「うつ病はどの病院に行けばいいの?」
「クリニック、総合病院、精神病院、何が違うの?」
そんな方に向けて、各医療機関の違い、メリット・デメリットをまとめます。
人それぞれの好みもあるので、一概に「これがいいよ!」と断言はできないのですが、一つの意見として、私の経験を踏まえた答えも紹介します。
うつ病を疑って受診するとき、どこに行けばいいか迷ったら参考にしてみてください。
「うつ」で初めて受診するならどこがいい?
「最近うつっぽくて……」
「はじめて受診するんだけど」
そんな人には、街中にあるクリニックをおすすめします。
私が初めて受診した病院も、駅前のクリニックでした。
- 通いやすいこと
- 心理的なハードルが低いこと
この2つが大きかったです。
また、大きい病院に通っていたとき、担当医に「ここは人の入れ替わりが激しいから、長く診てもらうことを考えると、クリニックの方がいいかもね~」と言われたこともあります。
クリニックをおすすめするのは、あくまでも個人的な意見ですが、メリット・デメリットを考慮すれば、まぁ納得の答えなんじゃないかなと思います。
次に、そのあたりの理由をもう少し詳しく見ていきましょう。
各医療機関の特徴とメリット・デメリット
精神科の治療を受けられる病院は、次の4つ。
- クリニック(診療所/医院)
- 精神科病院
- 総合病院
- 大学病院
以下、各病院の特徴とメリット・デメリットをまとめます。
クリニック(診療所/医院)
街中にある小さな病院。院長さん中心のクリニックと、何人かの医師が所属するクリニックがあります。
《メリット》
- 駅前など便利な場所にあって通いやすいところが多い
- 土日や夜間も診療しているところが多い
- 数が多いので、選びやすい
- 地域に密着しているため、柔軟な対応が可能
- 規模が小さいクリニックは同じ医師が長く担当してくれることが多い
《デメリット》
- 入院施設がないところが多い
- 時間外には対応できない
- 重症患者には対応できないことがある(その場合は総合病院などを紹介される)
- 人気の病院は、なかなか予約をとれないこともある
こんな人におすすめ
- 仕事・学校帰りに通院したい方
- 平日の昼間に診察を受けるのは難しい方
- 精神科の受診に抵抗がある方
精神科病院
精神科専門の病院。規模はさまざま。入院病棟があります。
《メリット》
- 入院治療を受けられる
- 24時間体制で、緊急対応してもらいやすい
- 重症の患者さんも対応してもらえる
- 専門治療、検査の設備が整っているところが多い
- 医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士など、多くの専門スタッフがいる
《デメリット》
- 精神科以外の病気への対応が難しい
- 病院の数が少なく、アクセスの悪い郊外にあることが多い
- 閉鎖的なイメージがある
- 歴史のある建物が多い(古い)
- 主治医の異動で担当が変わることがある
こんな人におすすめ
- 緊急時に対応してもらえる病院を希望する方
- より専門的な治療、検査、リハビリを受けたい方
総合的な病院の精神科
内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科などの身体科がある病院。入院病棟もあります。
《メリット》
- 他の診療科を受診しやすい
- 他科と連携した治療が受けられる
《デメリット》
- 予約制でない場合は、待ち時間が長い
- 診てもらえる曜日や時間が限られている
- 精神科の入院ができない病院もある
こんな人におすすめ
- 心の病気以外にも持病がある方
大学病院
医療教育と研究のための機関。医療サービスの面では、総合病院との共通点が多いですが、ちょっと特殊な部分もあります。
《メリット》
- 最先端の技術や検査などの体制がそろっている
- 他科と連携した治療が受けられる
《デメリット》
- 予約制でない場合は、待ち時間が長い
- 診療曜日や時間が限られている
- 主治医の異動で担当が変わることがある
- 研修医や学生などが診察に同席することもある(断ることもできる)
この他に押さえておきたいポイントは、
- 紹介状が必要
- 選定療養費が加算される
- 若いドクターが多い
- 有名な教授に診てもらえるとは限らない
など。ベテランドクターに比べると、若いドクターは臨床経験が少ないですが、最新知識を持っているという強みもあります。
いずれにせよ、はじめて精神科を受診する方にとっては、第一の選択肢ではないのかなと思います。
※選定療養費とは:紹介状なしで受診した患者さんが初診料とは別に支払うお金。料金は病院によってまちまちです(大きい病院だと5,000~6,000円が相場?)。
このクリニックで本当に大丈夫?
