくれているんだと思います。

周りに迷惑をかけるのがつらい

人様に迷惑をかけてはいけません。そう教えられてきた人は多いと思います。

だから、誰かに負担を強いてしまう状況は申し訳ないと思うし、自分がとっても悪い人間に思えてしまう。

でも、誰にも迷惑をかけずに生きていくことはできません。

それに、自分は「迷惑なことをしている」と思っていても、相手が「迷惑」と思っていないこともあります。

大切な人に対して引け目を感じているならば、その気持ちを「ありがとう」の言葉にかえて伝えましょう。そして、元気になったら、恩返しをしましょう。

そのためにも、今は治療に専念(しっかり休む)。

期待に応えられないのがつらい

大切な人の喜ぶ顔が見たい。そのために頑張ることは素敵なことですよね。その思いやりと優しさは尊い。

ただ、そのために自分を犠牲にしてしまうのは良くありません。

確かに、期待に応えられないことで、相手をガッカリさせてしまうこともあるかもしれません。

でも、相手を喜ばせるためだけに、あなたは、私は、生きているのではない。

まずは、自分が納得できること。

自分を喜ばせることで、その喜びをお裾分けする。

そんな思いやりの形も素敵なことだと思います。

家にいるのがつらい

うつ病への理解がなかったり、「普通」であることを求める人が家にいれば、当然肩身の狭い思いをすることになります。

休んでいることをなじられる。
「お前が悪い」と責められる。
信頼関係を築けそうにない。

うまくいかないときは、距離を置くことを考えてみるのが良いと思います。症状が重いのであれば、入院を考えるのも一つです。

お金がかかることなので、気軽に変えられることではありませんが、情報収集しながら、少しずつ変えていく準備を始めましょう。

環境を変えることについては、後述します。

うつ病を理解してくれない家族へのアプローチ方法
現状を伝えるためにできること、参考書籍などを紹介しています。

「誰もわかってくれない」 泣きたい気持ちをなだめる3つの方策
気持ちをうまく伝えるための心構えのようなものについて。

図太くなるための3つの作戦が通用しない相手に【人間関係のストレス・嫌がらせ対策】
相手の攻撃から身をかわし、柔らかな心を守る手段をご紹介。

何もしないなんて考えられない

「やらなければ」という思いが強い人ほど、休んでいることに引け目を感じるのではないかと思います。

「休んでいる=怠けている」という意識があると、なかなかゆっくり休むことができません。いつも罪悪感を負っているようなものなので、心は全然休まらない。

「もっと成長したい」という気持ちが強い人は、向上心から生まれる後ろめたさもあるかもしれません。「成長のためには努力が必要。だから、何もしないなんてダメ」というような。

でも、「頑張りたい人ほど休むべし!戦略的休息 3つのテクニック」で書いたように、頑張るためには休息が必要。

頑張りすぎて心身の健康を損ねてしまったときには、ゆっくり心と体を休めることが大事。

今まで頑張ってきた分だけ、しっかり休みましょう。

「頑張る」というのは、成績などのわかりやすい結果だけではありません。

誰も気づかなくても、真面目に、一所懸命やってきた、つらくても我慢してきた。

そういう自分にしかわからない頑張りも含まれます。

自分を縛るものは何?すべき思考・痛みを和らげる7つの技法
自分を苦しめる考え方とそれを取り除く具体策をご紹介。

【うつ病予防のポイント】あなたが注意すべきこととは?
うつ病タイプ別(単極性、双極性、非定型)知っておきたいバランスのとり方について。

ずっと休んでいるのに心が休まらない大きな理由

ずっと休んでいるのにつらいのはなぜか?

ここまでに挙げた「つらい」の内訳をざっくり分類すると、次の3つに分けられます。

  1. 病気の症状
  2. 自分を責めることで生じるもの
  3. ゆっくり休むことが難しい環境

病気を理解し、自分を責める考えをほぐしていくことで、多くのつらさは和らぎます。そのための方法は「ずっと休んでいるのに心が休まらない理由【うつ病休養の仕方】」でまとめています。

ただ、環境に関しては、なかなか変えるのが難しいこともありますよね。

家族の理解が足りなかったり、ゆっくり休める経済状況じゃなかったり……。

ズバリな解決策を示すことはできないのですが、まずは、つらい気持ちにさせられる環境を変える決心をすることが必要だと思います。

距離を置く、逃げるという選択が絶大な効果を発揮することもあるからです。

家族関係の根が深いものについては、煩雑な手続きが必要になってくることもあります。行政や友人知人などの力を借りながら、準備を進めていきましょう。

  • できるだけ遠くに住む
  • 部屋の借り方
    • 保証代行会社を使った手続き
    • 住民票について
    • 引越し
  • 家を出るために
    • 結婚
    • 同棲、ルームシェア
    • 親類の家に間借り
    • 住込みの仕事
    • 入寮できる学校
    • 海外留学
    • 子どもシェルター
    • DV被害者のためのシェルター
    • 入所施設
  • 相談ダイヤルを利用する
  • 植えつけられた呪い(価値観)を改める

など、このあたりはまだまだ勉強不足で、解決につながりそうな答えを見いだせないでいるのですが、問題解決のためにどうしたらいいのか、これからも考えていきたいと思っています。

自己肯定感を高めるためにはどうしたらいいか考える際に参考になるブログ
いわゆる「毒親」について言及されたブログ記事も紹介しています。

つらさを和らげ心をゆっくり休ませるために

・考えを整理する
・病気を理解する
・環境を整える

まずは、自分の気持ちを整理すること。

自分が置かれている状況を一歩引いて見ることで、激しく揺れる感情を落ち着かせることができます。

とは言っても、そうやって冷静に考えられなくなってしまう精神状態だから休めと指示されているとも言えるわけで、なかなか難しいところではあるのですけれども。

そういうときは、病気のことを知り、なぜ休みが必要なのか、もう一度確認しましょう。

うつ病や関連する病気の本を読めば、その理由がきちんと説明されています。主治医の先生に聞いてみるのも良いと思います。

それを受け止めて納得すれば、きっと少しは気持ちが落ち着くはず。

心の病気は、パッと治るものではありません。よくなったり悪くなったりをくり返しながら回復していきます。

もどかしい気持ちはあると思いますが、焦らず、今の自分に必要なことをやっていきましょう。

気張らず、ゆるゆる過ごす時間も大切です。

 

<参考書籍>
うつ病について学べる本を紹介しておきます。

野村総一郎 (2006)『スーパー図解 うつ病 ― 見ればわかる 心を元気にする知識と方法 (トップ専門医の「家庭の医学」シリーズ)』法研

うつ病がどんな病気か知りたいなら、オールカラーのイラスト・図解つきがわかりやすいです。詳しい説明文を読む気力がなくても、大事なポイントが目立つよう編集されています。うつ病のメカニズムや治療法、再発を防ぐために必要な心構えなど、総合的な内容です。
 

笠原嘉 (1996)『軽症うつ病』 講談社現代新書

「軽症」とありますが、「うつ」について広く解説されています。うつ病患者さん向けの読みやすい本です。多くの書籍で引用されています。
 

野村総一郎 (2008)『うつ病の真実』日本評論社

野村総一郎先生の文章は読みやすいので(というより私の好みですが)、こちらも挙げておきます。歴史的な背景、生物学から見たうつ病の意味など、「気分障害の真実」をより深く学べます。ただ、不調のときに読むのはちょっと大変かもしれません。

詳しくは「『うつ病の真実』野村総一郎 ― 臨床医が書いたうつ病の概念史」で紹介しています。

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