心の病気の治療は長期にわたるため、薬を一定期間飲むことになります。
しかし、中には効果が出るまでに時間がかかる薬もあります。
「なかなか効果を感じられない」
「薬を飲み続けることに抵抗がある」
「本当に飲んで大丈夫なの?」
不安になってネット検索したら、さまざまな意見があって、ますます不安になってしまった……。そんなこともあるかもしれません。
このページでは、薬の副作用、精神科の薬に対する誤解、正しい使い方と服用期間についてまとめています。
さまざまな疑念を拭うためにも、まずは正しい知識を得ることから始めましょう。薬について不安や疑問があるときは、医師や薬剤師に相談を。医療に関する情報は必ず書籍などで確認されることをおすすめします(参考書籍・サイト一覧)。
もくじ
薬の副作用について
精神科の薬に限らず、副作用のない薬はありません。
また、薬の効果は個人差が大きく、同じような薬でも合う合わないがあります。
不安に思うことは医師に相談しましょう。
「なぜこの薬が必要なのか?」
「この薬にはどんな効果があるのか?」
「この薬を飲むとどうなるのか?」
メリット(効果)とデメリット(副作用)を必ず確認。副作用が出たときの対処法もあらかじめ聞いておきましょう。
【体験談】鉄剤でゲロゲロ
私は貧血になりやすい体質のようで、定期的に鉄剤を飲んでいます。先日、いつもと違う病院へ行ったら、いつもと違う薬を出されました。薬の効果や副作用について一応確認しつつも、鉄剤は大体みんな同じだろうと思い、特に気にせず飲みました。が! 服用した翌日、これまでにない吐き気・激しい嘔吐に見舞われました。これまで服用した鉄剤にも多少の不快感はありましたが、今回の薬とは比べ物にならないレベル。胃のムカムカが半端なく文字通りフラフラ。めちゃくちゃ吐きました。精神科の薬で副作用はいろいろ経験してきたつもりでしたが、こんなふうになったことはなかったので驚きました。どんな薬でも合う合わないがあるんだなぁと痛感した次第です。
精神科の薬に対する誤解
インターネットで薬について検索すると、さまざまな情報が出てきます。中には極端な意見もあるため、何を信じればいいのか混乱してしまうこともあります。
映画やドラマのイメージ(閉鎖病棟で奇声を発して暴れるとか?)から、精神科自体に「なんか怖いな……」とネガティブな印象を受けてしまうこともあるのかなと思いますが、それほど特別なものではありません。
以下、精神科の薬に対する誤解と実際のところをQ&Aっぽくまとめました。
誤解1:精神科の薬は依存性が高くてヤバいって本当?
用法・用量を守って正しく使えば大丈夫です。
「薬物依存」と聞くと、何となく怖い感じがしますよね。違法ドラッグを思い起させるような言葉です。
でも、依存性があるのは薬だけではありません。コーヒーやタバコ、アルコールにも依存性はあります。
精神疾患の治療で使われる薬は、強い副作用を伴うことがあります。また、抗うつ薬を急にやめると、めまいや頭痛などの症状があわられやすくなるため、医師の指示に従って服用する必要があります。この「自己判断で薬をやめるのはNG」というあたりが怖いイメージにつながってしまうのかなと思います。
うつ病治療では一定期間薬を飲みますが、症状が落ち着けば、少しずつ減薬していきます。回復後、薬を飲まずに過ごしている患者さんもたくさんいます。
“依存性の高い薬”ではなく、「精神疾患の治療は長期にわたる」というのが実際のところだと思います。
誤解2:医師はお金儲けのために患者を薬漬けにしてるって本当?
薬をたくさん出したからといって医師が儲かるわけではありません。
院外処方の場合、クリニックには処方箋の発行料しか入らないので、たくさん薬を処方しても売上にはなりません。
また、国は医療費を減らしたいので、投薬を制限するルールを設けています。たくさんの薬を処方すると保険点数が減点されるため、むしろ売上は減ってしまいます。
ただし、「(結果的に)薬漬けになって長期通院させている」ケースはあり得ます。必要ない検査を重ねて収益を上げる悪い医者もいれば、善意で薬をたくさん処方する医者がいることも否定できません。
このあたりの実情は『うつの8割に薬は無意味』や『失敗しない“心のお医者さん”の選び方 かかり方』などの書籍で触れられています。
誤解3:製薬会社やメディアもグルになって精神科を受診するよう煽っているのでは?
