初めての受診はいろいろと不安がありますよね。
「うつ病で精神科にかかるなら、どんな病院がいいの?」
「信頼できる精神科医を選ぶポイントは?」
など、わからないことだらけで、戸惑ってしまうこともあると思います。
結論から言うと、病院選びで重視したいポイントは、
- 通いやすさ
- 医師との相性
この2点です。
では、具体的にどうやってそれを見極めればいいのでしょうか。
- 自分に合った病院とは?
- 信頼できるお医者さんとは?
それぞれのチェックポイントをまとめました。
病院選びのポイントは無理なく通えること
心の病気は、1回2回の受診で完治するものではありません。
数か月~年単位の長期戦になることも少なくないので、無理なく通えることは大事なポイントです。
具体的には、以下の点をチェックしておきましょう。
1. 週1でも通える距離か?
症状が落ち着くまでは、1~2週間に1回のペースで通院することが多いので、足を運びやすい場所が理想的。
2. 診療時間・休診日は自分に合っているか?
仕事や学校で日中に通院できない人は、週末や夜間でも診てもらえるところが便利です。
3. 予約は入れやすいか?
人気の病院は、予約を取るのに数週間待ちということもあります。場合によっては「予約枠がいっぱいなので他の病院を当たってください」と言われることも(経験談)。
「予約が取れない=よい病院」とは限らないので、他の病院を当たってみてもいいと思います。
4. 待ち時間は長すぎないか?
何時間も座って待っていると疲れてしまいます。比較的スムーズに診てもらえる予約制の病院が理想です。
信頼できる精神科医を選ぶ3つのポイント
心の病気の治療で大切なのは、医師との信頼関係です。
安心して話ができる先生を選ぶために、以下のポイントをチェックしておきましょう。
1. 治療方針をきちんと説明してくれるか?
- 治療方法
- 投薬の予定期間、減薬の方法
- 薬の作用、副作用
- 薬の種類や量を変更する理由
これらの基本事項をきちんと説明してくれることは最低限の条件です。
2. 誠実に対応してくれるか?
「質問したら機嫌が悪くなった」という医師は論外。
薬や治療方針についての説明だけでなく、患者側の不安や疑問にきちんと応えてくれる先生が理想です。
穏やかで話しやすい雰囲気だと、質問も気軽にできます。
中にはクールな先生もいますが、治療に関して不足なく対応してくれるのであれば、悪くないと思います。
3. 先生との相性はどうか?
「その先生が好きか嫌いか」も無視できない条件です。
たとえ名医と呼ばれる精神科医でも、「生理的にムリ!」と感じる相手に、心を開いて話をすることはできません。
「女性の方が話しやすい」
「温和な先生の方が安心できる」
「はっきり意見を言ってくれる先生がいい」
など、自分の好みも考慮しながら、安心して治療を受けられる先生を選びましょう。
どうしても合わないと感じたときは、転院を考えてもいいと思います。
こんなクリニックや医師には要注意!
本を読んでいると、医師や病院の選び方について共通のポイントが見られます(参考書籍はこのページの最後に紹介しています)。
治療の質や医師の人柄は、実際に行ってみないとわかりません。でも、事前知識は「ヤバい医師」を回避するのに役立ちます。
「なんかモヤモヤするな」「私が悪かったのかな?」と感じたら、以下のポイントを思い出してみてください。
1. 初診に十分な時間を割いてくれない
診察時間は、初診では少なくとも30分、再診は5~10分くらいのところが多いようです。
症状が出るまでの経緯、今困っていることなど、話をろくに聞かず一方的に診断する医師は要注意です。
2. 薬の説明をしてくれない
処方した薬、副作用の説明をしない医師は要注意。
3. 初診で薬をたくさん処方する
いきなり精神科の薬を3種類以上出す医師、同じ効果の薬を大量に処方する医師は要注意。
4. 不調を訴えるたびに薬が追加、変更される
「調子が悪い」と言うたびに、コロコロ処方が変わる医師は要注意。
ただし、薬の追加・変更が必ずしも悪いとは言えません。精神科の薬の多くは、少量から開始して様子を見ながら少しずつ増やしていきます。副作用を抑えるための薬が追加されることもよくあります。
詳しい説明がなく、薬の追加・変更に無頓着な医師には、処方の理由を尋ねましょう。
5. 威圧的な態度、すぐ感情的になる
治療に関する疑問に答えてくれない医師、ちょっと質問しただけで機嫌が悪くなる医師は要注意。
