睡眠障害を改善し、健康な眠りを取り戻すためには、睡眠環境や生活習慣を整えることが大切です。
「『睡眠障害解消法』健康な眠りのために心がけたい7つのこと」では、以下のポイントをご紹介しました。
- 朝日を浴びる
- 夜は強い光を避ける
- 毎朝同じ時間に起きる
- 睡眠日誌をつける
- 入浴は寝る1~2時間前に
- 就寝前はリラックスして過ごす
- 眠れないときは寝ない
睡眠障害の治療において、医師はまず生活習慣を見直すよう指導します。睡眠環境、食生活、運動習慣、これらを整えることが基本です。
睡眠には個人差があり、正解は一つではありませんが、ここで挙げたものは研究によって不眠改善に効果があると示されたものです。
体の働きや睡眠環境の条件についても簡単にまとめましたので、何を基準にしたらいいかわからないとき、参考にしてみてください。
1.快適な睡眠環境を整える
温湿度条件
気温と眠りの深さは密接に関係しています。最適とされる寝室環境は、以下の通り。
夏 (冷房を使う場合) |
室温25~28℃ 湿度50~60% |
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冬 (暖房を使う場合) |
室温15~18℃ 湿度50~60% |
布団の中 | 温度33±1℃ 湿度50% |
眠りにくいときは、エアコンや加湿器などで調節します。
手や足の皮膚の温度も入眠と関係してきます。例えば、冬場、冷たいふとんに寝ると、寝つくまでの時間が長くなります。
私たちの体は、体温が下がるにつれて眠くなるようになっています。しかし、寒さで体が震えると、熱を作り出してしまい、体温が下がりにくくなります。そのため、寝つくまでに時間がかかってしまうのです。
よりよい眠りのためには、寝室と寝床の温度・湿度を適切に保つことが大切です。
冬場は、寝る前にふとんを温めておきましょう。湯たんぽを使うと、いい感じに温まります。
光条件
朝の光を浴びる
光は、生体リズムを整えるのに役立ちます。特に重要なのは、朝の光を浴びること。そうすることで、生体リズムがリセットされ、夜スムーズに眠りに入ることができます。
夜は強い光を避ける
強い光は体を目覚めさせ、スムーズな入眠を妨げます。寝つきがよくないときは、夜間に買い物などに出かけるのは避けた方がいいでしょう。
コンビニ・ ガソリンスタンド |
1000ルクス~ (設計室など細かい仕事をするのに必要な照度) |
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事務室 | 500ルクス |
家庭の居間 | |
寝室 | 30ルクス前後 (30ルクスより明るいと睡眠深度が低下) |
就寝時 | 0.1~1ルクス (ぼんやりと物の形や色がわかる程度) |
環境によっては、外の光を通さない遮光カーテンやブラインドを使うのも一つです。ブルーを選ぶと、色の心理効果で、気持ちが落ち着きます。
眠るときは、寝室を暗くすることが望ましいとされますが(0.1~1ルクス)、完全な暗闇は心理的に不安をもたらすこともあります。スタンド・フットライトなどを使って、自分に合った明るさを調整しましょう。
疲れた目を休める
眠れないとき、テレビ・ゲーム・パソコンを惰性でつけっぱなしにしてしまうことがあります。
しかし、そうした光刺激は、交感神経を優位にし、寝つきを悪くします。
夜は、生体リズムを整えるメラトニンの分泌がピークになります。液晶の光を浴びることで、眠る準備を整えていたメラトニンの分泌が弱まってしまい、体に覚醒のサインが送られてしまうのです。
眠る3時間前には、モニターのスイッチを切って目を休めることが理想です。
ホットタオルで目を温めると、血行がよくなります。就寝前のリラックスタイムに。
音(騒音)
眠りやすい環境を整える
室内(夜) | 40フォン (40フォン以上は睡眠に影響が出る) |
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住宅地(昼) | 50フォン |
図書館 | 30~40フォン |
不眠症の人は、健康な人以上に騒音によって睡眠が妨げられます。時計の音のようなわずかな音でも気になって眠れなくなってしまうことは少なくありません。また、家事や作業の音も睡眠を妨げることがあるため、家族の協力も必要です。
二重サッシ、雨戸、厚手のカーテン、壁紙などで防音
好きな音楽を聴きながら眠りに入る場合は、タイマーで消えるようにセットしておきましょう。テレビやCDもつけっぱなしはNG。
音を目覚めのきっかけに
起床時刻にテレビやコンポがONになるようセットしておくと、覚醒のきっかけになります。アップテンポの曲は、眠気を抑える覚醒刺激となることがわかっています。お気に入りの元気が出る曲を聴いて、目を覚ますのもおすすめです。
好みの寝具・快適な寝具を選ぶ
ポイント:通気性・放熱性、吸湿性、弾力性、衛生性
<敷布団>
・硬さや大きさが適切なもの
柔らかすぎると体が沈み、肩こりや腰痛などの原因になってしまいます。反対に硬すぎると、毛細血管が圧迫されてしまいます。体に負担のかからないものを選びましょう。
低反発マットレス | 【寝返りなどで夜中に目が覚める人に】 肩や背中、腰にかかる圧力が分散され、寝返りなどの体の動きが減少 |
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三層ウレタン・ジェル内蔵のマットレス | 【眠りが浅い人に】 沈みがちな腰回りがしっかりと支えられ、眠りの質が向上 |
