過去の嫌な記憶がよみがえって「あ゛ぁーーー」とうめき声が出てしまうことはありますか?
失敗や恥、ひどいことを言われてショックだったことなど、思い出したくない映像ばかり再生されたら嫌になってしまいますよね。
この不快感を和らげるにはどうしたらいいのでしょうか。
私がこれまでに実践した方法は「嫌な記憶がよみがえってうわあぁぁぁぁ~!となったときの対処法」にも書いているのですが、最近新たに試してみて、まぁまぁ効果をあげている方法があります。
それは、「あ゛ぁーーー」となった直後に「人間は完璧じゃない」とつぶやくこと。
完全に不快感が消えるわけではないものの、高ぶった感情は落ち着きます。特に自分の失敗を悔やむときに効果が期待できます。
というわけで今回は、理詰め系「思い出しうめき」の対処法を紹介します。
※「思い出しうめき」という言葉はありませんが、「思い出し笑い」をもじって勝手にこう呼んでいます。個人的には「思い出し笑い」より頻繁に生じるお困り行動なのです。「思い出し奇声」とも。
もくじ
自分をなだめるフレーズの例
突発的な「あ゛ぁーーー」をなだめるためにつぶやく言葉は、自分に合ったものを使うのが良いと思います。
あなたの不快感を和らげる言葉は一体どんなものでしょうか?
もしピンとくる言葉が思いつかない人は、今から紹介する方法を試してみてください。
きっと気持ちをラクにするヒントが見つかると思います。
めんどくさいのが苦手な方へ
ここからは、具体例を挙げながらワークの進め方を説明していきます。が、面倒な話はいらないよ~という方のために、自分をなだめる言葉の例を先に紹介しておきます。
「人間は完璧じゃない」
「そういうこともある」
「欠点がある方が人間らしい」
「自分の力が及ばないこともある」
「人はみな孤独」
「他人は私のために生きているのではない」
「私は他人のために生きているのではない」
「経験値を積んだ」
「それもまたよし」
こういう言葉を見つけるのが今回の目的です(とりあえず思いつくものを挙げただけなので、あまり参考にならないかもしれませんが……。このページの後半で、他にもいくつか例を挙げています)。
自分に合ったフレーズの見つけ方
冒頭で紹介した「人間は完璧じゃない」という言葉は、認知行動療法のワークで見つけました。
特にわかりやすく自分の思考を暴いてくれるのは矢印法という技法です。
矢印法を使うと、心の奥底にある考え方(暗黙の仮説)を見つけ出すことができます。
矢印法のやり方を説明する前に、問題を引き起こす暗黙の仮説にはどんなものがあるか見てみましょう。『フィーリング Good ハンドブック』に挙げられている主な10の態度をピックアップしました。
共通に見られる暗黙の仮説
- 拒絶されること、見捨てられること、一人ぼっちになることはとてもひどいことだ。
- もしも誰かが私を批判したら、それは、私にはどこか問題があることを意味する。
- 私はみんなの期待に応えなければならない。
- 私は欠陥を抱えており、他人より劣っている
- 私の問題は他の人のせいだ。
- 世界は常に私の望むとおりであるべきだ。
- 人々は私の期待に応えるべきだ。
- 心配したり悪く考えることで、物事は改善するだろう。
- 私の人生における問題は解決不可能だ。
- 私は常に完全であろうと努めなければならない。
(『フィーリング Good ハンドブック』pp.158-159より)
以上が、矢印法で特定されることの多い自虐的な態度です。
あなたを支配している暗黙の仮定はこの中にありそうですか?
問題を引き起こす思考をあぶりだすには、実際に書き出してみるのが効果的です。
自分の心をラクにする言葉は、自分の中にあります。
矢印法のやり方
矢印法のやり方はシンプルです。
紙とペンを用意して、
- 自分を動揺させる否定思考を書き出す
- 下向き矢印を書く
- なぜそう思うのか書き出す
これをくり返します。
得意げに間違ったことを言ってしまった。恥ずかしい。うざったく思われたかも。
↓(なぜ動揺するのか? それはどんな意味があるのか?)
友人は私を愚か者だと思っただろう。
↓(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
話を聞いた他のみんなも私を愚か者だと思うだろう。そして私はみんなから軽蔑される。
↓(もしそうならば、それはどういう意味があるのか?)
みんな私から離れていくだろう。
↓(みんなが離れたらどうなるのか?)
