「仕事どうしよう?」
「早く復帰しなくちゃ!」
うつ病で仕事を休職・退職された方にとって切実な悩みです。
社会復帰を果たすためには、とにかく焦らず回復を待つことが一番。
しかし、生活をしていくためにはお金が必要です。いくら「症状が落ち着くまで休みましょう」と言われても「そうはいかないんだよ!」と言いたくなりますよね。
現在職に就いていなければ、うつ病を抱えながらできる仕事を探さなければなりません。健康な人でさえ働き口を見つけるのが難しい昨今、うつ病というハンデを背負っての職探しは簡単ではありません。
解決策が見つからず、「仕事をしなければ」という考えに支配されると、精神的にどんどん追い込まれてしまいます。いくら「今は休んだ方がいい」「考えるのをやめよう」と思っても、そう簡単に割り切れるものではありません。
あなたが今抱えている焦りや不安を少しでも軽くするために。
社会復帰に必要な手順を簡単にまとめました。全体の流れを把握し、一つずつ問題を整理していけば、今何をすればいいか見えてくるはずです。
もくじ
1.うつ病療養開始~社会復帰までの流れを把握する
まずは、大まかな流れを把握しましょう。問題点をわかりやすく整理するために、うつ病と診断されてから社会復帰までの流れを簡単にまとめました。
重要かな~と思うポイントには色を付けてみました。重視すべきステップをピンク、現実的な選択をブルーで示しています。
社会復帰、特に就職活動が必要な場合には、いくつものハードルがあなたを待ち構えています。さらに、ここには書いてありませんが、「再発」の可能性も忘れてはいけません。
さぁ、あなたの現在地はどこですか?
2.社会復帰を焦る理由を考える
もしあなたが「働かなければーーー!!」と焦っているならば注意が必要です。
焦りはうつ病の大敵。回復を妨げ、再発を引き起こす要因にもなるかもしれません。
今の正直な気持ちを整理するために、次の質問についてじっくり考えてみてください。そして、思いついた考えを紙に書き出してみましょう。
【質問】
なんでそんなに急いでるの?
―お金が必要だから?
―職場の人に迷惑をかけてしまうから?
―仕事をせず家にいることに罪悪感を感じるから?
―働いていない期間が長いと、次の就職にひびくから?
―人間は働かなければならないから?
理由は人それぞれ、さまざまな考えがあるでしょう。あなたの意見もごもっとも。働くことに対する強い焦り、「仕事をしたい」という気持ちは痛いほどわかります。
「普通に働いて、普通の生活がしたい!」、たったそれだけのことなのに……。
私自身、そんな思いを抱えてもどかしい日々を送りました。こういうことを考えているだけで、ものすごくしんどいですよね。この願いは、社会復帰を目指す多くの患者さんが抱えているものだと思います。
休んでいることが苦痛になっているのなら、それを取り除く方法を探していきましょう。
その上で、忘れてはいけないのは、うつ病が「これ以上続けたら壊れちゃうよ」というサインであるということ。
多大なストレスを抱え、オーバーヒートした結果作動した「うつ病」というサイン。難しいとは思いますが、そのサイン(うつ病になったこと)を素直に受け入れましょう。
焦らず、急がず、決して無理のないように。
3.社会復帰のための準備をする
早すぎる社会復帰は再発の可能性を高めます。このことに十分注意しながら、あなたの場合どれくらいの回復で復帰するのがベストなのか、考えていきましょう。
社会復帰の最低条件
社会復帰の最低条件は、生活のリズムが整っていること。
どんな仕事であれ、生活のリズムをコントロールできなければ、出勤するだけで大変な思いをすることになってしまいます。
うつ病になると、「朝が最も悪く夕方にかけてましになってくる」という症状がよく見られます。そのため、昼夜逆転の生活になってしまうのは仕方ないことです。そんなうつ病患者さんにとって「朝起きる」「生活のリズムを整える」というのはかなりハードルが高いわけです。
働きたいなら、朝起きる。
それを叶えるために、急性期や症状が良くないときには、無理せず横になって身体を休める。そして、体調が安定し、リハビリ期に入ったら、崩れた生活リズムを少しずつ整えていく。
これが最短ルートです。最初の難所は越えられそうですか?
社会復帰に必要な5ステップ
社会復帰の条件をクリアしたいと願うあなたに。「復職準備ゲーム」はいかがでしょう?