6. 他科と並列して精神科・心療内科を掲げているクリニック
「内科・外科・心療内科」など、“おまけ的に”心療内科や精神科を名乗っているクリニックは、専門医でない可能性があるので要注意。
7. 「薬を一切使いません」を売り文句にしている病院
軽症うつ病に対しては、薬を使わない治療を優先させるガイドラインがあります([PDF] 日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害)。その意味で、薬を使わない方針は正しいと言えます。
ただ、精神疾患には薬が必要な病気もあります。「絶対」「一切使わない」と言い切っているところは、ちょっと注意した方がいいかもしれません。
その他にチェックしておきたいこと
スタッフの対応(看護師、カウンセラー、事務員など)
受付のスタッフさんが親しみやすい雰囲気だと、通院の憂鬱感が少しは和らぎます。予約電話の対応からわかることもあるので、実際に問い合わせて探りを入れてみるのもいいと思います。
うつ症状がひどいときには、ちょっとしたことで落ち込んでしまうことも多いので、「親しみやすさ」「リラックスできる雰囲気」は大事にしたいところです。
院内の雰囲気(受付、待合室、診察室)
受付や待合室の雰囲気も、病院側の配慮がうかがえる部分です。
- シンプルな内装
- 観葉植物が置いてある
- 絵が飾ってある
- 穏やかな音楽が流れている
- 本や雑誌、絵本が充実している
- ウォーターサーバーが置いてある
など、客層によっても違います。このあたりは好みの範囲です。
院長が一人で診療しているクリニックは、診察室に医師の好みが出やすいようですので、あわせて観察してみると人柄が垣間見れるかもしれません。
個人的には、清潔感、シンプルさを重視したいです。ごちゃっとした診察室は、気が散るというか、何となく疲れます。
希望する治療プログラムを受けられるか?
- 医師の得意分野
- 心理療法を受けられる
- リハビリプログラムがある
- 入院できる
- 訪問看護に対応している
- より専門的な治療機器を導入している
など、サイトを見ると、その病院のセールスポイントが書かれています(反対に「○○治療は行っていません」「○○障害は扱っていません」と書かれていることも)。
カウンセリングを受けたい場合は、臨床心理士がいるか確認しておくといいですね。
施設や制度を紹介してくれるか?
患者さんにとって最適な答えを提案してくれることも大切です。
経済的な不安を訴えたときに、医療費の負担を減らす制度を紹介してくれる医師は、患者さんのことを考えていると言えそうです(制度を利用しようと主治医に相談したら「え……」と面倒臭そうだったという話を聞いたことがあるので)。
- デイケアセンターや作業所を併設している
- 相談員やソーシャルワーカーを配置している
- 地域と連携した相談センターがある
など、社会復帰に向けた福祉サポートが充実した病院もあります。
まとめ
病院選びのポイント
- 週1でも通える距離か?
- 診療時間・休診日は自分に合っているか?
- 予約は入れやすいか?
- 待ち時間は長すぎないか?
お医者さん選びのポイント
- 治療方針をきちんと説明してくれるか?
- 誠実に対応してくれるか?
- 先生との相性はどうか?
病院選びでチェックしておきたいポイントは、
- 通いやすさ
- 医師との相性
情報を上手に集めるコツは「病院の探し方」のページを参考にしてみてください。
はじめて精神科を受診するときには、正直よくわからない部分も多いと思います。調子が悪ければ、たくさんの条件をチェックする余裕なんてないですしね。
そういうときは、家族や親しい人に病院選びを手伝ってもらいましょう。
<参考書籍>
井原裕 (2015)『うつの8割に薬は無意味』朝日新聞出版社
貝谷久宣監修 (2014)『非定型うつ病 パニック症・社交不安症』主婦の友社
上島国利 (2008)『名医の図解 よくわかる、上手につきあう統合失調症』主婦と生活社
野村総一郎 (2016)『うつ病のことが正しくわかる本』西東社
三野善央 (2010)『日本一役に立つうつとストレスの本』メディカ出版
吉野聡 松崎一葉 (2009)『現役 精神科産業医が教える 「うつ」からの職場復帰のポイント』秀和システム
Tomy (2015)『現役医師が教えます!失敗しない“心のお医者さん”の選び方 かかり方』主婦の友社