あなたが強いストレスを感じるのはどんなときですか?
- 上司がガミガミ怒り散らす
- パートナーが自分の考えを押しつけてくる
- 失業した
- マンションの上の階の住人の足音がうるさい
- 料理中に火傷した
などなどなど。
ストレスを感じる出来事はさまざま。人によって苦痛・不快感の大きさも変わります。
では、ストレスフルな状況におかれたとき、あなたならどう対処しますか?
心理学者のラザルスとフォルクマンは、対処の仕方を次の2つに分けました。
問題中心の対処
(1) もっぱら、次の段階でしなければならないことに、注意を集中した。
(2) 行動計画を立ててそれを実行した。
(3) その問題について具体的に何かできる人に、相談した。情動中心の対処
(1) 気をまぎらすために、仕事をしたり、何かほかのことをするようにした。
(2) 奇跡が起こることを望んだ。
(3) 現実よりも良いひとときやそのような場所を、空想したり、想像したりして過ごした。(『人格心理学―パーソナリティと心の構造』p.196)
「奇跡が起こることを望んだ」という部分にめちゃウケてしまったんですけど、言われてみると、なるほど納得。
脅威が小さいときや、自分がコントロールできると思えるときには「問題中心の対処」で、実際の状況を変えるために努力します。
一方、脅威が大きく、自分には何もできそうにないと感じたときには「情動中心の対処」が使われやすい。「情動中心の対処」には、激しくわき起こった感情(情動)を調節する機能があります。
こうした対処によって、私たちはストレスを和らげることができているらしい。
実際に、このことを証明する研究も行われていて、内容をざっくりまとめると、
⇒ 自分の力が及ばない状況では、「情動中心の対処」を多くとる方が望ましい。
自分の力では何も変えられない状況で、その状況を変えようと努力してもうまくいかない……って、こうやって言葉にすると当たり前じゃんって思いますけど、実際にそういう切羽詰まった状況に置かれたら、うわーー何とかしなきゃーーーってジタバタしちゃいますよね。まして、深刻な状況であればあるほど、現状を打開しなければ! と力む。
でも、その態度こそが心身を消耗させてしまうと。
情動中心の対処は、いわゆる現実逃避のような側面もあるわけですが(脅威について考えるのを避けたり気分を良くしようとしたりするわけだからね)、それによって自分の内に生まれた情動を調節する機能があるというのは面白いなぁと。いや、面白いというか、そうすることで心身のバランスをうまいこと保とうとしているって、自分すごいじゃん! って。
今まで、現状を変える努力をしないことは悪いことのように思っていましたけど、状況によっては、奇跡を願った方が心と体をラクにできることもあるんですね。「困ったときの神頼み」もそう? いや、この言葉は、問題中心の対処が足りてなさそうな感じもありますけども。
うつ病などの病気も、自分の力ではどうしようもできない部分がありますよね。しかも、「早く治さなくちゃ」という思いが強い人ほど、自分の力では変えられない状況を何とか変えようともがきまくって、結果、心も体も疲れ果てて「もうダメだ」の悪循環にハマってしまう傾向があるような気がします。
なので、現実逃避など何の問題解決にもならぬ! もっと努力せねばならぬ! と頑張っている人は、もう少し情動中心の対処を取り入れるといいかもしれないですね。気をまぎらすために他のことをしたり、奇跡が起こることを望んだり、現実よりも良いひとときや素敵な場所を空想したりして過ごすなどの方法で。
反対に、情動中心の対処で現実逃避ばかりしている人は、次の段階でしなければならないことに集中したり、行動計画を立ててそれを実行したり、問題について具体的に何かできる人に相談したりして、具体的な行動を起こすのが望ましい。
って、まーそんなこと言われなくてもわかってるし、頭でわかっててもできないから困ってるんでしょうが! みたいなところはあるので、一言何か言うなら「テイク・イット・イージー」ってことになりますよね。
まずは「変えられること」「変えられないこと」を見極めることが重要です。そして、心と体を痛めない範囲で、問題中心の対処・情動中心の対処、それぞれをうまいこと使っていけたらいいのかなーと思います。
このブログで言うと、「お悩みいろいろ」「モヤモヤ整理法」は問題中心の対処寄り、「心をラクにするヒント」「生きづらさを抱えるあなたへ」は情動中心の対処寄りですね。「療養中の過ごし方」は両方かな~。いや、基本的には全部両方かな~。
まぁ、どんな状況であれ、心をよい状態にして、自分が望む状況に近づけるにはどうしたらいいか? という方向が大事だと思うので、とりあえず緊張をほぐしましょう、というのが当ブログの基本的な姿勢です。
まずは、今の自分にできることをやっていきましょう。
<参考書籍>
鈴木乙史 佐々木正宏 (2006)『人格心理学 ― パーソナリティと心の構造』河出書房新社 pp.185-199