失敗が怖い、痛い目に遭ったらどうしよう…不安、回避的な態度を克服するには?

窓の外を見下ろす女性

ストレスを感じる状況は、想像しただけでもイヤですよね。

「自分にできるだろうか」という不安。
「失敗して大変なことになるんじゃないか」という恐怖。
「もっとうまくやらなくちゃ」という焦り。
「こんなこともできないなんて」というもどかしさ。
「うまくいかなかった」という落ち込み。
「行動を起こせない私なんか」という自己嫌悪。

恐怖を感じたら、足がすくみます。いくら頭で理解したって怖いものは怖い。過去の苦い記憶がよみがえって一歩踏み出せなくなってしまうことだってあります。

だからといって、問題を避け続けていては前に進めないし、挑戦できない自分に自信を持つことだって難しくなる……。

こんなときどうしたらいいのでしょうか?

今日は、不快な感情に支配され、身動きが取れなくなってしまったときの対処法について考えます。

またつらい状況に陥ったらどうしよう……

先日、こんなコメントをいただきました。

・落ち込んだときのことがフラッシュバックする
・「ストレスを少しでも感じること」が怖い
・できるはずのことに挑戦できず、自己嫌悪に陥る

こうした状況にどう対処すればいいのか、というご質問です。

その答えとして、「自分でできる対策」をこのページではまとめています。

ただ、悩まされているエピソードが深刻な場合は、ここに挙げた方法だけでは解決が難しいかもしれません。

気になったのは「フラッシュバック」という言葉です。フラッシュバックは、突然過去のつらい記憶が鮮明によみがえり、当時と同じような苦痛を感じることです。

フラッシュバックは、精神障害の症状の一つとして挙げられます。命にかかわる災害や事件・事故だけでなく、日常の体験が心の傷(トラウマ)となることもあります。

ただ、最近は日常会話でカジュアルに「フラッシュバック」「トラウマ」という言葉が使われることもあるため、これだけで深刻な状態にあるか判断することはできません。まして私は専門家ではないので、このあたりのことは本やネットで得られる浅い知識にすぎません。

もし何らかの症状によって日常生活や社会生活に支障をきたしているのであれば、専門家による治療やサポートが必要、と私に言えるのはそれくらいです。

では、治療を受けるほどではないものの、回避的な行動パターンが習慣になって困っている人はどうすればいいのでしょうか。

対処法として挙げられるのは、不安と向き合い、ハードルの低いところから少しずつ苦手意識を克服していくことです。

・まずは自分にできることから
・少しずつ挑戦する
・「できた」を積み重ねて自信をつける

この3つは「生活に支障をきたしているわけではないけれど、人生に行き詰まりを感じている」という人にも共通する対策です(もちろんこれ以外の対応が必要な場合もあると思います)。

以上の点を踏まえて、つらい気持ちを和らげるために必要なことをまとめます。

問題点を整理しよう

まずは、抱えている悩みを整理することから始めましょう。

・落ち込んだときのことを思い出してつらくなる
・「ストレスを少しでも感じること」が怖い
・できるはずのことに挑戦できず、自己嫌悪に陥る

これらは、それぞれ「現在・過去・未来」の悩みです。

・落ち込んだときのことを思い出してつらくなる
 → 過去の出来事を肯定できない

・「ストレスを少しでも感じること」が怖い
 → 未来への恐怖心

・できるはずのことに挑戦できず、自己嫌悪に陥る
 → 現状を肯定できない

それぞれの問題を解決するために必要なことは何でしょうか?

過去の失敗・傷ついた経験が尾を引いている
 ―― 傷を癒すには?

怖さゆえ、適切な行動を起こせない
落ち込んだときのことを過剰に恐れてしまう
 ―― 怖さを克服するには?
 ―― 勇気を持って行動を起こすには?

現状を肯定的に捉えられない
できるはずのことに挑戦できない自分にガッカリ
 ―― 自分のことを認めるには?
 ―― 納得感を得るには?

不安、恐怖、落ち込み、自己嫌悪が主なキーワードとなりそうです。

ここでは、

・勇気を持って行動を起こし、怖さを克服すること
・自分のことを認め、「これなら満足かな」と納得すること

この2つをゴールに設定します。

過去の問題は扱いません。原因探しが直接解決に結びつくとは限らないこと、場合によっては専門家の助けが必要なケースもあることが理由です。

もし過去の記憶を思い出してつらくなったときは、「嫌な記憶がよみがえってうわあぁぁぁぁ~!となったときの対処法」を読んでみてください。根本的な解決法ではありませんが、ちょっとは気が紛れるかもしれません。気軽な雑談です。

対処策

・怖さを克服するには?
・勇気を持って行動を起こすには?
・自分のことを認めるには?
・納得感を得るには?

これらの悩みを解決するにはどうしたらいいのでしょうか。

結論を一言で言うなら、「とりあえず具体的な行動に移すこと」

そのための工夫が次のものです。

  1. 小さなことからチャレンジ
    • 自分に合った目標を立てる
    • 練習する
    • 心の切り替えスイッチを用意する
  2. 行動前の不安や恐怖を和らげる
    • 紙に書いて整理する
    • 「心のスイッチ」を切り替える
    • リラックス法を試す
  3. チャレンジ後はよいところを評価する
    • 自分を上手に肯定する
    • 評価するときのポイント

以下、詳しく説明していきます。

1.小さなことからチャレンジ

ベッドの中で「失敗したらどうしよう」「もうダメだ」と考えていると、不安や恐怖がどんどん膨らんでいきます。

それを防ぐためにも、まずは具体的な行動を起こしてみましょう。

立派な目標を立てる必要はありません。どんな小さなことでもいいから、とにかく体を動かしてみることが大事。

不安を減らすのは「成功!」と思える体験です。失敗しても大丈夫。「○○だけど、できた」という経験が活きてきます。

行動を起こすための方法として、提案するのが次の3つです。

(1) 自分に合った目標を立てる
(2) 練習する
(3) 心のスイッチを用意する

(1) 自分に合った目標を立てる

「これならできるかも」と思える目標を立てましょう。

家事やちょっとした勉強などが気軽に始めやすいと思います。

例)
・朝起きたら家中の窓を開けて軽く掃除をする
・夕食後に30分ほど散歩する
・参考書を1日1ページずつ進める

<目標を上手に立てるコツ>
① 期限を決める
「3/31までに○○を実行しよう」
「6か月後に体重○キロ減を目指そう」

② 数字で表現する
「タイムを○秒縮める」
「テストで平均○点以上を目指す」

③ 三段階に分ける
長期的な目標:「こうなりたい/こうしたい」という理想
中期的な目標:「いつまでに、何をできるようにしたいか」という計画
短期的な目標:すぐに取り組める具体的な行動

まずは、一つの目標に集中。焦らず、じっくり取り組んでいきましょう。

目標や計画の立て方は、「悩みを解決するためのアクションプラン【実践編】」で詳しく説明しています。

具体例は「脱・三日坊主!モチベーションを保って長く続ける5つの工夫」でも紹介しています。

(2) 練習する

「できること」を増やすために、くり返し練習しましょう。

練習すれば上手になるし、やればやるほど自信を持ってできるようになります。

例えば、人付き合いに不安を感じている場合の練習メニューは次のようなもの。

<コミュニケーションの練習>
1. 目を合わせて話す
・目の少し下あたりを見る
・返事をするときは目を見る

2. 話し方を練習する
・声の大きさ、話すスピードに注意する
・話す内容をあらかじめ考えておく
・動画を使って、自分がどんなふうに見えているか確かめる

3. 「いやな気持ち」の伝え方を練習する
・「自分はこう思った、だからいやなんだ」と伝えるようにする

(参考:『緊張して失敗する子どものためのリラックスレッスン』)

練習は継続が難しいですよね。嫌にならない工夫をして、楽しみながらやっていけるとベストです。

<モチベーションを保つ工夫>
「苦手」より「得意」を伸ばす
「できない」より「どうやったらできるか」考える
目標をクリアできたら「ごほうび」GET!

脱・三日坊主!モチベーションを保って長く続ける5つの工夫」でも共通のポイントを紹介しています。

(3) 心の切り替えスイッチを用意する

いざ実行しようとしても、失敗が怖くて行動できないこともありますよね。

そんなときは、ちょっとした「きっかけ」を自分に与えてあげましょう。

そのために役立つのが「心のスイッチ」。

①「やるぞ」気持ちを高めるスイッチ
②「ダメだ」をストップさせるスイッチ

この2種類を用意しておくことで、後ろ向きな気分を変えることができます。

①「やるぞ」気持ちを高めるスイッチ

・お気に入りの言葉や動作で気分を変える

<体にアプローチ>
・大きな声を出すことで、体を戦闘モードに
・その場で足踏みやジャンプ
・腕や肩、首をまわす

<心にアプローチ>
・好きな言葉を唱える
・成功のイメージを思い浮かべる

②「ダメだ」をストップさせるスイッチ

・「STOP!」の文字が入ったカードを見る
・心を落ち着かせる言葉、前向きな言葉を唱える
・「いい気持ち」になれるモノ・コトを思い浮かべる
 

2.行動前の不安や恐怖を和らげる

不安や恐怖は、注意を向ければ向けるほど大きくなります。手がつけられなくなる前に、自分の中で肥大した心配を追い払いましょう。

不安や恐怖心を和らげる対処法は次の3つです。

(1) 紙に書いて整理する
(2) 「心のスイッチ」を切り替える
(3) リラックス法を試す

(1) 紙に書いて整理する

頭の中で考えていることを簡単に書き出してみるだけでも、モヤモヤ感は整理されます。

これまでにも整理法をいくつか紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

・悩みを整理する(ブレインストーミング)
>>簡単3ステップ!あなたを支配するたくさんの悩みを減らす方法

・心をラクにする答えを見つける
>>ネガティブな考えをマイルドにするダブルカラム法

・極端な思い込みをチェックする
>>憂鬱の出どころ・不自然な思い込みをあぶり出す「矢印法」

(2) 「心のスイッチ」を切り替える

先ほど挙げた「心のスイッチ」は、さまざまな気分や考えに効果的です。

「コーピング」のキーワードで調べてみると、いろいろなアイデアが見つかります。きっとあなたにピッタリの具体策もあるはず。

>>ぐじぐじと考えずにすむ方法を100個挙げてみた

次に挙げるちょっとした言葉の言い換えでも、気持ちはずいぶん変わります。

気分と事実を区別する

「私は何をやっても失敗する」
+ としか思えないほど落ち込んでいる

「自分はどうしようもないダメ人間」
+と考えるクセが私にはある

「みんな私のことを劣ってると思っているに違いない」
+と感じずにはいられない

すべき思考を変換

「うまくやらなければ」
⇒ うまくできたら素晴らしい

「失敗したらおしまいだ」
⇒ 失敗しないにこしたことはない

「みんなの期待に応えなければ」
⇒ みんなの期待に応えられたらいいな

>>自分を縛るものは何?すべき思考・痛みを和らげる7つの技法

(3) リラックス法を試す

不安や緊張で体がこわばっていると、普段うまくできることでも、失敗してしまうことがあります。

まずは、深呼吸するなどして、体をリラックス。そうすることで、自然と気持ちも落ち着いてきます。

>>元気が出ないとき試したいお手軽リラックス法 ― 不安・焦り・疲労に
 

3.チャレンジ後はよいところを評価する

「とりあえず行動しよう」と言われても、それが一番難しかったりします。

だから、まずは小さなことから。そして、チャレンジできたことを認める。もし行動を起こせなかったとしても、「やってみよう」と思ったことが素晴らしい

こんなふうに、自分のふるまいを肯定的に評価してみましょう。

自分を上手に肯定する5つの工夫

1. 今日できたことを書き出す
2. 淡々と数値を記録する
3. 自己採点に50点プラスする
4. よかった日記を書く
5. 優しい人の顔を思い浮かべて褒めてもらう

