ナミうつブログ

「うつ」のお悩みを軽くするヒントを双極Ⅱ型障害の人が模索するブログです。

うつ・双極Ⅱ型障害の治し方 ― 『うつの8割に薬は無意味』感想

 

精神科医・井原裕氏の著書『うつの8割に薬は無意味』を読みました。

まず最初に感想を一言で言うなら、おもしろかったです。いかにも賢くない人の感想といった感じですが、本当にとても興味深く、「なるほど」「確かに」を連発しながら読みました。

それで、今から思ったことなどをお話するのですが、前半のどうでもいい話のせいで、かなり長くなってしまいました。ので、最初に押さえておきたいポイント、「うつ当事者」にとって参考になるポイントをまとめます。

うつ当事者にとって参考になるポイント

本書における「うつ当事者」とは、従来のうつ病(「気が滅入って、好きなことにも興味をなくし、何をするのも億劫になってしまう病気」p.49)に当てはまらない人をはじめとする、抗うつ薬が効かない人です。

<「うつ」の治し方>

  • 1日7時間超の睡眠
  • 睡眠相(睡眠パターン)の安定
  • 断酒

まずはこの3つを徹底する。

<睡眠リズムの整え方> p.144
乱れた睡眠・覚醒リズムを改善するために睡眠日誌をつける。

– 昨日何時に就床したか?
– 何時に眠りに入ったか?
– 今朝何時に目覚めたか?
– 何時に布団から出たか?

双極Ⅱ型障害は睡眠・覚醒リズムの失調。気分の波は睡眠・覚醒リズムの動きに引きずられて生じた二次的な症状であるため、睡眠・覚醒リズムさえ安定すれば、気分も自然に治っていく。

参考:日本うつ病学会 – 睡眠・覚醒リズム表(PDFファイル)

<こんな精神科医は要注意> p.204

  • 初診なのに薬を3種類以上出す
  • 処方した薬の説明をしない
  • 副作用の説明がない
  • 不調を訴えるたびに薬が増える、変更になる
  • 治療に関して疑問に思うことをたずねると機嫌が悪くなる
  • 薬を出すだけで、助言、指導、提案をしない
  • 症状ばかり尋ねて、生活を知ろうとしない

<紹介状とセカンドオピニオン> p.206
大学病院は紹介状がないと受診できないが、保健医療機関の紹介状であれば、診療科は問わない。

– 花粉症で診てもらっている耳鼻科の先生でもOK
– 虫歯の治療のついでに、そこの歯医者さんに書いてもらってもOK
– その他、皮膚科、整形外科、眼科、どこでもOK

「「うつであそこの大学病院で診てもらいたいので紹介状をお願いできませんか」と言えば書いてくれるはずです。」(p.207)

<ドクターの機嫌を損ねないような適当な理由> p.207
「あの大学病院の近くに引っ越すことになったので」
「あの近くに勤務地が変わったので」
「あの近くに実家があり、最近具合のよくない父の様子を見に行くのに便利なので」

「うつと診断されたとき、患者や家族がどうすべきか?」といったポイントも、ケースごとに示されています。

回復期にはちょっと頑張りが必要だよ、ということも忘れてはいけません。

本書のイメージ(というか雑談)

難しい話はとりあえず置いておいて、まずは適当なお喋りをします。そういうのはいらないよという人は次の見出しからどうぞ。

『うつの8割に薬は無意味』を読みながら思い浮かべたのは、切れ味抜群のメス。優れた道具は、使う人によって、良い結果をもたらすことも、悪い結果をもたらすこともあります。本書においては前者です。

優れた医師が切れ味抜群のメスを使って、次々と悪性腫瘍を取り除く。

そんな手術のイメージから、今度は「ドクターX」を連想しました。米倉涼子さん演じる天才外科医が主人公のテレビドラマです。決めゼリフは「私、失敗しないので」。その言葉の通り、困難な手術を次々と成功させ、患者を救う。日頃の鬱憤、スカッと解消。予定調和の痛快ストーリー。

と、そんなイメージは脱線しすぎ、夢見すぎ。で、再び我に返って、続きを読み進める訳ですが、切れ味抜群のメスと手際よく進む手術のイメージはずっとチラついていました。そう、とにかく無駄がないのです。不合理な感情や怠惰がいかに問題解決の邪魔をしているか思い知らされます。

本書を中盤まで読んだところで、いったんお風呂に入ることにしました。湯船につかって、読んだ内容を思い返しながら、頭の中を整理していて、ふと考えました。

「本書の著者、映画化するなら誰かな?」

医師のイメージがある役者さんを挙げてあーでもないこーでもないと考えて、お風呂から上がりドライヤーのスイッチを入れた瞬間に思いつきました。

「あ、矢口蘭堂だ」

矢口蘭堂とは、映画『シン・ゴジラ』の主要人物の一人。演じるのは長谷川博己さん。いち早くゴジラの存在に気づいた政府の偉い人(内閣官房副長官)です。

みんながモゴモゴやってる間に、問題の正体を指摘した。

この感じが、本書の著者と共通していると言えなくもないなと。たとえば、精神科医・製薬会社・患者、三位一体の問題に切り込んだところとか(このあたりについては、他にも指摘している人がいるのでしょうが)。

もちろん、政治家と精神科医じゃ性質が全然違いすぎるよね~とも思うわけですが、インスピレーションは意外に侮れないわよねというわけで、あまり深く考えず、本書の後半からは矢口蘭堂(長谷川博己)再生で読み進めることにしました。

