うつ病の人はね、頑張って頑張って頑張りすぎた結果、病気になってしまったの。
だから、今は頑張っちゃダメなの。
ゆっくり休んでエネルギーを充電することが大事なんだよ。
そんな言葉に納得しつつも、「これでいいんだ」と思えないことってありますよね。
頑張りたい気持ちが強いからこそ、できない自分にガッカリ。家族や周囲の人からの励まし、「もっと頑張れ」が胸に突き刺さります。
頑張りたいのに頑張れない、周囲の期待に応えられない、すごくもどかしい……。
どうしたらこのつらさを軽くすることができるのでしょうか?
「頑張れ」「頑張ろう」と言われても……
頑張る人は美しい。
目標に向かって一所懸命な姿は尊く映ります。
自身についてもそれは同じく。
努力を重ねて成長できたときの充実感は大きなものです。
でも、時と場合によって「頑張る」という言葉はマイナスに働きます。
- はっきりとした目標が見つからないとき
- 先が見えない不安でいっぱいなとき
- 何をやっても思うような結果が出ないとき
それはまるで真っ暗な地下牢を手探りで進んでいるような感覚。前が見えない、どこに向かえばいいのかわからない、そもそも出口があるのかさえ不明。
そんな状況では、頑張りたくても何をどう頑張ればいいのかわからないし、「とにかく頑張れ」と応援されても困ってしまいます。
ただ困るだけなら、精神的なつらさをやり過ごすこともできそうですが、「何としてでもやらなければならない!」「今すぐに解決しなければならない!」という意識が主成分の「頑張れ」は、焦りや緊張、プレッシャーを生むばかり。
そのせいで、うまくいかなくなってしまうことは多々あります。
焦り・緊張・プレッシャーを弱める3つの策
「頑張る」「頑張れ」という言葉が焦りや緊張を生む。
でも、だからといって、頑張ることをやめて、今の状態に甘んじているわけにもいかない。
じゃあ一体どうしたらいいの?
経済学者・玄田有史さんの著書『14歳からの仕事道』につらさを和らげるヒントがありました。
そこから見いだした方法は次の3つ。
2.具体的な目標を決める
3.「頑張れ」と言われたら、何をどう頑張ればうまくいくか聞く
一つずつ見ていきましょう。
1.「頑張る」という言葉を使わない
やみくもに頑張っても、うまくいくとは限りません。
むしろ、思うような結果が得られず、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
悪循環を加速させているのは、「頑張る」「頑張らなきゃ」という叱咤。
玄田さんはこう言っています。(p.51)
自分自身を変に追い込んだりしないため、不安の時代に生きるなかでは、言葉の問題というのは大切だと思います。
だから、プレッシャーを感じさせる「頑張る」「頑張れ」という言葉を使わないようにしているのだそうです。学生に何か励ましたいときには、「それぞれの状況に応じて、いちばん適切な言葉を使って応援する」。
自分も人も追い込まないことが大事なのですね。
2.具体的な目標を決める
もし「もっと頑張らなきゃ」と言いそうになったときは、自分が今やるべきことを明確にすると、変なプレッシャーに押しつぶされることを防げます。
村上龍さんは、本の中でこんなことを書いているそうです。(pp.46-47)
頑張れと言われて、それでエネルギーが湧いてくるのは、そう言われた人にとって、今やっていることを続けることが、最大唯一の目標としてはっきり定まっているとき
この言葉を受けて、玄田さんはマラソンを例に挙げて説明しています。
トップで走り続けるマラソン選手にとって、沿道の人たちからの「頑張れ、頑張れ」というエールはきっと励みになるよね、だってトップでゴールすることがこの選手にとって最大唯一の目標なんだから、と。
だから、「頑張る」の効果を引き出すためには、今の自分が目指しているものをはっきりさせることが大事。
うつ病療養中の場合は、「今日やること」を最大唯一の目標とするのがよさそうです。
うつ病治療の基本は休養なので、急性期は「何もせず、のんびり過ごすこと」にコミット。
回復期に入ったら、リハビリを目標にするといいですね。
・睡眠リズムを記録する
・30分の散歩 など
【参考】うつ回復のために・お休み中のやることリスト【気分障害治療】
「頑張らなきゃ」と言いそうになったときは、「睡眠覚醒リズムを記録しよう」「30分散歩しよう」と言い換える。
ずいぶんニュアンスが変わりますね。
3.「頑張れ」と言われたら、何をどう頑張ればうまくいくか聞く
家族や周囲の人から「もっと頑張れ」「とにかく頑張れ」と言われることもあります。努力不足というニュアンスで強く言われると、かなりつらいところがありますよね。
精神的なダメージを抑えるためにできることは2つ。
一つは、「頑張れって言われるとつらくなるから、今は言わないでほしいな」と伝えること。
もう一つは、何か良い方法がないか相談してみること。
「○○を◇◇してみたけど、ダメだったんだよね」
「何をどうやったらうまくいくと思う?」
「なにかいいアイデアないかな?」
一人で考えるより、二人で考えた方がアイデアは増えます。二人より三人、三人より四人……と、どんなに小さなアイデアでも積み重なれば、新たな発見があるはず。
