眠れない?眠りすぎ?睡眠障害の種類と特徴

アンニュイな猫

うつ病に多く見られる睡眠障害は、早朝覚醒や入眠障害です。双極性障害や季節性うつ病では、過眠が多く見られます。

この他にも、睡眠障害にはさまざまな種類があり、原因や治療法もまちまちです。

ここでは、睡眠障害の種類とそれぞれの特徴を簡単にまとめました。

不眠

不眠症

<入眠障害>
夜間なかなか眠りに入ることができず、寝つくのに普段より2時間以上かかる。不安や緊張が強い時に生じやすい。

<中途覚醒>
入眠後続けて眠ることができず、途中で何度も(少なくとも2回以上)目が覚める。高齢者、ストレスや環境の変化、お酒の影響などによる。

<早朝覚醒>
普段より2時間以上早く目が覚めてしまう。再び眠ろうとしても眠れない。高齢者やうつ病者に多く見られる。

<熟眠障害>
眠りが浅く、睡眠時間の長さにかかわらず、朝起きた時にぐっすり眠った感じが得られない。

不眠のため苦痛を感じたり、社会生活が妨げられることなども不眠症の条件になっています。

概日リズム睡眠障害

人の体は、生体時計によって、だいたい24時間の周期でくり返されます(概日リズム)。このリズムが崩れて、社会生活に支障をきたす状態が「概日リズム睡眠障害」です。

概日リズム睡眠障害のタイプは次の4つ。

睡眠相後退症候群:宵っ張りの朝寝坊

この病気の特徴は「夜眠れない」「朝起きられない」こと。思春期から青年期に発症することが多く、不登校やひきこもりになりやすいと言われます。

さらにリズムが崩れると「非24時間睡眠覚醒症候群」に移行することもあります。朝起きられないために遅刻や欠席が続き、自信を失ってしまったり「うつ」になったりするケースが少なくありません。

睡眠覚醒リズムにしたがった生活をすると、身体・精神症状が消失します。

睡眠や概日リズムに関する素因(生まれつきの体質的素因)も関係しているのではないかと言われています。

睡眠相前進症候群:極端な早寝早起き

高齢者に多く見られます。定年退職後に社会活動が少なくなって、床につく時間が早くなること、日中の活動量が減り、疲れが少なくなることが理由として挙げられます。

遺伝性が強いとも言われていますが、先天的なものか環境的なものかはまだまだ研究の余地があるようです。

非24時間睡眠覚醒症候群:周期的に昼夜逆転

眠る時刻と目覚める時刻が毎日少しずつ(1~2時間)後ろへずれてしまいます。

無理に睡眠時間を固定しようとすると、日中の眠気や夜間の不眠、注意力や集中力の低下、疲労感・倦怠感があらわれます。

光による体内時計の時刻合わせ機能が正常に働かないことが原因と考えられます。

思春期の睡眠覚醒リズム障害(睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群)は、心身医学的な課題であることにも注意する必要があるとのこと。

不規則型睡眠覚醒パターン:ぶつ切りの睡眠

昼夜問わず、不規則に寝たり起きたりをくり返します。認知症など病気の高齢者によく見られます。

環境変化による睡眠障害

時差症候群

外的要因による概日リズム障害、いわゆる「時差ぼけ」。5時間以上時差がある地域を移動したときに起きる症状です。東方向に移動したときほど、症状が起りやすくなります。

交代勤務睡眠障害

日勤、夕勤、夜勤をローテーションでこなす交代勤務者のリズム障害。入眠障害、熟眠障害、中途覚醒を訴える人が多く、起床困難が起こりやすくなります。睡眠不足で、仕事中の眠気もつらく、疲労感、食欲不振、下痢、嘔吐などの胃腸障害があらわれることもあります。

作業効率の低下や大きな事故を防止するためにも、シフトを工夫することや、仮眠の時間を確保することが必要です。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群