ここまでの注意点に私の経験をプラスして、ポイントをまとめたものです。最終ステージLEVEL5をクリアする頃には、現実的に社会復帰を考えられるレベルに到達していることでしょう。
レッツ・チャレンジ!
LEVEL1:気力チェック
- 「何かやりたいな~」という気持ちの芽生えを感じ取る。
- 「~しなければ」という考えではなく、「楽しみたい」と純粋に思える。
LEVEL2:睡眠チェック
- 夜更かしをしない。
- 22:00に床に入り、リラックスする(ケータイ・スマホは閲覧禁止)。
- 6:00に起床する。
LEVEL3:集中力チェック
- 午前中いっぱい、仕事関係の本を読む。
- 400字(原稿用紙1枚分)程度の文章を書く。
LEVEL4:体力チェック
- 週に5日、図書館へ通う。
- 朝、通勤するのと同じ服装で、同じ電車に乗る。
- 毎日運動する(30分~1時間の散歩、ジョギング、水泳など)。
LEVEL5:持久力チェック
LEVEL4で行った体力チェックを1カ月続ける。
ステージクリア!
おめでとうございます。
社会復帰について、これから具体的に考えていきましょう。
4.自分に合った仕事を明確にする
ここまでいくつもの難所をクリアしてきました。さぁ、自信を持って社会復帰に向けて進んでいきましょう。
退職された方、転職を考えている方は、まず職探しですね。
と、その前に。もし、うつ病になった要因のひとつが過労だったならば、以前と同じような環境は避けましょう。
せっかく症状が回復しても、もとのストレスフルな職場に戻ってしまったら再発のリスクが高まります。特に仕事熱心な方は、注意していても頑張り過ぎてしまうので、「いかにラクするか」ということも考えてみてください。
あなたに合った仕事を見つける5つの質問
仕事を探し困ったときは、次の5つの質問の答えを考えてみてください。何かヒントが見つかるかもしれません。
①なぜ働く?
お金のため? 社会参加・社会貢献のため? 国民の義務だから? その仕事が好きだから? 出会いを求めて?
②どんなふうに働く?
例えば、雇用形態。
正社員? 契約社員? 派遣社員? パート? アルバイト? 公務員? 自営業? フリーランス?
③いつ働く?
うつ病の症状が落ち着いたら? 今すぐに? 1ヶ月後? 1年後? 10年後? ずっと? 定年まで? 死ぬまで?
④どこで働く?
大企業? 中小企業? 零細企業?
都内? 地方都市? 地元? 近所? 自宅?
⑤誰のために働く?
自分のため? 家族のため? 他人のため? 社会のため?
・・・・・・
いかがでしょう? 自分の中のイメージは具体的なものになってきましたか?
くれぐれも「~しなければ」「~すべきだ」という考えにはご注意を。
理想としては、「やってみたいな~」という純粋な気持ちを最優先に考えること。それはきっと、心の健康を保つためにも役立つことでしょう。
5.仕事を得るために必要な手続きをする
「やりたい」と思える仕事が見つかりましたら、いよいよ社会に出るための第一歩を踏み出しましょう。
まずは、主治医に「仕事を始めたい」ということを伝えます。ここで、ストップがかかった場合は、もう少し様子を見て、調子が落ち着くのを待ちましょう。繰り返しになりますが、焦りは禁物です。
主治医のGOサインが出たら、仕事を始める準備をしましょう。
休職中の方
うつ病からの復職準備ガイド~職場復帰の不安を乗り越えるために~
元の職場に復帰する際は、上司や企業内のカウンセラーと相談しながらスケジュールを決めていきましょう。
求職中の方
求人に応募し、履歴書・職務経歴書を準備、面接の練習をしましょう。
<参考>
仕事をお探しの方へ | 厚生労働省
新しい仕事を探す
ハローワークに行くと、就職相談や職業紹介などのサポートを受けられます。面接練習を行っているところもあります。
若者向け就職支援「ジョブカフェ」、正社員を目指す人向けの「ジョブカード制度」など、さまざまな支援制度がありますので、仕事探しに行き詰ったとき利用してみてはいかがでしょうか。
【こんな制度もあります】
働く自信もお金もない?職業訓練でスキルアップ&職歴ゲット
症状と付き合いながら働く
寛解までに時間がかかりそうな場合は、障害者向けの仕事を探すのも一つです。
ハローワークの専門援助部門では、うつ病の人も就労のサポートを受けることができます。うつ病の特性に合った求人を紹介してくれたり、専門スタッフに相談しながら職探しができます。
<参考>
障害をお持ちのみなさまへ | ハローワークインターネットサービス
それ以外の方
家業の手伝いやボランティアをする場合も、お世話になる人に現状を相談しておくと安心です。働くために必要なものを確認し、当日に備えましょう。
復帰に向けての心構え
長い間休んでいたわけですから、慣れるまでは大変だと思います。不安や心配もあるでしょうし、緊張して疲れてしまうかもしれません。そういったことを考えるだけで憂うつになってしまうこともあるでしょう。
「仕事をするからには、いい加減なことをするわけにはいかない!」
それはもっともなことなのですが、うつ病からの社会復帰は簡単ではありません。あなたはすでに十分努力しているので、これ以上自分にプレッシャーをかけなくても大丈夫。
「ちょっと試してみよう」「ダメならまた休めばいい」と考えて、気楽にいきましょう。おそらくあなたの「適当」は、他の人からすれば相応な仕事ぶりだと思いますよ。
【気張らず、ゆるゆると】
求人情報が怖いうつ病患者さん必見!仕事探しの焦りを軽減する3つのコツ
最後に
あなたがこのページを読み始めたときの「仕事どうしよう?」「早く復帰しなくちゃ!」という不安や焦り。何か変化はありましたか?
今すぐ解決! というわけにはいきませんので、まだモヤモヤがたくさん残っているかもしれませんね。
それでも、新たな悩みや、より具体的な悩みが生まれたのならば、それはものすごく大きな一歩です。いや、二歩、三歩、四歩ぐらい。
山頂ばかり見ていると、「こんなに高い山登れるだろうか?」とどんどん不安になってしまいます。今はまず、一歩進むことを考えましょう。足を踏み出すのがおっくうに感じてしまうならば、無理に進む必要はありません。山ではなく、海に行くという選択もアリかもしれません。
どれくらい負荷をかければいいのか?
力の加減をどれくらいにしたらいいのか?
これがまた難しいのですが、心と身体の状態を見極めてバランスを保つためには、心の声を尊重することが第一です。
「一日一歩 三日で三歩 三歩進んで 二歩さがる」の精神で、できることからコツコツと。
ありきたりな結論ではありますが、とても大事なことです。
あなたが笑顔で過ごせる日々を願って。陰ながら応援しています。
まさに、今の自分は療養機関から社会復帰の手前で、ウロウロしている様な状態にあるので、この記事はチャート式・段階別に良く説明されているので、参考にさせてもらっています。
ありがとうございます!
>伸(shin)さん
コメントありがとうございます。そういっていただけると幸いです。現実的には、もっといろいろな問題があるのでしょうけれど。難しいですね。
5つの質問で、自分の気持ちが明確化しました。
なんとなく、みんなが働いているから、すぐ働かないとマズいからという意識が働き自分を苦しめていましたが、今後は自分の気持ちと向き合って決めていきたいと思いました。
>MUNEさん
いつもコメントありがとうございます。
MUNEさんがおっしゃる通り、「みんなが働いているから、すぐ働かないとマズいから」という考えに私も苦しめられたことがあります。
お互い自分の素直な気持ちを大切にしていけたらいいですね。
はじめまして。うつ病になって1年間たち、回復してきたので社会復帰しようと考えていたところ、こちらにたどりつき、とても参考になりました。ひとつ質問させていただきたいのですが、レベル3で書く文章は、どんな文章がよいでしょうか?
>ひろさん
コメントありがとうございます。
私が書いていたのは、日記や本の感想です。ブログもリハビリを兼ねていました。認知療法を実践するのもいいですね。
集中力をチェックすることが目的なので、内容に特に決まりはありません。ひろさんに合ったやり方で、気楽にチャレンジしてみてくださいね。
はじめまして。
社会人から看護学校へ、そのまま助産学校に進学し助産学校で精神的に追い詰められ休学しました。回復してる実感を持ち始め、早くみんなと同じように働かないといけない休んでいてはいけないと休学してから5ヶ月で新卒看護師としてフルタイムで社会人復帰。働き始めてすぐに気持ちに身体が追い付いていないことで強い焦燥感に襲われ、落ち着いていたのにフットカット。働き始めてまだ1ヶ月も経たないのに辞めたら社会人としてだめだ!みんな頑張ってるのに辞めたらだめだ!頑張ろう!そう毎日言い聞かせています。辞めたい私にはできないが言えなくて辛いです。