「緊張して失敗してしまった」
「不安や恐怖が強すぎて逃げ出したくなる」
そんな経験をすると、勇気を持って行動を起こすのが難しくなりますよね。うまくいかない経験が続けば、自信も失ってしまいます。
・なぜうまくいかないのか?
・不安、緊張、恐怖心にどう対処すればいいのか?
以上の2点を前回の投稿「うまくいかないのはなぜ?7つの理由と対処法」でまとめました。
今回は、より具体的な対処法をご紹介します。
前回に引き続き、『緊張して失敗する子どものためのリラックスレッスン』を参考にしています。プラス、これまでに私が調べたこと、実践して効果があったものなどもあわせてまとめています。
緊張・不安を和らげる7ステップ
もくじ
ステップ1 自分に合った目標を立てよう
まずは、無理なくできることから始めましょう。
上手に目標を立てるコツは次の3つ。
(1) 期限を決める
(2) 数字で表現する
(3) 三段階に分ける
いくつか例を挙げてみます。
(1) 期限を決める
・3/31までに○○を実行しよう
・6か月後に体重○キロ減を目指そう
(2) 数字で表現する
・タイムを○秒縮める
・テストで平均○点以上を目指す
・毎日○分散歩する
(3) 三段階に分ける
中期的な目標:「いつまでに、何をできるようにしたいか」という計画
短期的な目標:すぐに取り組める具体的な課題
<長期的な目標>
・○○学校に合格する
<中期的な目標>
・定期テストで平均65点以上を目指す
<短期的な目標>
・参考書を1日1ページ進める
・単語を5個覚える
いきなり本格的な目標を考えるのは難しいので、まずは、すぐにできる簡単な目標を立てることから。
肩の力を抜いて、気軽にやっていきましょう。
ステップ2 くり返し練習しよう
「できること」を増やすために役立つのが「練習」です。
数をこなして、経験値を積み重ねていきましょう。
たとえばコミュニケーションの練習なら
面接や発表会、日常の対人場面などを想定した練習です。
以下のポイントを意識しながら、リハーサルしてみましょう。
- 目を合わせて話す
- 目の少し下あたりを見る
- 返事をするときは目を見る
- 話し方を練習する
- 声の大きさ、話すスピードに注意する
- 話す内容をあらかじめ考えておく
- 動画を使って、自分がどんなふうに見えているか確かめる
- 「いやな気持ち」の伝え方を練習する
- 「自分はこう思った、だからいやなんだ」と伝えるようにする
- 「私は」+感情で語る
「ストレス軽減!人間関係を改善するレッスン」の後半で、自分の気持ちを相手に伝えるポイントを紹介しています。
練習のモチベーションを上げるいろいろな工夫
(1) 特性(得意・不得意)を理解する
「苦手」を無理やり克服しようとすると、つらくなってしまいます。やる気を高めるためにも、「得意」をどんどん伸ばしましょう。
自分の強みを見つけるヒントは「自信喪失中の私を励ましてくれたのはストレングスファインダーでした」で紹介しています。
(2) 動画を活用する
発表会や面接の練習をする場合は、動画を使ってみましょう。
本番さながらの状態で撮影した動画を後から見直すことで、「自分がどんなふうに見えるか」チェックすることができます。
自分の姿を動画で見ると、最初はすごく気持ち悪く感じますが、「ふるまいは思っているより変じゃない」ということがわかるはずです。
客観的に見ることで、冷静に改善点を見つけることもできます。
(3) 「ごほうび」を活用
がんばりを一目でわかるようにすると、モチベーションを上げることができます。
例1)
例2)
「目標をクリアできたらシール1枚」
「シールが10枚たまったらアイス1個と交換」など
モチベーションを保つ記録方法の工夫は「脱・三日坊主!モチベーションを保って長く続ける5つの工夫」でも紹介しています。
苦手をカバーする手立て(ちょっと専門的な練習法)
他にもこんなアプローチがあります。気分障害や不安障害の治療で使われる手法です。
- ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)
感情や思考を無理にコントロールせず、受け止める - エクスポージャー法
思い切ってやってみることで、不安や恐怖を克服 - SST(ソーシャル・スキルス・トレーニング)
他者をモデルにし、社会的スキルを高める - アサーション・トレーニング
円滑な人間関係のための、自己主張のしかたを学ぶ - EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)
トラウマとなっているできごとを乗り越える - ストレス免疫訓練
ストレスに強くなるための、新たな認知行動療法プログラム
専門用語が使われていて、取っつきにくく感じるかもしれませんが、専門家とともに取り組んでいくことで、一人では難しかったアプローチができます。
認知行動療法やアサーション・トレーニングは、わかりやすい一般書が多く出ているので、自分のペースで学ぶこともできます。
ステップ3 心配を追い払おう
自分の中でムクムク広がる不安や恐怖。
『緊張して失敗する子どものためのリラックスレッスン』では、それらの恐れを「心配おばけ」と表現しています。
「おばけなんてないさ」の歌にもありますよね。「寝ぼけた人が見間違えたのさ」と。
そうは言っても、怖いものは怖い。
というわけで、「心配おばけ」を退治するために、実践したいのが次の方法です。
「心配おばけ」の正体を見抜く方法
(1) 心配していることを書き出す
「明日のこと」「この先1週間のこと」など、期間を区切って具体的に書き出します。
(2) 心配が当たったか、あとでチェックしてみる
期間が過ぎたら、心配が当たったかどうか一つずつチェックします。
実際に起きたこともメモしておくと、自分が作り出していた「心配おばけ」がどれくらいのレベルか知ることができます。
予測と結果のズレが大きいほど、「心配おばけ」に怯えすぎ、と言えそうです。
「心配おばけ」が本物だったらどうする?
不安で不安でどうしようもないときは、心配の中身について、さらに詳しく考えてみましょう。
最悪の事態を想定し、その対処法を考えておくことで、漠然とした不安感が和らぎます。
(1) 最悪の予想をしてみる
(2) 本当になったとき、できることは何?
(3) 予測は当たった?
ステップ4 体の力を抜こう
緊張すると、体がガチガチに固まり、呼吸が浅くなります。
そんなときは、深呼吸をして、体の力を抜いてみましょう。腕を伸ばしたり、首を回したりするだけの簡単なストレッチでも効果があります。
動作を通してリラックスする
・肩上げ体操
・肩開き体操
呼吸を通してリラックスする
・呼吸法
・4・4・8呼吸法
こわばった筋肉をゆるめてリラックスする
・漸進的筋弛緩法
自己暗示でリラックスする
・自律訓練法
漸進的筋弛緩法、自律訓練法、呼吸法のやり方は、「睡眠障害の治療法(行動療法など)」で紹介しています。
ステップ5 心のスイッチを用意しよう
いざというときに備えて、気持ちを切り替えるスイッチを用意しておきましょう。
① 不安になったとき用
② ネガティブになってきたとき用
この2種類の切り替えスイッチで対処します。
①「やるぞ!」気持ちを高めるスイッチ
お気に入りの言葉や動作で気分をチェンジ。
かけ声をかけたり、軽く動いて、気持ちを切り替えましょう。
かけ声で切り替えスイッチON!
・「気合いだ!やるぞ!がんばるぞ!あとは全力を出し切るだけだ!」
・おなかの底から大きな声を出すことで、体を戦闘モードに
・しっくりする言葉をスイッチにする
・成功のイメージを持ちながら
軽く動いて切り替えスイッチON!
・その場で足踏みする
・軽くジャンプする
・腕や肩、首をまわす
②「ダメだ」後ろ向きな考えをストップさせるスイッチ
できるだけポジティブに考えましょう。と言っても難しいので、せめて気分がズズズと落ち込んでいくのをストップさせるきっかけを作りましょう。
ストップスイッチで「いやな考え」をリセット!
・簡単なカードを作って携帯する
・「STOP!」の文字が入ったカードを見る
・心を落ち着かせる言葉、前向きな言葉を唱える
・「いい気持ち」になれるモノ・コトを思い浮かべる
・「楽しいこと」「好きなこと」「よい思い出」などなど
ステップ6 よいところを評価しよう
「ダメだ」とガックリ落ち込んでしまっても、実際には「そんなダメじゃなかったよ」ということはよくあります。本人があまりにも過小評価しすぎているパターンです。
- 小さなミスを大げさに考えないこと
- できたことをきちんと喜ぶこと
この2つを意識していきましょう。
どうしても「ダメだ」という思いが拭えないときは、次の方法でしっかり事実を見つめましょう。雰囲気で評価するのはNGです。
次につながる評価のしかた
1.現実的な目標を立てる
2.結果ばかりに注目しない
3.「たいしたことない」と言わない
4.課題をみつける
思い込みを修正する簡単な方法2つ
(1) 事実と気持ちを区別する
悲観的な感情に支配されると、レンズがくもって事実が見えにくくなります。そんなときは、事実と気持ちを切り分けてみましょう。
例えば、こんな言葉をつけ加えます。
「私は何をやっても失敗する」
+ としか思えないほど弱気になっている
「私はどうしようもないダメ人間」
+と考えるクセがある
「みんな私のことを劣ってると思っているに違いない」
+と感じずにはいられない
(2) いい気持ちになる考え方をみつける
手軽にできる方法なので、紙とペンを用意して、実際にやってみましょう。
- 紙の真ん中に1本線を引いてください。
- 左側に、今頭に浮かぶ考えを書き出してください。
- 右側には、別の考えを書き加えてください。
別の考えが見つからないときは、次の質問をしてみてください。
「友達が同じような考えで苦しんでいたら何と言ってあげる?」
「どうやったらラクになれると思う?」
ステップ7 心と体を喜ばせよう
不安、緊張、恐怖に支配されやすい人は、頭の中がネガティブな考えでいっぱいになっています。
そんなときこそ、「楽しい」「好き」「心地よい」を積極的に取り入れて行きましょう。
ハッピーをたくさん詰め込むことによって、ネガティブな考えを押し出す作戦です。
それとあわせて、モヤモヤを上手に受け流す方法も習得しましょう。
「イヤな気持ち」を上手に受け流す方法
1.今感じている気持ちに気づく
2.心と体をリラックスさせる
- 深呼吸
- 目を閉じて「今、ここ」に集中
- イメージの力を借りる
① イヤな気持ちや考えが書かれた風船を手放すイメージ
② 部屋に散らばった不用品丸めてポイッ
③ 目の前に流れる川にモヤモヤを流す
つい力んでしまうときは「ガチガチの心と体をふにゃっとさせる瞑想のコツ」も参考にしてみてください。
心と体をハッピーにする秘訣
- 好きなことをする時間をたくさんつくろう
- 楽しみを増やそう
- 体を動かしてたくさん遊ぼう
- しっかり食べよう
- ぐっすり眠ろう
まとめ
ステップ1 自分に合った目標を立てよう
ステップ2 くり返し練習しよう
ステップ3 心配を追い払おう
ステップ4 体の力を抜こう
ステップ5 心のスイッチを用意しよう
ステップ6 よいところを評価しよう
ステップ7 心と体を喜ばせよう
「うまくできた」という経験がないと、なかなか自信はもてないもの。
不安な気持ちが渦巻けば、「失敗したらどうしよう」「私はどうせダメだから」といった負の考えばかりが浮かびます。
悪循環が始まりそうなイヤな予感……。
このスパイラルを断ち切るためにも、行動を起こしましょう。
「行動を起こす」と言われると身構えてしまうかもしれませんが、難しいことをする必要はありません。確実にできるちょっとしたことから始めましょう。小さな目標を一つ一つクリアしていくことが自信につながります。
まずは、気になるところ、いいなと思ったところから試してみてください。
不安感や恐怖心を克服したい人、何をするにも自信が持てず回避的になっている人の参考になれば幸いです。
【不安・緊張・恐怖シリーズ】
- 失敗が怖い、痛い目に遭ったらどうしよう…不安、回避的な態度を克服するには?
- イヤな気分を和らげ、自分専用の答えを見つける方法【お悩み解決の道しるべ】
- 感情の法則を知り、緊張・不安を味方にしよう
- うまくいかないのはなぜ?7つの理由と対処法
- 不安・緊張・恐怖を和らげる7ステップ
- 悩みを解決するためのアクションプラン【実践編】
- 目標・計画を上手に立てるコツ
<参考書籍>
有光興記 (2013)『緊張して失敗する子どものためのリラックスレッスン』講談社
竹田伸也 (2012)『マイナス思考と上手につきあう 認知療法トレーニング・ブック ── 心の柔軟体操でつらい気持ちと折り合う力をつける』遠見書房
福井至 貝谷久宣監修 (2012)『図解 やさしくわかる認知行動療法』ナツメ社
デビット・D・バーンズ(1990)『いやな気分よ、さようなら ― 自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(野村総一郎ほか訳) 星和書店
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