精神科では、診察の前後に検査を行うことがあります。
体の病気が原因で、うつ症状を引き起こしている可能性もあるからです。
このページでは、
・抑うつをもたらす病気
・心身の異常を調べる検査
についてまとめます。
検査でほかの病気が隠れていないかチェックする
心と体は互いに影響し合います。
体や心に病気があると、ない場合に比べてうつ病になりやすくなります。また、うつ病が他の病気を引き起こすこともあります。
そのため、うつ病が疑われるときは、さまざまな検査をすることで、他に病気が隠れていないかチェックします。
脳・神経疾患:脳血管障害、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症
循環器疾患:心筋梗塞
消化器疾患:胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群
内分泌代謝疾患:糖尿病、甲状腺疾患、クッシング症候群、アジソン病
自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス、関節リウマチ
感染症:肝炎、インフルエンザ、AIDS(エイズ)
その他:がん、慢性疼痛
■抑うつがあらわれる心の病気
気分変調症、月経前不快気分障害(PMDD)、パーソナリティ障害、統合失調症、不安障害、認知症、慢性疲労症候群
■うつ病を併発しやすい心の病気
不安障害、強迫性障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)
■うつ病と間違われやすい病気
双極性障害、認知症、更年期障害
■服用中の薬の副作用
副腎皮質ホルモン薬、インターフェロン、鎮痛薬(インドメタシンなど)、経口避妊薬(ピル)など
診断のために行われる検査
精神科では問診を基本に、検査で他の病気がないかチェックします。必要に応じて、さまざまな検査が行われます。
基本的な検査
・体温、血圧、脈拍、体重測定
・尿検査
・血液検査 など
体の状態を調べるための一般的な検査です。
脳波検査
脳内の電気的な変動を調べます。てんかんなど、脳の病気と識別するのに使われます。
心電図検査
心筋の動きを調べます。心筋梗塞や不整脈が隠れていないか確認します。
画像検査
胸部X線(レントゲン)
X線で胸部全体を撮影し、呼吸器や循環器に異常がないか確認します。
CT(コンピュータ断層撮影)
X線で脳を撮影します。脳の断面画像から出血の有無、脳の萎縮などを調べます。アルツハイマー病などの識別に使われます。
MRI(核磁気共鳴画像)
X線の代わりに磁気を使って脳内の断面を撮影する方法。多くの角度から撮影でき、CTより画像が鮮明。
SPECT(スペクト;単一光子放射断層撮影)、PET(ポジトロン断層撮影)
検査薬を使い、CTではわからなかった脳の血流量や代謝機能を調べます。
NIRS(光トポグラフィー検査)
近赤外線を使って脳の血流量を調べます。
心理検査
心理状態や症状の程度、社会適応度などを調べます。診断の補助として使われます。
- 知能検査
- 性格検査
- バウムテスト
- ロールシャッハ検査 など
- 評価尺度
- SDS うつ性自己評価尺度 など
精神科診断面接
うつ病かどうかを診断するための面接。問診で困っている症状、生活、体や心の変調などの話を聞きます。アメリカ精神医学会が作成した診断マニュアル『DMS』をもとにした面接法(SCID)で行われます。
検査のポイント
検査を受けるときは、
・何を調べるのか?
・何のために検査するのか?
を確認しておきましょう。
血液検査は、内容と頻度についての確認も。
心理検査は、受ける前に費用を確認しておくと安心です。
- 受診の目安・タイミング
- 診察の流れ、精神科の雰囲気は?
- 診察でうまく話せるか不安…
- 初診ではどんな検査をするの?
- うつ病の治療法は?
- うつ病の治療期間はどれくらい?
- 精神科の薬を飲んでも大丈夫?
<参考書籍>
尾崎紀夫総監修 (2016)『よくわかるうつ病 診断と治療、周囲の接し方・支え方』NHK出版
野村総一郎 (2016)『うつ病のことが正しくわかる本』西東社
野村総一郎 (2015)『名医がカラー図解!うつ病の正しい理解と治療法 (1) 知識と理解編』インプレス
Tomy (2015)『失敗しない“心のお医者さん”の選び方 かかり方―現役医師が教えます!』主婦の友社