するとすると、鋭いメスは尚いっそう冴え渡る! 説得力も倍増。イケメンの力はすごいぞ。

……などと最初はやっていたのですが、その想像はわりとすぐにしぼんで、最初の印象に戻りました。裏表紙にある井原裕先生の写真から生成したイメージで、私は本書のメッセージを受け取ったのでした。

「薬が無意味」な「うつの8割」の人のために

私が本書から受け取ったメッセージは主に次のもの。

  • うつの治療で、薬を飲むことに意味があるのは2割(多くて3割3分、少なくて1割2分)
  • 生活習慣を改めることで回復する症状は多い
  • 「うつ病は基本的に治る」

生活習慣改善で大切なのは、このページの最初にまとめたポイントです。

「でも、薬が必要な人だっているよ」
「そんな単純なものじゃないよ」

『うつの8割に薬は無意味』と聞けば、こんな思いも浮かびますよね。その疑問に対する答えも、本書の中できちんと説明されています。

まず、タイトルが『うつの8割に薬は無意味』だからといって、「抗うつ薬は使うべきではない」というつもりでも「抗うつ薬は使うべき」というつもりでもないと著者。

「うつの人の8割に薬は無意味、意味があるのは2割だけ」(……)

本書は、「薬が無意味」な「うつの8割」の人のために書きました。(p.20)

感情的になって読むと、読み間違いをしてしまう危険な書だと言えるかもしれません。

私のように数字に弱かったり、書かれた文章の印象をそのままズドンと受け取ってしまう人は要注意。カァァーっと興奮しちゃう人もいろいろ取りこぼしてしまう可能性があります。

そんでもって、イライラ&興奮してしまいそうな人に対するエクスキューズも入っていて、思わず苦笑ってしまいました。皮肉や煽ってる感じもすごくて、「うひょ~」となります。

また、本書は精神科医が読むことを想定して書かれた本でもあります。「自分の主治医はどうかな?」と考えながら読むと、また違った気づきが得られると思います。

ともあれ、

イライラして頭に血が上ってきたら、どうか読むのをやめてください。興奮した頭脳では何を考えても冷静な判断はできません。私としてもエキサイトしすぎる人にもご理解を頂きたいなどとは、思っておりません。お願いですから、どうか、読むのをおやめください。(p.143)

とのことです。これは精神科医の先生へのメッセージですが。

「うつ」の定義より大切なこと

今お話したように、本書が伝えるのは「うつの8割に薬は無意味」という一貫したメッセージです。

これは「精神医学における公然の秘密」として紹介されていて、詳しい説明を聞けば納得できます。

が、いくつか疑問は残ります。

そもそも「うつ」とは一体何なのか?

何より、うつ当事者が一番気になるのは、

「私のうつは『薬が無意味な8割』に当てはまるの?」

ということではないかと思います。

本書を読んでも、結局「うつ」の線引きは不明です。

うつ病にしても、躁うつ病にしても、「明らかにこれは違うよね」という例は挙げられていますが、どちらとも言えない微妙なラインには言及されていません。

だから、何だか割り切れない思いが残ります。

ただ、「うつ」の定義はわからなくても、治療の効果を感じられないのであれば、「自分は薬が無意味な8割なのかな?」と一度考えてみる必要があるということです。

忘れてはいけないのは、「生活に支障をきたしている人が、健全な生活を取り戻すためにはどうしたらいいのか?」という視点。

本書『うつの8割に薬は無意味』では、健全な生活を取り戻す方法が端的に示されています。

「うつ」や「薬」について考えることは大切です。でも、それ以上に「無意味」とはどういうことか考えることも大切です。

自分にとって意味があることとは何か?
自分が見いだす人生の価値とは何か?
本当に大切なこととは何なのか?

薬に頼らず、まずはそれをちゃんと考えましょうね、自分にできることを頑張りましょうねと。

そうすれば、「うつ」や「薬」とどう向き合っていけばいいか、その道すじも見えてきます。

最後に

病気や治療に関する話題以外にも、印象的だったところがいくつかありました。

たとえば「誰だって自分が一番かわいい」と見出しのついたパート。

この「誰だって」に著者が含まれているのかという点は、うまくかわされていましたが、現代社会に生きる以上、“誰だって”この態度を完全に無視することはできません。

自分かわいさゆえに、私(たち)はラクしようとしたり、自分に有利な選択をしようとします。それは必ずしも悪いことではありません。ただ、どんなときも自分で考えて答えを出すことを怠けてはいけないなあと痛感しました(激うつで思考力が低下したときは無理じゃんとも思うのですが)。

目先のことに惑わされちゃいけないし、人の言っていることをそのまんま受け入れちゃいけない。

「先生が言ったから」「ネットに書いてあったから」「本に書いてあったから」とそのままつるんと飲み込んでしまうのもいけません。ちゃんと噛み噛みしないと。

『うつの8割に薬は無意味』は、精神医療の本ですが、日々の生活や自身の態度をふり返るきっかけを与えてくれました。

この本を読んだことで、私は自分の弱さやズルさに向き合わなくちゃいけないなと思いを新たにしたところです(この気持ちが持続することを願うばかりです)。

 

<本日の一冊>
井原裕 (2015)『うつの8割に薬は無意味』朝日新聞出版社

【こちらもあわせてどうぞ】
「うつ病は甘えではない」が前提の『「うつ」は病気か甘えか。』

 - 双極性障害(躁うつ病), うつ関連書籍 

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Comment

  1. あたま より:

    ブログ更新ありがとうございます。
    ブログの内容とは関係ないコメントですが承認していただけるでしょうか。

    ある人にこのブログのことを教えてあげました。その人は、今仕事のことでたいへん苦しんでいます。ナミウツブログを読んで少しでも楽になってもらいたいです。
    その人、頑張りすぎない程度に頑張ってください。

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