冒頭、「うつで初めて受診するなら、街中にあるクリニックがおすすめ」と書きました。
これは私の個人的な経験を踏まえたものですが、「○○がおすすめ」と言い切ってしまうのは、ちょっと抵抗もあります。
なぜなら、人それぞれ好みがありますし、ひどい対応の病院もあると聞くからです。
『うつの8割に薬は無意味』の著者(精神科医・井原裕氏)は、「精神科医療の現場は玉石混淆」であり、「精神科医にかかるのはいまやギャンブル」とまで書いています。
少々キツい意見ではありますが、全体を通して読めば納得できる部分が多いです(参考:うつ・双極Ⅱ型障害の治し方 ― 『うつの8割に薬は無意味』感想)。
幸い私はそこまでひどい病院に当たったことはありません。素敵な先生との出会いもありました。でも、知り合いやこのブログの読者さんからよろしくない話を聞くこともあります。思わず「うわ~、それはひどいね~」と言いたくなるような実態です。
一方で、『現役医師が教えます!失敗しない“心のお医者さん”の選び方・かかり方』の著者は、こんなふうに書いています。
一般的な精神疾患であれば、大学病院ではなく、評判のよいクリニックや単科の精神病院のほうが対応も慣れており、柔軟性があるので個人的にはおすすめです。(p.127)
かなり柔らかい表現ではありますが、前提条件には注目しておきたいところ。
「一般的な精神疾患であれば」
「評判のよい」
言外に「おすすめできないケースもあるから気をつけて」というメッセージが含まれているようにも受け取れます。
その内容こそが一番知りたい部分ですよね。でも、こればかりは行ってみないとわからない。
病院選びに関しては、前述の井原先生のアドバイスが参考になります。
あそこのクリニックはどうかな? と思ったら、実際に受診した人から話を聞くなり、ネットの声を丹念に拾うなどして、クリニックの評判をあらかじめ調べることをお勧めします。(Kindle No.2027/2786)
脅すようなことを書いてしまいましたが、次回紹介する「情報の上手な集め方」や「病院選びのポイント」を参考にしっかりチェックしておけば、とんでもない病院に当たることは避けられると思います(絶対とは言えませんが……)。
失敗を回避するために、「こういうこともあるよ」と一応頭の片隅に置いておきましょう。
まとめ
「うつ病かも……」
「はじめて受診するんだけど、なんか怖いな」
そんな方は、地域のクリニックが受診しやすいと思います。
- うつ病を疑って受診する人
- はじめて精神科へ行く人
→ クリニックがおすすめ
- 緊急時の対応が気になる人
- より専門的な治療を受けたい人
→ 精神科病院がおすすめ
- 心の病気以外に持病がある人
→ 総合病院・大学病院
病院選びに迷ったとき、参考にしてみてください。
<参考書籍>
井原裕 (2015)『うつの8割に薬は無意味』朝日新聞出版社
野村総一郎 (2016)『うつ病のことが正しくわかる本』西東社
吉野聡 松崎一葉 (2009)『現役 精神科産業医が教える 「うつ」からの職場復帰のポイント』秀和システム
Tomy (2015)『失敗しない“心のお医者さん”の選び方 かかり方―現役医師が教えます!』主婦の友社
<参考サイト>
医療機関の探し方、選び方|みんなのメンタルヘルス – 厚生労働省
こころの病気を知る|みんなのメンタルヘルス – 厚生労働省
[PDF] 紹介状なしの大病院受診時に係る選定療養について – 厚生労働省
精神科医療機関受診についてQ&A – 公益社団法人 日本精神神経学会