もしこの問いに「知らん」「そんなこと自分で考えろ」と答えたならば、その人の「頑張れ」はすごいテキトーな励ましってことになると思います。
身近な人にそう言われてしまうのは悲しいけれど、あなたのつらい気持ちを無視して無理を強いてくる人の言葉を真摯に受け止める必要はありません。
もちろん、よかれと思って言っていることもあるとは思うのですが、心にダメージを負って潰れてしまっては意味がないので、元気になるまでは「ばーかばーか」と心の中で適当にあしらっておくのも一つの方法です(そんな簡単に割り切れるものではないんですけどね……)。
【関連】【実例つき】気持ちをうまく伝えたいなら、両者を分析&3つの技を使うべし
同じ境遇にいる人の「一緒に頑張ろうね」は響く
うつ病の人に「頑張れ」と言ってはいけない。
このことは広く知れ渡りました。
うつ病の人だけではなく、生きることに疲れてしまった人に対しても、「頑張らなくていいよ」というメッセージが伝えられるようになりました。
私もうつを経験したことで「頑張る」という言葉を使わなくなりました。
そのおかげで、すごく心がラクになりました。
でも、「頑張る」「頑張れ」という言葉は決して悪いものではありません。
適切なタイミングで口にすれば、大きなパワーを与えてくれる言葉です。
さらに、誰が言うかによっても、伝えられる印象は左右されます。
それを感じたのが、女優の遠野なぎこさんが綴ったある日のブログ記事でした。
私が一番好きな言葉は…
『一緒に頑張ろうね』です。
誰かに言われても、誰かに言っても何だか心がポカポカします実際に頑張るのは自分自身でしかないのは分かっているけれど、心に柔らかい空間が出来るような気持ちになるんだ
皆んな…
あなたも私も独りじゃないよ。『一緒に頑張ろうね』
きっと、違う人が言ったら、ずいぶん印象が変わると思います。もし自分とまったく違う境遇の人に言われたら「え?」と言ってしまいそうです。
これは、つらい気持ちを抱える仲間同士の信頼関係あってこそ。
言葉を軽々しく扱ってはいけないのだけれど、いくつかの条件が揃えば、言葉の意味なんか飛び越えてしまうほどのパワーが生まれるのだなぁと思いました。
と言っても、いくつかの条件が揃うってことがかなり難しくて、解釈にズレが生じてしまうことは多々あるんですけどね。どう受け止めるかは「人による」。非常に難しいです。
「それなりにやろう」はどうでしょう?
「頑張ろう」と思えることはとっても素晴らしいことです。
でも、それが「頑張らなきゃ(=頑張れない私はダメだ)」になると、すっごくしんどい。
特にウツなときは要注意。
うつ病の人は頑張り禁止。
どうしても「頑張らなきゃ」という考えが抜けない人は、「頑張らないこと」を頑張れ!
「ゆっくり休むこと」を頑張れ!
……やっぱり「頑張れ」という言葉は、強いるニュアンスと緊張感がありますねぇ。
「頑張らなくていいよ」と言いたいところではありますが、現実的には「そういうわけにはいかないんだよ」と言いたくなることばかりです。
だから、そういうときは、こう問いましょう。
「今の自分に必要なことは何かな?」
いま必要なことを、できる範囲で、一つずつ確実にやっていこう。
そんなナチュラルな「頑張る」でいきたいですね。
私がよく使う言い換えワードは
緊張がほぐれてイイ感じになるので、肩に力が入りがちな人は試してみてください。
<本日の一冊>
玄田有史 (2005)『14歳からの仕事道』理論社
・ゲンダラヂオ
玄田有史さんのブログ「ダラダラ惑う『ゲンダラヂオ』です。」
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最後に、関連する「頑張る系」エントリをご紹介します。
【がんばれ!】
私が『ここまできてそれなりにわかったこと』を50個挙げてみた
【がんばらないで】
がんばらなきゃ!という焦り・罪悪感をなだめてくれる歌
【頑張りすぎ】
休みたくないのに「ゆっくり休みな」と言われるもどかしさ
【頑張れた】
「努力は必ず報われる」と信じていた私が学んだこと
【頑張ったね】
人の顔色をうかがうことに疲れてしまった気遣い屋さんのあなたへ
【頑張りたい】
頑張りたいのに頑張れないつらさを理解してもらえないつらさ
【頑張れない】
「頑張れない」無気力感に支配された日の日記
お邪魔します。
「休む」って難しいです。
私にとってはですが。
「休む」ことが何か分かったのは、罹患してから年単位経ってからでした。
アホウですね(笑)。
今休めているかと問われても「イエス」と答えられるか自信ありません…
お邪魔しました。
ナミさんと一緒にこれを見ている皆に一緒に頑張ろうねと伝えたいです。
再発の鬱になって2ヶ月半、無理してデイに通い、鬱の本、認知行動療法の読み漁り、重い気持ちのまま、何とかしようと四苦八苦。頭では休息しなければと解っていても、なにもしていない自分が嫌で、前向きだった頃に戻りたくて頑張っちゃいます。どうしましょう?
まず、それは「頑張る」ではなく「無理する」ではないのかと自問するのがコツだと思います。
鬱になる人は、基本が頑張ってる状態の人が多いです。
あとは、頑張ってる自分が、
頑張って、辛い思いをしている自分を好きになっていないかです。