誰とも信頼関係を築けない寂しい人生を送ることになる。
↓(そうだとしたら、なぜ動揺するのか?)
みじめできっと死にたくなるだろう。
下向き矢印が意味するのは、
「もしこの思考が真実であれば、どうして自分は動揺するのか?」
「これは自分にとって何を意味するのか?」
ということです。
上の例でいくと、心の奥底にはこんな考えが潜んでいそうです。
「価値ある人間になるには、常に立派にふるまわなければならない」
「ひとつ間違えば、すべておしまいだ」
「まぬけなことをしたら、すさまじい非難にあう」
「人から認められなければ、自分には価値がない」
「一人ぼっちになるのは、とてもひどいことだ」etc.
「なぜ」「どうして」をくり返すことで、こういった暗黙の仮定を見つけやすくなります。
↓こちらのページでも矢印法の具体例をいくつか紹介しています。
問題を引き起こす考え方をフォローする
自分の中にある暗黙の仮定を特定したら、次の質問の答えを考えてみてください。
- それを信じるメリットはなに?
- その考えは本当に妥当?
- 適切な態度は?
紙に書き出しながら、問題を引き起こす考え方を修正していきます。
具体例を挙げて、実際にやってみましょう。
ここでは、「拒絶されることはとてもひどいことだ。人から認められなければ、私には価値がない」という考えを検証することにします。
それを信じるメリットはなに?
まず、プラス面とマイナス面を書き出します。
その考えは本当に妥当?
書き出したメリットとデメリット、どちらがより大きいか評価します。
全体の割合(100%中 メリット○% デメリット○%)をざっくり評価してもいいですし、判断が難しいときは、上記のように一つずつ点数をつけると評価しやすいです(私はパーセントを無視して、適当に点数をつけることが多いです。「自分にとっての重要度」をポイント化します)。
以上の結果を踏まえて、もう一度、自問してみましょう。
その考えは本当に妥当でしょうか?
役に立ちますか? それとも有害ですか?
適切な態度は?
デメリットの方が大きいとわかった場合には、その態度を改めるのがよさそうです。変わりとなる新たな態度を書き出してみましょう。
思い出しうめき対策用フレーズ
ここまでの作業で導き出された言葉を、短くてわかりやすいフレーズに言い換えます。
「人間は完璧じゃない」
「そういうこともある」
「人間は間違える」
「ヒューマンエラー」
「欠点がある方が人間らしい」
「自分の力が及ばないこともある」
「人はみな孤独」
「孤独には価値がある」
「私は全能なるゴッドじゃない」
「他人は私のために生きているのではない」
「彼は彼の人生を生きている」
「私は○○さんのために生きているのではない」
「みんな少しずつ悪い」
「人それぞれ」
「同じ過ちをくり返さなければいい」
「経験値を積んだ」
「それもまたよし」
こんな感じの言葉を「自分をなだめるフレーズ」として使います。
ここではとりあえず思いつくものを挙げてみましたが、正解はないので、自分がしっくりくるものを探してみてください。
「ダブルカラム法」のページもあわせてどうぞ。合理的な考えを見つけるヒントになると思います。
まとめ
以上、思い出しうめきの対処法を紹介しました。
もう一度まとめましょう。
1.矢印法を使って、問題を引き起こす考え(暗黙の仮定)を見つける
- 自分を動揺させる否定思考を書き出す
- 下向き矢印を書く
- なぜそう思うのか書き出す
2.特定された暗黙の仮定を吟味して、肯定的な言い換えフレーズを探す
例)
「人間は完璧じゃない」
「そういうこともある」
「欠点がある方が人間らしい」
「自分の力が及ばないこともある」
「経験値を積んだ」など
3.過去の記憶がよみがえって「うわあぁぁ~」となったら、自分をなだめるフレーズを唱える
大事なのは、過去にトリップしている自分を引き戻し、落ち着かせてあげること。
正解を突きつけるのではなく、「大丈夫」と安心させてあげることが大切です。
ここで紹介したステップをもっと簡素化して、ちゃちゃっと紙に書き出してみるだけでも、自己否定感を和らげることができます。
自分に合いそうな方法を試しつつ、「うわぁぁあぁ~~」のしんどさを少しでも和らげていただけたら幸いです。
対処法 その1(いろいろ)
対処法 その2(斬りつける)
対処法 その3(停止ボタンを連打)
対処法 その4(ことば)←今ここ
対処法 その5(時間旅行)
対処法 その6(再生機を破壊)
対処法 その7(バブー)
<参考書籍>