うつ病回復期に考えたい仕事との向き合い方 ― 社会復帰の不安を和らげるヒント

立ち尽くす男性

うつ病治療をしながら仕事をする。

これはかなり大変なことです。

だからといって、ゆっくり休んでいるわけにもいかない。「症状が落ち着くまでは休めばいいよ」って、一生休んでいるわけにもいかないでしょ。

そう言いたくなることもありますよね。

うつ病を抱えながら社会復帰を進めるには、どうすればいいのでしょうか。

今回は、

  • 自分に合った働き方を見つけるヒント
  • 仕事と生活をうまく回すコツ
  • 焦りや不安を落ち着かせるための考え方

をまとめました。

※早すぎる社会復帰は再発を招きます。回復するまでは、ゆっくり静養しましょう。

気分がつらくなってきたら、読むのを中止してゆっくり休んでくださいね。
 

どこでどうやって働く?

うつ病で仕事を休んでいるときに気がかりなのは、回復後にどのように働くか。

まずは、考えられる選択肢を整理しておきましょう。

これまでの職場に復帰する

休職して、元の職場に復帰する。
会社側と相談しながら、無理なく働ける環境を整える。

これが理想的な形です。

ただし、職場が大きなストレス源となっていた場合には、環境を変えることを考えた方がよさそうです。

>>うつ病からの復職準備ガイド~職場復帰の不安を乗り越えるために~

新たに仕事を探す(就職活動)

退職した人、仕事をしていない人はどうやって仕事を探したらいいのでしょうか。

まずは、働き方の種類を整理してみましょう。

<雇用形態>

  • 正社員
  • 非正規雇用
    • 契約社員(期間社員)
    • 派遣社員(登録型派遣)
    • パート・アルバイトなど
  • 自営業(業務形態によって働き方はいろいろ)

<勤務形態>

  • 平日出勤(9~18時、フルタイム)
  • 平日出勤(短時間勤務)
  • シフト勤務
  • 夜勤あり
  • 残業あり など

再発しやすい働き方

『やさしくわかる社会復帰』(pp.134-135)に、注意したい働き方のポイントがまとめられています。

<注意したい働き方>

  • 出張、転勤が多い
  • 徹夜が多い
  • ノルマが厳しい
  • 責任が大きすぎる
  • クレーム処理など精神的な負担が多い
  • パワハラ、ギスギスした職場の人間関係など

勤務時間などの労働環境については、会社側と相談。

対人関係については、認知行動療法やアサーショントレーニングを参考に、気持ちをうまく立て直していきましょう。

うつ病をオープンにして働く

うつ病など体調不良が原因で就職活動がうまくいかない場合は、一般枠以外の求人に目を向けてみるのも一つです。

  • 障害者枠の求人に応募
  • 就労移行支援サービス
  • デイケア

ハローワークの求人には「一般枠」と「障害者雇用枠」があり、「障害者雇用枠」に応募するには、障害者手帳が必要です。

就労移行支援サービスは、障害者手帳を持っていなくても、受給資格や医師の意見書などがあれば、利用可能な場合があります(自治体の判断によります)。

デイケアは、入院予防や回復期のリハビリのために行われるサービスで、福祉・医療関係施設が提供しています。デイケア自体が就職につながるわけではありませんが、生活リズムを整えたり、体力・忍耐力をつけるには役立ちます。

<参考>
障害のあるみなさまへ – ハローワークインターネットサービス
就労移行支援 – WAM NET 独立行政法人福祉医療機構
障害福祉サービスの内容 – 厚生労働省
 

自分に合った仕事を見つける

ブランクがある場合は、アルバイトからならすのが無難です。

>>うつからの再就職、確実に仕事に就ける方法を教えてください

>>職歴の空白期間どう説明する?うつ病・無職・ニートの面接対策&体験談
 

正社員を目標に掲げて頑張るよりは、無理なく働ける仕事、自分に合った仕事を見つけることを第一に考えると、精神的なプレッシャーが和らぎます。

>>心の病気・障害を抱えながらできる仕事、自分に合った仕事を見つけるには?
 

日々の生活を無理なく回すコツ

会社勤めだけが仕事ではありません。家事や育児、学業など、人それぞれのタスクがあると思います。

日々の生活をスムーズに回すために役立つのが次の3つの方法です。

1. タスクは紙に書き出して一つずつ

まず、頭の中にある「やらなきゃ」をすべて紙に書き出します。

次に、書き出したものをいつやるか分類し、優先順位をつけます。

・期限が決まっていること
・締め切りはないが、やらなければいけないこと
・毎日やること
・いつかやりたいこと
・やらなくてもいいこと

ピックアップしたものを一つずつ実行していきます。

<ポイント>

  • 一気にやろうとしない
  • 全部やろうとしない
  • まずは1つだけ!

ToDoリストに書き出して「今からこれをやる」と決めたら、それだけに集中。タスク実行中は、他のことは一切忘れてください。

他の人でもできることは、周囲の人に協力をお願いしましょう。

2. 休養日、自由時間を先に決める

やることで頭がいっぱいになると、なかなか休む時間を取れなくなるので、先に休養日を確保しておきましょう。

今すぐダイアリーを開いて、何もしない日を決めてしまいましょう。

>>頑張りたい人ほど休むべし!戦略的休息 3つのテクニック

3. 翌日の予定(タスク)を時間順に並べて確認する

何をしても気持ちが落ち着かないときは、翌日やること(タスク)を書き出して、時間順に並べて確認しましょう。

視覚化することで、モヤモヤした部分がクリアになります。それだけでも、気持ちは少し落ち着くはず。

予定をこなせそうになくて不安なときは、予定を立て直しましょう。「やらないこと」を決める(=捨てる)ことも重要です。

自分だけの権限で変えられないときは、周囲と相談して、無理なくできる予定を立てることが大事です。

【心の準備】不安が強まったときの心構え

久しぶりの出勤、初めての職場。緊張しますよね。不安でいっぱい。何日も前から緊張して、眠れなくなってしまうこともあるかもしれません。

そんなとき思い出したい心構えは、次の3つ。

1. まずは「会社に行くこと」だけを考える

「会社に行く」と一言で言っても、それだけで結構大変なことです。

・朝起きる
・身支度をして家を出る
・電車に乗る
・会社に着く
・社内で過ごす
・会社を出る
・電車に乗って家に帰る

健康な人にとっては何てことないことかもしれませんが、うつ病を患った人にとってはハードルが高い。

最初はこれだけのことができれば十分。合格です。

2. 周りの人にどう思われているか考えない

「みんな私のことどう思っているんだろう」
「迷惑だって思ってるんじゃないか」

どうしても人の目は気になってしまいますよね。

でも、気にしない。気になる言葉は右から左へ。病み上がりの人と健康な人を比べても、その答えに意味はありません。最初はできなくて当然。慣れれば、ちゃんとできるようになります。

周りの人が自分のことをどう思っているか、考えすぎないよう心がけましょう。勝手な推測は間違っていることも多いので。

3. その日のこと、翌日のことをアレコレ考えず、早めに寝る

新しいこと、ブランクがあることを始めるときは、とても緊張します。特に初日は不安が大きいものです。

「ちゃんとできるかな?」
「大丈夫かな?」
「何をすればいいんだろう?」

考えれば考えるほど心配だし、怖い……。

でも、行ってみれば意外と何とかなるものです。悩むよりも、しっかり身体を休めて備えるのが一番。あまり深く考えないようにして早く寝ましょう。

どんなことでも慣れるまでには時間がかかります。

それまでは、「焦らず、ゆっくり」で大丈夫。

つらくなったとき思い出したい考え方

うつ病から復帰をしても、体力が完全に戻るまでに3か月はかかると言われます。

特に働き始めは、疲労感が大きく、以前の自分とのギャップにガッカリしてしまうこともあるかもしれません。

そんなときは、心がラクになる考え方を思い出しましょう。

以下、精神的にしんどくなったとき役立ちそうな考え方を7つ挙げますので、自分に合いそうなものを取り入れてみてください。

1. できたことに目を向ける

「できなかったこと」ではなく、「できたこと」を数えましょう。

>>自分をいじめていませんか?自責の痛みを和らげる5つの作戦

2. 人と比べない

周りの人たちと自分を比べるのは不毛です。

と、わかっていても、ついつい比べてしまうのですが……。

>>「私は何てダメなんだ」落ち込みの理由とつらさを和らげる考え方

3. 失敗しても大丈夫

健康な人でも失敗することはあります。ミスをしない人はいません。システムは人的エラーを前提に作られると言いますよね。

自分を責めるのではなく、「同じ失敗をくり返さないようにしよう」と考えて、次に活かしましょう。

4. 結果にとらわれず、プロセスを大切にする

「結果を出さなければ意味がない」という考えは、自分を苦しめます。

結果や人の評価にとらわれて一喜一憂していると、心が疲れてしまいます。

結果ではなく、自分の行動に目を向けましょう。

5. ゼロよりはまし

まずは、復帰できた自分に自信を持つことから始めましょう。

>>ダメな自分にウンザリ?あなたの心をほぐす言葉【自己肯定のコツ】

6. 走りすぎない

休んでいた分を取り戻そうと頑張りすぎてしまうと、再発の可能性が高まります。

焦る気持ちは痛いほどわかりますが、仕事量をセーブして60%ぐらいの力で進めるのがベターです。

>>「当たり前」ができなくて落ち込んだとき必要な考え方

7. 「疲れたなぁ」→「頑張ったなぁ~」

「疲れたな」
「失敗しちゃったな」
「ダメだったな」

ため息とともに、そんな言葉が出たときは、このセリフに言い換えましょう。

「自分、頑張ったなぁ~」

「あなたはがんばってるよ!」と伝える猫とひよこ

復帰後の注意点

いやな予兆を感じたら、すぐに医師や職場に相談しましょう。

体力が完全に戻るまでに3か月、環境に慣れてきた4か月目からが危険な時期とも言われます。

  • 生活リズムを整えること
  • 睡眠時間を確保すること
  • 自分の気分の波を把握すること

再発のサインをチェックして、「いつもと違う」を無視しないようにしましょう。

>>うつ回復のために・お休み中のやることリスト【気分障害治療】
 

最後に

社会復帰の不安や焦りは、ブランクが長くなるほど大きくなります。

でも、そこで無理をしてしまうと、うつが再発して逆戻り。

もどかしい気持ちは拭えないと思いますが、とにかく無理をしないこと。

力加減、心と体のバランスに注目しながら、今の自分にできることをコツコツとやっていきましょう。

疲れたら、休む。

人生において、最も重要なルールです。

 

<参考書籍>
・山本晴義『図解 やさしくわかるうつ病からの職場復帰 ― 復職を成功させるポイント』

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