「困っていることがある。でも、どうすればいいのかわからない」
「漠然とした不安や恐怖でいっぱい。もうダメかも」
そんなモヤモヤを抱えていませんか?
今回は、お悩み解決に役立つ技法をご紹介します。
・認知行動療法
・PDCAサイクル(仕事を改善するための枠組み)
この2つを参考に、それぞれのやり方を組み合わせてまとめました。
<このページで学ぶこと>
・自分が何に困っているか整理する
・自分に合った目標の立て方
・気分別の対処法
<学ぶメリット>
・行動を変えることで、気分に変化が訪れる
・これまでと違う行動を取り入れることで、考え方のバリエーションが増える → 心が軽くなる
・小さな行動を積み重ねることで、自信が持てるようになる
もくじ
全体の流れ
はじめに、「認知行動療法」と「PDCA」について簡単に説明します。
認知行動療法とは
認知行動療法は、うつ病など心の病気に対して用いられる心理療法です。
・思考を変える認知療法
・行動を変える行動療法
それぞれのアプローチから、心身をよい方向に導きます。
認知行動療法の技法はバリエーション豊富です。今回は、行動を変えるための技法を紹介していきます。
PDCAサイクルとは
「PDCA」は、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の頭文字を取ったもの。仕事をうまく回し、より良い成果を上げるための仕組みです。
認知行動療法で提案されているプランも、大体この流れに沿ったものになっています。
行動実験の流れ
以上を踏まえて、問題解決のために何をすればいいか一緒に考えていきましょう。
具体例を挙げながら、以下の流れで説明していきます。
【計画】プランを立てる
自分が何に困っているか整理する
取り組む課題を選ぶ
問題解決のための行動プランを考える
【実行】チャレンジする
【評価】結果をふり返る(検証)
【改善】調整する(伸長・中止・継続)
【Plan】プランを立てよう(計画)
それではさっそく、悩みを解決するためのプランを作成していきましょう。
まずは、PDCAの「P」、「計画(Plan)」の流れを3ステップで説明していきます。
ステップ2 取り組む課題を選ぶ
ステップ3 問題解決のための行動プランを考える
ステップ1 「困ってることリスト」を作成する
- 今、気になっていることは何ですか?
- 誰が、何が、いつ、どこで、なぜ、どのように?
- 足りないものは何ですか?
- 何が障害になっていますか?
- どんな結果になればOKですか?
まずは、思いつくものをどんどん書き出していきましょう。
ここでは例として、うつ病療養中の悩みについて考えていきます。
ざっくりした内容だと具体的なプランを立てにくいので、何が必要かピンとこない場合は、さらに詳しく課題を書き出していきましょう。
ステップ2 取り組む課題を選ぶ
ステップ1で書き出した問題の中で、次の4つを満たすものを選びます。
それは……
- あなたにとって重要ですか?
- 解決可能ですか?
- 具体性がありますか?
- 将来につながりますか?
重要な課題が多すぎて選べない場合は、次の2点に注目して絞り込んでください。
① 主語が一人称のものだけ選ぶ
② 過去の悩みは除外する
変えられるのは自分と未来。他人と過去は変えられません。
「あの人が」「周囲の人が」「みんなが」「世間が」で始まる悩みを削除するだけでも、かなり選択肢は絞り込まれると思います(参考:簡単3ステップ!あなたを支配するたくさんの悩みを減らす方法)。
ここでは、社会復帰を課題として考えていきます。
失敗をくり返さないための下準備
成功確率を高めるために、選んだものについて、以下のポイントもチェックしてみましょう。
- これまでに同じような問題に直面したことがありますか?
- そのときにどのように対処しましたか?
- それは成功しましたか?
- 何がよかったのでしょうか? 何がよくなかったのでしょうか?
- 同じ失敗をくり返さないためにはどうすればいいでしょうか?
自分が何に困っているか整理し、課題をピックアップできたら、次は、その問題を解決するための方法を考えていきます。
ステップ3 問題解決のための行動プランを考える
問題をはっきりさせる
取り組む課題が決まったら、問題解決の妨げになっているものは何か、さらに詳しく考えていきます。
ここでは「仕事ができない。社会復帰できるのか」という悩みについて、もう少し具体的に考えてみましょう。
これらの問題を解決するにはどうすればいいでしょうか?