<掛け布団>
・自然な体の動きを妨げない軽いもの(羽毛や羊毛がおすすめ)
<枕>
- 頸椎(首の骨)のS字カーブが保てること
- 頭3個分の幅があること
- 沈み込まない程度の柔らかさがあること
- 枕に肩、首、頭が乗せられること
『どうしてワタシは眠れない? 快適睡眠88の即効レシピ』より
寝具を選ぶ際は、専門知識を持つ人に相談して、使い心地を試しましょう。
<寝間着>
・体をしめつけないパジャマ
ウエスト部分のゴムがきついパンツなどは、体が緊張してストレスから解放されないため、よろしくありません。その点、ノーパンで寝るのは解放感があってなかなか悪くありません。
体調に合わせて、体が冷えてしまわないように調整することも大切です。
2.食生活を見直す
食事は毎日同じ時間に
規則的な食事をすることで、内臓リズムが整います。その結果、消化器の活発な活動が心身を目覚めさせ、睡眠リズムを整えてくれます。
夕食後に食べるのは控えたいところ。夜食をとると、消化作用によって眠りが妨げられます。
一方、空腹も食中枢を興奮させるので、牛乳など消化のよいものを少し摂取しましょう。
嗜好品は控える
就寝前のカフェイン、アルコール、ニコチン、カプサイシンなど刺激物の摂取は快眠を妨げます。就寝4時間前には、コーヒー、お茶、チョコ、酒、タバコ、アルコールを避けましょう。
寝つきはよくなりますが(緊張をほぐし大脳皮質の活動抑制によって、入眠を促進させる)、睡眠が浅くなり、夜中に目が覚めてしまうため、逆効果です。
また、薬とアルコールを一緒に飲むことも厳禁。抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬の多くは、飲酒によって作用が増強されます。また、副作用が出てしまうこともあります。
3.運動習慣を見直す
午後~夕方の適度な運動は眠りをよくします。ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。適度な疲労感があると、熟睡しやすくなります。
日常的に運動している人は、深い眠り(ノンレム睡眠)が多いことがわかっていますが、運動習慣のない人が急に運動をはじめても、すぐにはノンレム睡眠は増えません。また、運動習慣のある人が急に運動をやめると、ノンレム睡眠は減少してしまいます。
できることから少しずつ、適度な運動を習慣づけましょう。
ただし、就寝直前の激しい運動はNG。循環器系や神経系が刺激され、深部温度も上がりすぎて、寝つきにくくなります。
寝る前に体を動かす場合は、ストレッチなどの軽い運動がおすすめです。ヨガなどの体をほぐす運動はリラクゼーション効果があります。
最後に
「健康な眠りのために心がけたい7つのこと」ではすぐに実践できることを、今回はその他に改善を心がけたい睡眠環境や生活習慣についてまとめました。
ここに書いてあることをすべて実践するのは大変ですし、いちいち細かな条件や数値を意識していては疲れてしまいます。
大切なのは、「気持ちよく眠れているな」と満足できること。
日中の眠気や作業効率低下を防ぐためには、8時間睡眠が重要だとする研究が多いのだそうです。しかし、一方で、「そうでもないよ」という研究も出てきており、睡眠の専門医・内山真氏はこう結論します。
睡眠時間は短すぎるのも長すぎるのも健康によくないようだ。六時間台あるいは七時間台という、ほどほどの睡眠時間が最も健康であるという結論だ。
(『睡眠のはなし』pp.31-32)
なるほど確かに、何事もほどほどが大切ですね。
ただ、「普通が一番」と言われてしまうと、普通とは……? え? 私は普通なの? そうじゃないの? などと再び迷ってしまいそうです。
そういうときは、同じく睡眠の専門医・井上雄一氏の言葉を思い出しましょう。
人がゆったり眠れるようにする方法はオーダーメイドで個人差が大きいこと、よい眠りを得るための早道はなく、気長に眠りを守る努力をする必要があることを理解していただければと思います。“良眠は一日にしてならず”です。
(『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』p.3)
偉いお医者さんに「8時間睡眠がよい」と言われると、それ以外が不正解のように思えてしまうこともありますが、示される数値はあくまでも目安。あまり神経質になりすぎないことも大切ですね。
できることから、ぼちぼちと。自分の心と体の声にしっかり耳を傾けていきたいですね。
第1回 『睡眠障害解消法』健康な眠りのために心がけたい7つのこと
第2回 睡眠日誌のつけ方・適正な睡眠時間の見つけ方
第3回 睡眠の専門医による不眠解消のための3つの生活指導
第4回 【睡眠の基礎知識】睡眠のメカニズムと生体リズム
第5回 うまく眠れないのはなぜ?不眠の原因「5つのP」
第6回 眠れない?眠りすぎ?睡眠障害の種類と特徴
第7回 うつ病をはじめとする精神・神経の病と睡眠障害
第8回 睡眠障害の治療法(行動療法・光療法・断眠療法など)
第9回 【早起きのコツ】朝起きられないとき実践して効果を感じた方法
<参考書籍>
井上雄一 (2007)『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』講談社
太田龍朗 (2006)『睡眠障害ガイドブック 治療とケア』弘文堂
太田龍朗 (2006)『どうしてワタシは眠れない?快適睡眠88の即効レシピ』技術評論社
渋井佳代 遠藤拓郎 (2008)『女性のための睡眠バイブル』主婦と生活社
堀忠雄 (2008)『眠りと夢のメカニズム』ソフトバンククリエイティブ