憂鬱の出どころ・不自然な思い込みをあぶり出す「矢印法」

指さし矢印

自分の考えや行動を記録に残して整理していくと、共通するパターンが見えてきます。

例えば、

  • 私はダメな人間だ。
  • すべての人に愛されなければならない。
  • ひとりぼっちになったら惨めになる。
  • 何でも完璧にこなさなければならない。
  • 実績が自分の価値を決める。
  • 人というものは信用できない。

このような考え方は、行動や感情に影響します。否定的な思考・行動パターンが習慣化されると、それが当たり前になってしまい、自己破壊的な考えまでもが「揺るぎない真実」と認識されます。その結果、心はズタボロに……。

ネガティブ思考のもとになっている「考え方のクセ」を修正すると、つらい気持ちは和らぎます。しかしながら、ここまで強固な思考パターンを疑うのは簡単ではありません。

そんなとき役に立つのが「矢印法」。ぱっと頭に浮かんでくるイメージや考えに対して、「なぜ?」「それはどういう意味があるのか?」と質問をくり返していく方法です。

「もしその考えが真実ならば、なぜ自分は動揺するのか? それはどういう意味があるのか?」

ネガティブな考えが浮かぶたびに自問します。そうすることで、不自然な思い込みや意味の取り違えを検証することができます。

例1)
今朝、先輩は私が挨拶したのに返してくれなかった。
(なぜ動揺するのか? それはどんな意味があるのか?)
先輩は私を嫌っているに違いない。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
私に問題があるということだ。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
みんな、問題がある私のことを嫌うだろう。
(みんなに嫌われたらどうなるのか?)
誰とも親しい関係が結べない。
(そうだとしたら、なぜ動揺するのか?)
一生孤独で、惨めに暮らしていかなければならない。
例2)
職場の上司にミスを指摘された。
(なぜ動揺するのか? それはどんな意味があるのか?)
上司は私のことを無能な人間だと思っただろう。
(もしそうなら、なぜ動揺するのか?)
職場の皆も私のことを無能だと思うだろう。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
誰も私に仕事を任せてくれなくなる。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
私は何の貢献もできない。その会社で働くことができなくなる。
(そうだとしたら、どうなるのか?)
収入を絶たれ、生活できなくなる。そうなったらもう死ぬしかない。
例3)
待ち合わせの時間に遅れてしまった。
(なぜ動揺するのか? それはどんな意味があるのか?)
迷惑をかけてしまった相手は、私のことを嫌うだろう。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
相手の信頼を失う。彼は私から離れていくだろう。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
信頼関係を築けない自分は人として最低だ。
(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
誰にも信頼してもらえず、友達を失う。
(もしそうならば、どうなるのか?)
ひとりになってしまい、誰からも助けてもらえない。
(もしそうなら、なぜ動揺するのか? )
私は助けがないと生きていけない。

ここから見えてくるのが、冒頭でも挙げた考え方。

  • 私はダメな人間だ。
  • すべての人に愛されなければならない。
  • ひとりぼっちになったら惨めになる。
  • 何でも完璧にこなさなければならない。
  • 実績が自分の価値を決める。
  • 人というものは信用できない。

これらの思考パターンがが、あなたの考えや行動に影響を与えているというわけです。

〔注意点〕
いきなり「ひどい」「もうダメだ」「耐えられない」という感情を書くのではなく、その感情を引き起こした否定的な考えを書くことがポイントです。 できるだけ過程を省略せず、「どんな考えが心をよぎってあなたを動揺させたのか?」という点を丁寧に観察していきましょう。

攻撃的な思考パターンを修正する

不自然な思い込みや意味の取り違えが見えてきたら、それらの考えについて検証していきます。

次の3つのポイントをチェックして、苦しみから抜け出す適切な答えを探していきましょう。

ここでは「自分はダメな人間だ」という考えについて見ていきます。

チェックポイント① それって現実的?

その考えが非現実でないかチェックします。

「自分はダメな人間」?
完璧な人間はいない。誰にでも(どんなに優れている人にも)欠点はある。

チェックポイント② 評価基準はなに?

その評価を裏づける事柄・否定する事柄の両方を書き出します。

なぜ「自分はダメな人間」と思うか?
・仕事ができないから。
・周りに迷惑をかけているから。
「自分はダメな人間」を否定する事柄
・何事にも全力で取り組んできた。
・自分の頑張りを認めてくれる人もいた。

それぞれを書き出してみることで、一方的に決めつけられないことがわかります。

チェックポイント③ その考えのプラス面とマイナス面は?