アイデアをどんどん出す(ブレインストーミング)
より良いアイデアを出すための技法として使われる「ブレーンストーミング」。企画会議などで取り入れられる方法です。
「質より量」の気持ちで、「どうすれば問題を解決できるか?」アイデアを洗い出します。
- とにかく思いついたことをたくさん書き出す
- 多ければ多いほどいいので、深く考えず書き出す
- 実現できそうもないものもいったん書き出す
- 「バカバカしい」と思うことも、どんどん書き出す
- 書き出した悩みの一部を変えたり、くっつけたりして新たなアイデアにする
以上のポイントを参考にしながら、手を動かしてみましょう。
まずは、「仕事ができない。社会復帰できるのか」という悩みについて。
ここでは、「緊張して電話ができないこと」を具体例として、さらに詳しく考えてみましょう。
行動アイデアを絞り込む「ポイント加算シート」
アイデアが出尽くしたら、行動アイデアを絞り込みます。
今の自分に合った解決策を見つけるために役立つのが「ポイント加算シート」です(参考:『やさしくわかる認知行動療法』p.83)。
評価の基準は次の次の4つ。
- 解決度(解決できそうな行動ほど高得点)
- 感情的好ましさ(気分がよくなりそうな行動ほど高得点)
- 時間・労力(気軽にできるものほど高得点)
- メリット/デメリットの比較(メリットがデメリットを上回るほど高得点)
-5点を最低点、+5点を最高点として評価します。
作戦を練る(プラン作成)
行動アイデアを選んだら、さらに詳しいプランを練っていきます。
プランを作成する際、次のようなワークシートを利用すると便利です(参考:『こころが晴れるノート』pp.82-83)。
- できる範囲で、少しずつ取り組む
- 5W1Hを明確にして、プランを記入する
- 無理なくできるレベルのアクションから始める
- いつもの対処法は避け、新たな行動パターンに変える
- 結果の予測と対処は、思いつく限り書き出しておく
- 他の人の意見も聞いてみる
実験中に起こりそうなトラブルを以下のように書き出してみると、「自分は何に不安を感じているか」よくわかります。対処法を一緒に書いておけば、「大丈夫」と思えるお守り代わりになります。
目標設定や行動アイデアの出し方は「目標・計画を上手に立てるコツ(仕事術やライフハックが好きな人向け)」でも詳しく紹介しています。
【Do】いってみよう!やってみよう!(実行)
行動プランができあがったら、さっそく実行してみましょう。
これはあくまでも実験です。
実験なので、失敗しても問題なし。失敗だって一つの成果です。
ある行動を起こすことで、どんな反応や結果が得られるのか?
研究者になったつもりで実験し、観察・分析・考察してみましょう。
不安や緊張が強いときは、シミュレーションで心の準備を。実践の前に、アクション場面を頭の中でイメージして、くり返し練習しておきましょう。
【Check】結果をふり返ろう(検証)
行動実験が終わったら、結果をまとめましょう。
- 実験をしてみて、どんなことが起こりましたか?
- 実験したあとの気分はどうでしたか?
- 実験したあとの体の感じはどうでしたか?
- 相手はどんな反応でしたか? 発言や態度はどうでしたか?
実験を通してわかったことを振り返ります。
【Action】次につなげよう(改善・伸長・中止・継続)
ちょっとした行動実験であれば、振り返りで終わってもいいのですが、せっかくなら今回の学びを次につなげたいところ。
そのためにやっておきたいのが、行動プランの調整です。
うまくいった場合、うまくいかなかった場合、それぞれの要因を書き出してみます。
- プランの内容は具体的ですか?
- 日時や場所が明確になっていますか?
- 難易度が高すぎませんか?
- 簡単に実行できるように行動が細分化されていますか?
- 問題となる考え方に直接結びつく行動ですか?
- 結果を過小評価していませんか?