精神科受診のハードルが下がり、救われたうつ病患者さんはたくさんいます。
1998年~2011年まで、自殺者は年間3万人を超えていました。治療を受けないまま苦しんでいるうつ病患者さんもたくさんいるだろうと言われていました。
そんな状況を変えるため、国を挙げてキャンペーンが行われました。うつ病に関するCMやテレビ番組も増えました。「うつ病は心の風邪」というコピーで、気軽に精神科を受診するよう促す声かけも多かったように思います。
このことは、精神科受診へのハードルを下げ、うつ病への偏見をなくす効果がありました。
ただ、結果的に、病気ではない人にまで薬を処方して、うつ病患者を作り出してしまったという側面はあると思います。これは、精神科医・製薬会社・患者、三位一体の問題であると指摘する医師もいます。
誤解4:「薬をやめれば病気は治る」って家族に言われたけど……
薬をやめたからといって治らないケースもあるので要注意。
「いつまでも薬なんか飲んでいるから良くならない」など、薬に否定的な人は少なくありません。
でも、心の病気は「気の持ちよう」で治せるものではありません。きちんとした治療が必要なのです。
これはがんや糖尿病など体の病気と同じ。薬を服用するメリットがデメリットを上回るから薬を使います。
場合によっては、薬をやめると症状が悪化することもあります。自己判断はやめましょう。
薬に対する考えはさまざまですが……
考え方は人それぞれなので、一概に「正しい」「正しくない」を決めることはできません。ただ、明らかに「トンデモ」な主張もあります。一つの意見に偏ることなく、さまざまな考え方に目を向けて、冷静に判断しないといけませんね。
不調のときには思考力が低下してしまうので、なかなか難しいのですが……。
薬の飲み方・服用期間
適切な治療を受けたうつ病患者さんの半数以上が、6か月以内に回復を感じられるそうです。
うつ病の場合は、症状が治まって穏やかに過ごせる状態(寛解)を目指します。「寛解」は「完治」ではないので、再発防止のために薬を続けます。
抗うつ薬は少量から始めて少しずつ増やしていく
抗うつ薬は、少量から始めて少しずつ増やしていきます。
飲み始めてから効果が出るまでに最低でも2週間かかります。
効果が不十分な場合や副作用がつらいときは、薬の種類を替えて、再び様子を見ます。抗うつ薬以外の薬を組み合わせて効果を高める場合もあります。
いつまで薬を飲むの?
抗うつ薬は、症状が治まってからも服用を続けます。再発予防のためです。
回復後に薬を飲む期間は、少なくとも半年。再発をくり返している人、重度の場合は1~2年以上服薬が必要になります。
はじめてうつ病になった人:
寛解後も半年以上は薬の服薬を。
抗不安薬や睡眠導入剤など:
症状が完全に治まったら飲まなくてOK。減薬する場合は、医師の指示に従いましょう。
気分安定薬:
抗うつ薬の効果を高め、再発を防ぐため飲み続けるよう指示される場合も。
注意点:自己判断で勝手にやめない
効果を感じられないからといって、自己判断でやめてしまうのはNG。
精神科の薬の多くは、十分な量を飲まないと効果が得られません。
また、抗うつ薬を急にやめると症状が強く出たり、めまいや頭痛が起きたりすることもあります。
必ず医師の指示に従って服用しましょう。
服薬中に気をつけたいこと
- 自己判断で飲むのをやめない
- 飲み忘れに注意する
- 妊娠・授乳中は医師に相談
- ほかの薬を飲む際は医師に相談する
- 喫煙・飲酒、車の運転は避ける
- 副作用がつらいときは医師に相談する
(『うつ病のことが正しくわかる本』pp.96-97)
飲酒については「うつ病でお酒の力を借りたくなるくらい辛いときの対処法【服薬中の注意点】」でまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
まとめ
心の病気は長期の治療が必要となることが多いです。そのため、薬を飲む期間もおのずと長くなります。
治療が長引くと、不安になってしまうこともありますが、通院や服薬は、つらい症状を治すために必要なこと。
薬を手放せなくなって、通院をやめられなくなるわけではありません。
適切な治療を受ければ、うつ病はよくなります。回復して、薬や通院をやめる人もたくさんいます。
疑問に思うことはそのつど医師に相談して、納得のいく治療を進めていきましょう。
- 受診の目安・タイミング
- 診察の流れ、精神科の雰囲気は?
- 診察でうまく話せるか不安…
- 初診ではどんな検査をするの?
- うつ病の治療法は?
- うつ病の治療期間はどれくらい?
- 精神科の薬を飲んでも大丈夫?
<参考書籍>
井原裕 (2015)『うつの8割に薬は無意味』朝日新聞出版社
尾崎紀夫総監修 (2016)『よくわかるうつ病 診断と治療、周囲の接し方・支え方』NHK出版
野村総一郎 (2016)『うつ病のことが正しくわかる本』西東社
Tomy (2015)『現役医師が教えます!失敗しない“心のお医者さん”の選び方 かかり方』主婦の友社
<参考サイト>
平成29年版自殺対策白書 – 厚生労働省
ナミさんこんにちは。
わたしの友人にも“アンチお薬”がいます。ただでさえ辛いのに、いろんなひとがいろんなことを言って混乱しますよね。
わたしはお薬に救われたので、しんどかったら服用することをためらわないでほしいなと思います。
生活を送るために、心に鎮痛剤を与える
と思って、“今”を大切にするためだとわたしは考えていますよ!