【睡眠の基礎知識】睡眠のメカニズムと生体リズム

トランペットのリズム隊

人の体は、常にリズムを刻んでいます。脈拍や呼吸など、生命活動をコントロールするために働く身体機能は、高性能ですが、壊れやすくもあります。

睡眠リズムも、崩れやすいものの一つ。24時間社会や高齢化によって、睡眠障害に悩まされる人が増えていると言われます。また、睡眠障害は、うつ病をはじめとする心の病気とも密接に関わっています。

なぜ、睡眠リズムが崩れてしまうのか?

生体リズムがどのようなものか考えたとき、私の頭にはメトロノームが浮かびました。睡眠障害に悩まされている人は、機械部分が壊れて、拍子を正確に刻めない状態。うつ病の人は、振り子が片方に振り切れて止まった状態。メトロノームは精密機械なので、ちょっとのズレが拍子を狂わせてしまう。身体機能をそんなイメージに置き換えてみると、理解しやすくなりそうです。

あるいは、心拍や呼吸がメトロノームなら、睡眠覚醒リズムや体温の変化は音楽でしょうか。例えば、ワルツは均等割り付けされたリズムではありません。うまく踊るためには、なめらかなステップを踏むことが求められます。現代音楽でよく使われる変拍子は、拍をとりにくい複雑なリズムです。オーケストラの演奏を思い出してみても、表情がコロコロ変わる音楽はたくさんあります。これと同じように、人の体も変化に富んだリズムを刻みます。

どんなリズムであっても、自分の身体が刻むリズムパターンを掴めば、きっと上手に踊れる(眠れる)ようになるはず。

そんなイメージとともに、今日は、睡眠のメカニズムと生体リズムについて勉強していきたいと思います。

睡眠の役割

  • 体と脳を休ませて、疲れをとる
  • 記憶を固定する

「なぜ眠くなるのか?」
「睡眠にどんな意味があるのか?」

関連したメカニズムを説明することはできても、これらの質問に正面から答えることは難しいと言います。まだまだわかっていないことが多く、現在も研究中。「睡眠」は謎多き存在です。

レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠は、急速眼球運動(Rapid Eye Movement, REM)を伴う睡眠。夢を見るのもレム睡眠。金縛りもレム睡眠の生理現象の一つです。

レム睡眠とノンレム睡眠

  レム睡眠(=体の眠り)
ノンレム睡眠(=脳の眠り)

こう表現することもできます。

レム睡眠とノンレム睡眠は交互にあらわれます。ノンレム睡眠は、4段階に分かれていて、1~2段階は浅い眠り、3~4段階は深い眠りです。

眠りの深さ

健康な人でも、一晩に数回、短い覚醒が起こります。

また、睡眠前半の深い眠り(ノンレム睡眠)では、「成長ホルモン」がドドーンとまとめて分泌されます。

<成長ホルモンの働き>
・疲労を回復させる
・細胞を修復し、新しい細胞をつくる
・成長期の子供の骨と筋肉を増やす

「人はよく眠ると病気が治りやすい。眠らないとストレスに弱い」と言われるのは、これらのメカニズムが関係しているとのこと。

生体リズム

生体リズムとは、生命活動をコントロールしている睡眠、覚醒、体温、脈拍、呼吸などのリズムをきざむ活動のこと。

人の1日はおおよそ24時間のサイクルと考えられています(概日リズム;サーガディアン・リズム)。

しかし、洞窟など時間がまったく分からない場所では、眠る時間がどんどん後ろにずれていきます(自由継続リズム;フリーランニング・リズム)。

これは、人が朝の光を浴びたり食事をしたりすることで、時間のズレをリセットしながら生活していることを意味しています。

これらの研究から、人間の体には生体リズムをコントロールする体内時計があることが確認されました。

生体リズム調節・メラトニン

(引用:文部科学省資料・図1 生物時計

体内時計は、「視交叉上核(しこうさじょうかく)」にあります。そして、この部位に働きかけるのが「メラトニン」というホルモン。脳の松果体から分泌され、生体リズムのペースメーカー的な役割を果たしていると言われています。

右側の図にある通り、メラトニンは夜間に分泌がピークになります。昼間の分泌が抑えられるのはなぜかというと、光が影響を与えるからです(=光がメラトニンの分泌を抑える)。

明るいうちは大人しく、夜になると元気になるメラトニン。
体内時計に働きかけるメラトニン。

生体リズムとメラトニンの関わりついては、現在も研究が進められています。

「質の良い眠り」とは

質の良い睡眠をとるためには、リズムに合わせた生活をキープすることが必要です。

睡眠リズムには年齢差と個人差があります。いろいろな説がありますが、基本的には自分に合った睡眠スタイルがベスト。

    「質の良い眠り」

  • 朝起きたときに「よく眠れた」という満足感がある
  • 日中元気に活動できる
  • 自分に必要な睡眠時間を維持し、途中で何度も目が覚めたりしない

なかなか寝つけなかったり、途中で目が覚めたり、朝早く起きてしまうことがあっても、一過性のものであれば、気にしなくてOK。気にしすぎることで不眠になってしまうこともあります。

緊張をほぐしてリラックスする時間も、良質な眠りを得る助けになります。

最後に

生体リズムを音楽に例えるなら、眠れないつらい毎日は一体どのような表情でしょうか。私が才能ある音楽家だったら、意味深長なメロディを生み出せそうな気がします。才能がなくて残念です。

睡眠と病気は密接にかかわっています。

リズムが崩れたから病気になったのか、病気になったからリズムが崩れたのか。

その答えはわかりません。また、崩れたリズムを元に戻すのも簡単ではありません。

でも、自分の体のリズムを感じることならきっとできるはず。不調のときには、じっくり味わうことなどできないかもしれませんが、生命活動のリズムを感じると、自分の体を大切にしたくなります。

そうやって命の鼓動をつぶさに観察することで、新たな発見があるかもしれません。
 

<参考サイト>
文部科学省 (2007) 大川匡子「第3章 健康なくらしに寄与する光 2 光の治療的応用―光による生体リズム調節―」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333542.htm

<参考書籍>
太田龍朗 (2006)『睡眠障害ガイドブック 治療とケア』弘文堂

井上雄一 (2007)『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』講談社

内山真 (2014)『睡眠のはなし – 快眠のためのヒント』中央公論新社

櫻井武 (2010)『睡眠の科学 ― なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか』講談社

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