これらの振り返りをもとに、再びプランを作成。
何度もアクションを実行し、確信度を100%に近づけていきます。
【ケース別】行動を変えるテクニック
行動プランを立てるだとか、振り返りをして計画を調整するだとか、正直めんどくさいし、うまくいかないこともあると思います。
そんなときは、そのときの気分に合わせた対処をしていきましょう。
ここでは、3つのケースへの対処法をまとめます。
【ケース2】不安や恥ずかしさで行動できない
【ケース3】行動をつい先延ばししてしまう
以下、行動するための方法を紹介しますが、「休憩する」「今日はやめておく」というのも一つの選択肢です。体調と相談しながら、じっくり取り組んでいきましょう。
【ケース1】気分がひどく、アクションを実行できないとき
「週間活動記録表」で日々の活動パターンを記録し、できるところから変えていきましょう。
- 朝起きて歯をみがくだけでもOK。何か1つ行動してみる
- 思い切って行動することが気分改善への第一歩
- 気分がラクになる行動を増やすことで、つらさが徐々に軽くなる
(参考:『こころが晴れるノート』pp.90-91)
「何もしたくないとき」は、やることを一つ紙に書き出してみるのがおすすめです。それさえも難しいときの対処法は「落ち込んで力が出ない?次の行動につなげる9つのお手軽アクション」で紹介しています。
【ケース2】不安や恥ずかしさで行動できないとき
「不安段階表」を使って、不安や羞恥心を克服しましょう。
- 不安度の高い順に行動案を書き出す
- 不安の少ない行動(不安度の低い項目)からチャレンジしてみる
- 家族や友人に協力してもらうのも◎
- 回避行動を続ける限り不安は克服できないことを理解する
不安の少ない行動から取り組むことで、「とんでもなく恐ろしいことは起こらない」とわかります。
(参考:『やさしくわかる認知行動療法』p.90)
【ケース3】行動をつい先延ばししてしまうとき
「今はやる気がしないから」とついぐずぐずしてしまうときは、そのときの考えを紙に書き出してみましょう。
その際、次の2つのワークが役立ちます。
(1) 先延ばし行動のメリット・デメリット比較表
先延ばしするメリット、デメリットを書き出して、自分にとってベストな選択を見つける方法です。
詳しくは「ネガティブな考えをマイルドにするダブルカラム法」で説明しています。
(2) 難易度・満足度シート
やらなければならなことが困難に思えるときは、行動を細分化して実行しましょう。
やる前とやった後の難易度、満足度を比較することで、自分が必要以上にネガティブな予想を立てていることに気づけます。
例)
【状況】散歩に出かけたいけれど、気分が乗らない
【目標】15分の散歩
詳しくは「何をするのもおっくう?できない悪循環を断ち切るための記録シート」で説明しています。
- 気軽にやってみよう
- ゆっくり、一回にひとつずつ取り組もう
- 挑戦の機会と考えて、成長のために役立てよう
- うまく解決できれば自信が出てくるだろう
- 今回解決できなくても、何が問題かはっきりするだろう
まとめ
<行動実験の流れ>
【計画】プランを立てる
― 自分が何に困っているか整理する
― 取り組む課題を選ぶ
― 問題解決のための行動プランを考える
【実行】チャレンジする
【評価】結果をふり返る(検証)
【改善】調整する(伸長・中止・継続)
ここまでごちゃごちゃ書いてきましたが、正直なところ、このやり方はかなり面倒だと思います。問題を解決するどころか、やる気を失ってしまうこともあるかもしれません。
でも、難しいことは何もありません。
伝えたいことはただ一つ、
「とりあえず行動する」
たったこれだけです。
まずは思いついたことを一つやってみる。うまくできたら、そのやり方を継続する。うまくできなかったら、他のやり方を試す。これも立派なPDCAサイクルです。
「ちょっとした実験のつもりで気楽に試してみよう」と思ってやると、不安や緊張がほぐれます。
効果が証明されると、やる気が出てくるし、自信もつきます。これまでとは違うやり方を取り入れることで、思考・行動のバリエーションも増えます。
……まあ、その好循環が生まれるまでが大変なんですけどね。言うは易く行うは難し、です。
新たな思考・行動パターンの定着には毎日のトレーニングが大切。
でも、がんばりが必要なトレーニングは、なかなか続かない。
だからこそ、まずは気楽に。
行動を変えることで訪れる気分の変化に注目しつつ、できることから少しずつ(可能であれば楽しみながら)やっていきましょう。
さらに詳しい目標や計画の立て方は次回紹介します。
>>次のページ:目標・計画を上手に立てるコツ(仕事術やライフハックが好きな人向け)
【不安・緊張・恐怖シリーズ】
- 失敗が怖い、痛い目に遭ったらどうしよう…不安、回避的な態度を克服するには?
- イヤな気分を和らげ、自分専用の答えを見つける方法【お悩み解決の道しるべ】
- 感情の法則を知り、緊張・不安を味方にしよう
- うまくいかないのはなぜ?7つの理由と対処法
- 不安・緊張・恐怖を和らげる7ステップ
- 悩みを解決するためのアクションプラン【実践編】
- 目標・計画を上手に立てるコツ
<参考書籍>
大野裕 (2003)『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』創元社
竹田伸也 (2012)『マイナス思考と上手につきあう 認知療法トレーニング・ブック ── 心の柔軟体操でつらい気持ちと折り合う力をつける』遠見書房
福井至 貝谷久宣監修 (2012)『図解 やさしくわかる認知行動療法』ナツメ社
岡村拓朗 (2017)『自分を劇的に成長させる!PDCAノート』フォレスト出版
冨田和成 (2016)『鬼速PDCA』クロスメディア・パブリッシング (インプレス)
※このページは特に『こころが晴れるノート』と『図解 やさしくわかる認知行動療法』を参考にしました。
【こちらもあわせてどうぞ】
・心身を軽くするヒント集『図解 やさしくわかる認知行動療法』
・あなたが仲良しのユガミンは?『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック』