生体リズムが崩れてしまうために生じる睡眠障害。
正常な睡眠リズムを取り戻すためには、眠れない原因をはっきりさせることが必要です。
「なんでうまく眠れないの?」
その答えとして考えられる睡眠障害の原因をまとめます。ここでは、睡眠障害の中で訴えの多い不眠について取り上げます。
第1回 『睡眠障害解消法』健康な眠りのために心がけたい7つのこと
第2回 睡眠日誌のつけ方・適正な睡眠時間の見つけ方
第3回 睡眠の専門医による不眠解消のための3つの生活指導
第4回 【睡眠の基礎知識】睡眠のメカニズムと生体リズム
睡眠障害治療 ― 初診時に聞かれる質問
睡眠障害の治療は、悩まされている症状とその原因を明らかにすることから始まります。
不眠の状況を知るために、睡眠外来の初診では次のような問診が行われます。
不眠の状況
・いつ頃から眠れなくなりましたか?
・眠れなくなったことに対して心当たりになる原因はありますか?
・眠るまでにどのくらいの時間がかかりますか?
・眠れないこと以外に別の症状はありますか?不眠の型
・寝つくまでに時間がかかりますか?
・夜中に何度も目が覚めますか? その後すぐ眠れますか?
・朝早く目が覚めますか?
・よく眠れたという熟睡感がありますか?(『睡眠障害ガイドブック』pp.130-131)
この答えをもとに、不眠の状態と、不眠の型(入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)をはっきりさせていきます。
うまく眠れないのはなぜ?
忙しくて寝る時間がない
現代人は忙しい。ゆえに、不眠に悩まされる人が増えていると言ってもいいのかもしれません。
スピードや効率を第一に求められる社会は、とってもストレスフル。生き方や働き方が多様化し、生活環境も大きく変化しています。
そういった中で、十分な睡眠時間を確保できなくなっている人は少なくありません。
周りの環境
- 介護・育児
- 騒音
- 暑さ・寒さ
睡眠環境がよくないために眠れないことがあります。
睡眠に関する意識調査で多いのは「介護・育児」。子供の夜泣きや授乳のため夜眠れなかったり、認知症の介護では、夜間頻尿や徘徊などのために何度も起こされて睡眠がとれないケースがあります。超高齢化社会に突入している日本において、介護者の睡眠障害は重要なテーマとなってくるでしょう。
夜間の騒音問題については、それほど割合は高くありません。ただ、睡眠が不安定な高齢者は音に敏感であることがわかっています。
痛み・かゆみ
- 体重減少
- 上腹部不快感
- 頭痛
- 疲労
- 腰背部疼
研究によって、これらの痛みが不眠と有意に関連していることがわかっています。
痛みなどの刺激は睡眠を妨げます。睡眠の質が下がると、刺激に対する感覚が敏感になって、ますます眠れなくなってしまいます。
痛みの他に、かゆみなど身体の不快感も眠りを妨げます。
病気・障害
疼痛や後述の疾患による苦痛から眠れなくなってしまうケースです。
精神的な悩み
心配事があって眠れない経験をした人は少なくないでしょう。また、悪夢を見て目が覚めてしまうこともあります。
覚醒と睡眠の間のリラックス状態が損なわれている状態です。
不眠の原因「5つのP」
不眠の原因はさまざまです。『睡眠障害ガイドブック』によると、現在不眠は5つの原因に分けられているそうです。
生理学的原因 (Physiological)
心理学的原因 (Phychological)
精神医学的原因 (Phychiatric)
薬理学的原因 (Pharmacologic)
頭文字をとって「5つのP」。コンパクトにまとまっていて、わかりやすかったので、一部ご紹介します。
<不眠の原因5つのP>
身体的原因 (Physical) |
身体疾患 ・痛み、かゆみ ・腎疾患 ・心疾患 ・糖尿病 ・高血圧 など |
---|---|
生理学的原因 (Physiological) |
時差ぼけ 交代勤務 短期の入院 |
心理学的原因 (Phychological) |
ストレス 重い病気 人生の大きな変化 |
精神医学的原因 (Phychiatric) |
不安と抑うつ うつ病 統合失調症(急性期、再発増悪期) 不安障害(パニック障害) アルコール・薬物依存 心的外傷後ストレス障害(PTSD) 適応障害 摂食障害 認知症 |
薬理学的原因 (Pharmacologic) |
薬物 ・パーキンソン病の薬 ・甲状腺ホルモン、高血圧の薬の一部 ・気管支ぜんそくの薬 ・インターフェロンなど免疫機能に作用する薬 ・ステロイド製剤 |
これらの原因をもとに、医師が診断をします。
この他に、
・運動習慣
・日中、家にいる時間
・いびき
・睡眠中の脚の動き
なども考慮されます。
第1回 『睡眠障害解消法』健康な眠りのために心がけたい7つのこと
第2回 睡眠日誌のつけ方・適正な睡眠時間の見つけ方
第3回 睡眠の専門医による不眠解消のための3つの生活指導
第4回 【睡眠の基礎知識】睡眠のメカニズムと生体リズム
第5回 うまく眠れないのはなぜ?不眠の原因「5つのP」
第6回 眠れない?眠りすぎ?睡眠障害の種類と特徴
第7回 うつ病をはじめとする精神・神経の病と睡眠障害
第8回 睡眠障害の治療法(行動療法・光療法・断眠療法など)
第9回 【早起きのコツ】朝起きられないとき実践して効果を感じた方法
<参考書籍>
太田龍朗 (2006)『睡眠障害ガイドブック 治療とケア』弘文堂
内山真 (2014)『睡眠のはなし – 快眠のためのヒント』中央公論新社