寝ている間に呼吸が止まる病気。激しいいびきと昼間の眠気が特徴です。本人が自覚できない睡眠障害とも言われ、不眠、過眠、どちらの症状もあらわれます。

・夜間睡眠中、1時間に5回以上、1回10秒以上呼吸が停止(無呼吸)
・あるいは、呼吸の量が正常呼吸の半分以下(低呼吸)

睡眠中にのどの筋肉が緩み、舌根などが落ち込んで気道を塞ぐために起こります。のどが詰まると、眠りが浅くなり、体に悪影響が及びます(口の渇き、頭痛など)。

主な治療法は、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)。

CPAPマスク

鼻マスクから空気を送り込み、のどが詰まらないようにする方法です。症状が軽い人には、マウスピースを使った治療も効果があります。

肥満傾向のある人が体重を減らすだけで、症状が改善することもあります。

過眠症

過眠は、日中に耐えがたい眠気に襲われたり、眠り込んでしまうことが毎日くり返し見られる状態です。

睡眠不足から起こるケース
・不眠症
・閉塞性無呼吸症候群
・周期性四肢運動障害 など

脳の覚醒を維持する機能が妨げられるために起こるケース
・ナルコレプシー
・突発性過眠症
・反復性過眠症

ナルコレプシー

ナルコレプシー

神経機構の機能低下で起こる過眠症。ナルコ(=睡眠)、レプシー(発作)を意味します。試験中、商談中、食事中、運転中などに、10~20分眠り込んでしまうことがあります。わずかな刺激で目を覚ますため、居眠りと見なされてしまうことも多くあります。

主な症状
1) 日中の耐えがたい眠気
2) 情動性脱力発作:笑ったり驚いたときに全身の力が抜けてしまう
3) 入眠時幻覚:現実と夢が区別しにくい
4) 睡眠麻痺:金縛り状態

周囲の理解を得られないことが多い障害ですが、適切な治療をすれば改善が期待できます。

突発性過眠症:常に眠気に襲われる

通常通りよく眠っていても日中に眠いケース、昼も夜も睡眠が長く続くケースがあります。

反復性過眠症:眠気が時々あらわれる

1年に数回、3~10日間、1日16~18時間眠り続けます。

突発性過眠症、反復性過眠症ともに、まだまだわかっていないことが多く、原因や治療法は現在研究中です。

周期性四肢運動障害

入眠後に脚の筋肉がピクンと周期的にけいれんします。そのため、眠りが浅くなり、中途覚醒しやすくなります。昼間の強い眠気やだるさに悩まされる人もいます。中高年や妊娠中の女性に多くみられます。

症状は、カフェインを多く摂っているときや、疲れているときに出やすいと言われます。また、ドーパミンの機能低下が原因で起こると考えられています。

当人は睡眠中のけいれんや中途覚醒を自覚していないことが多いため、家族に観察してもらうことを勧められます。

むずむず脚症候群

夕方から夜間にかけて、ふくらはぎや大腿部を中心に、脚がむずむずするような不快感が出ます。そのため、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めて眠れなくなったりします。

じっと座っているときや横になっているとき、虫が這うような感じがしてじっとしていられなくなります。歩き回るとラクになりますが、寝床に入ると症状があらわれます。

原因として考えられているのは、ドーパミンの機能低下。

周期性四肢運動障害と併発している人も多くいます。鉄欠乏性貧血や慢性腎不全などの疾患がある人、高齢者や妊娠中の女性にも多くみられます。

むずむず感や疼痛は治療によって治まります。

 

<参考書籍>
井上雄一 (2007)『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』講談社

それぞれの睡眠障害を軽減する方法や予防法についても、わかりやすくコンパクトにまとめられています。

太田龍朗 (2006)『睡眠障害ガイドブック 治療とケア』弘文堂

内山真 (2014)『睡眠のはなし – 快眠のためのヒント』中央公論新社

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