詳しいやり方は「自分をいじめていませんか?自責の痛みを和らげる5つの作戦」で説明しています。

目標をクリアできたら自分にご褒美をあげるのもオススメです。

評価するときのポイント

小さなミスを大げさに考えない

ダメ出しをするのではなく、次につながる評価をしましょう。

もし「全然ダメだ~」と思うところがあったら、

「どうやったらもっとよくなるかな?」
「同じ失敗をくり返さないためには何を変えればいいかな?」
「もっとラクにできる方法はないかな?」

と考えて、次につなげる材料にしましょう。

人と比べない

人と比べると、自分の足りない部分ばかりが目についてしまいます。

まずは自分に集中。

これまでの話と重なりますが、「できたこと」を数えていきましょう。

>>「私は何てダメなんだ」落ち込みの理由とつらさを和らげる考え方

>>人と比べて落ち込まないために私が心がけている5つのこと

「たいしたことない」と言わない

一つ一つの小さな行動、「やってみよう」という気持ちに注目して「Good!」「OK!」を出してあげましょう。

「あなたはがんばってるよ!」と伝える猫とひよこ

>>ダメな自分にウンザリ?あなたの心をほぐす言葉【自己肯定のコツ】
 

感情の上手な取り扱い方法

具体的な行動を起こすと、具体的な答えを得ることができます。

とは言え、悩ましい思いやネガティブな気分をキレイさっぱり消し去ることはできません。

そこで最後に、イヤな気持ちとうまく付き合っていくためのコツを紹介します。

感情の法則を知ろう

不快な感情は注目すればするほど大きくなります。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉のように、恐怖はあれこれ思い描くから増幅する。

だから、何とかしようとムキになるのではなく、ありのままを受け入れ、見守るつもりで。

<感情の法則>
・注意を向けると強くなる
・放っておけば消えていく
・受け入れることで和らぐ

このことを心に留めておくだけでもずいぶん違います。

詳しくは「感情の法則を知り、緊張・不安を味方にしよう」で説明しています。

人と話してみよう

自分一人であれこれ考えていると、頭でっかちになってしまいがち。考えが偏ってしまうことも少なくありません。

そんなときは、家族や友人など周りの人と話をしてみましょう。

深刻に話し込む必要はありません。まずは気楽に他愛のないおしゃべりから(もちろん、信頼できる相手に心の内をじっくり聞いてもらうのもOK)。

外部からちょっとした刺激を与えることで、自分の中に沈殿していたモヤモヤに変化が生まれます。

何気ない言葉がきっかけとなって、新たな答えが見つかることもあります。

最後に:自分専用の答えを見つける方法

・怖さを克服する
・勇気を持って行動を起こす
・自分のことを認める
・納得感を得る

これらを達成するための方法、私なりの答えを書いてみました。

あなたに合った解決策、見つかりそうでしょうか?

かなり長くなってしまいましたが、これでも内容を絞ったつもりです(まとめる力がないだけとも言えますが)。ともあれ、色々な対処法があると思えば、「自分に合った答えも見つかるかも」と少しは前向きな気持ちが生まれるのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

せっかくなので、ここに挙げた答えを出すまでのプロセスを、次回エントリ「イヤな気分を和らげ、自分専用の答えを見つける方法【お悩み解決の道しるべ】」にまとめます。

どうやって自分にぴったりの解決策を見つけるか? 自分専用の答えを探すヒントになるかと思います。

さまざまな本を参考にしながら、心をラクにする方法を紹介していきますので、気になるところから試してみてください。

本日のおさらい

怖さ・回避性を克服するために

  1. 小さなことからチャレンジ
    • 自分に合った目標を立てる
    • 練習する
    • 心の切り替えスイッチを用意する
      • 「やるぞ」気持ちを高めるスイッチ
      • 「ダメだ」をストップさせるスイッチ
  2. 行動前の不安や恐怖を和らげる
    • 紙に書いて整理する
      • ブレインストーミング
      • ダブルカラム法
      • 矢印法
    • 「心のスイッチ」を切り替える
      • コーピング
      • 感情と事実を区別する
      • すべき思考を変換
    • リラックス法を試す
  3. チャレンジ後はよいところを評価する
    • 自分を上手に肯定する工夫
      • 今日できたことを書き出す
      • 淡々と数値を記録する
      • 自己採点に50点プラスする
      • よかった日記を書く
      • 優しい人の顔を思い浮かべて褒めてもらう
      • 「ごほうび」をあげる
    • 評価するときのポイント
      • 小さなミスを大げさに考えない
      • 人と比べない
      • 「たいしたことない」と言わない

関連ページまとめ

  1. 小さなことからチャレンジ
  2. 行動前の不安や恐怖を和らげる
  3. チャレンジ後はよいところを評価する

 
<参考書籍>
有光興記 (2013)『緊張して失敗する子どものためのリラックスレッスン』講談社
北西憲二 (2007)『森田療法のすべてがわかる本』講談社
福西勇夫監修 (2008)『不安障害がよくわかる本』主婦と生活社
オロール・サブロー=セガン (2006)『トラウマを乗りこえるためのセルフヘルプ・ガイド』河出書房新社
バベット・ロスチャイルド (2015)『これだけは知っておきたいPTSDとトラウマの基礎知識』創元社

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