「自分はダメな人間だ」という考えについて。

プラス 謙虚。理想を持っている。志が高い。
マイナス 自分を責めることで可能性を潰している。「頑張ろう!」と思えなくなる。

どんなことにもよい面と悪い面があります。それぞれを把握することで、バランスの取れた柔軟な考え方ができるようになります。

▼こちらでも意味の取り違えを起こりにくくするための整理法を紹介しているので、参考にしてみてください。

ネガティブな考えをマイルドにするダブルカラム法

最後に

「矢印法」はちょっと取っつきにくいところがあって、途中でつまってしまうこともあるのですが、あまり難しく考えず、自分の中にある自己破壊的な考えを書き出せばOK。

うつ状態が最悪でどうしようもないときは、他の考えが見えにくいですし、正解めいたものに抵抗を感じることも多々あります。なので、やりたいと思えないときは、こんな方法もあるのか~と知っておくだけで十分。

「考えを変えなければいけない」
「何でも一生懸命やらないといけない」

そんな完全主義的な思考パターンにも要注意。

一番大切なのは、苦しみを少しでも和らげて、毎日を気分よく過ごすこと。

うまくいかない状況はもどかしいですが、まずはその「なんとかしなきゃ!」「良くしたい!」と奮闘している自分を褒めてあげたいですね。

頑張りすぎず、休み休み。

肩の力を抜いて、ぼちぼちやっていきましょう。

 

<参考書籍>

4 COMMENTS

はむ

ナミさん
お久しぶりです。はむです。
コメントをご無沙汰している間に、わたしの周囲の環境は随分変わりました。良くなった点もあれば、新たな不安が生まれた点もあります。

仕事は少し加減できるようになりました。でも、分かるからこそ「分かっているのにどうして加減できないの!」と自分に厳しくあたってしまうこともあり、いろいろあるなぁ…という感じです。

ブログに書いていらした「矢印法」をさっそく実践してみました。図に書いてみると、意外と自分の思考は単純であることに気がつきました。絞ってみると、5コぐらい考え方のパターンが決まっていて、いつもそのどれかにはまっている…。
複雑な自分を装っているけど実は単純で、でも油断するとすぐにフリーズして思考に囚われてしまう。
やっかいなものに取り憑かれたものです…(-_-)どうしましょう。。。

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ナミ

はむさん、コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまってごめんなさい。

順調に前進していらっしゃるんですね。不安を感じても、良くなった点に注目できるのはすごいことだと思います。私はいまだに下手くそです。さらに、はむさんはいつもストイックに物事に向き合っていらっしゃって、それもすごい。厳しさゆえに自分を追い込んでしまうことはあるかもしれませんが、誰にでもできることではありませんし、そういうまっすぐな姿勢は私も見習いたいです。

そうなんですよね、自分の思考って面白いくらいパターンが決まっていて。私のブログ内容も「いつもその展開だな」とツッコミながら書いています。

結果的にうまくいかなくても、考え方の癖を自覚できているかいないかの差は大きいので、まぁ、それなりに、自分の観察日記でもつけながら、成長を見守っていきたいですね。

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まりお

初めまして、まりおと申します。
去年の夏にうつ病になり、休職をしています。
ずーっと思っていた「この世から消えたい」「私の存在する意味は何なのだろう」と精神が不安定で泣く日々でしたが、今年の春頃に感情落ち着き、外と関わりが持ちたいと思うようになりました。

そして6月に本腰を入れて転職活動を始めたのですが、面白い程落ちる落ちる(笑)自分は何がやりたいのかも分からず転職活動した結果だと思います。

人手不足だし、この求人なら採用されるだろうと余裕な気持ちで受けた求人にも落ちた時は悔しい気持ちと私の何がいけなかったのだろうと焦りました。

業界研究や自己分析で、私は昔から負けず嫌いな所もあり、ご褒美の為にひたすら目標に突き進む性格でもあるので、未経験ながら営業に挑戦したい気持ちが強くなりました。(現職は製造だったので言われた通りのことをすればいいという環境でつまらないと感じていました)

面接の際はうつ病という事は伏せずに受けるとほぼ「営業未経験は大変だよ?しかもうつ病経験していると成果が出せない時のプレッシャーで病気が再発する可能性もあるよ?」と聞かれ、最初は「大丈夫です!」と返答していましたが、何度も何度も聞かれる度に不安になってきて「どうしよう…」と暗い気持ちに逆戻り。一番泣きそうになったのは「一年以上も休職しててヒマだったでしょ?」と聞かれた時。メンタルを試されている質問なのかもしれませんが…。

これからどうするか〜という気持ちばかり大きくなって、働いている友人やホワイトカラー・ブルーカラー問わず日々汗水垂らして働いている他人を見ていると自分はとても小さくて何もできない人間に思えてきます。

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ナミ

まりおさん、はじめまして。コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまってごめんなさい。

転職活動はその後いかがでしたでしょうか。

うつ病であることを伝えて、良い結果につながらなかったという話はよく聞きます。心の病気に対する偏見を持っている人もいるのでしょうが、単純に「体調大丈夫?」という心配から採用を見送ることが多いようですね。こればかりは難しいところです。

にしても、「一年以上も休職しててヒマだったでしょ?」というセリフはきついですね。病気の人に平気でそういうこと言えちゃう人がいるんだなと思うと悲しくなります。営業職ならこれくらい上手くあしらえってことなんですかね……。私だったら確実に泣きます。このつらい時間を乗り切ったまりおさんはすごい!

未経験の仕事に挑戦したいと頑張るまりおさん。その前向きな姿勢に励まされる思いです。

焦りや不安でいっぱいになると、良いところが見えなくなって落ち込んでしまいますが、そういうときこそ、初心を思い出したいものです。私自身「ちょっと何かやってみようかな」と思えたときの気持ちを思い出すと、今の悩みも前進しているからこそ生まれたものなんだなと気づけます。

焦らず、じっくり、確実に。

陰ながら、まりおさんのことを応援しています。

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