「うつ病を治したい!」
「早く職場に復帰したい!」
そのために必要なのは、とにかくゆっくり休むこと。
とは言え、休職に抵抗を感じる人は少なくないと思います。
「うつ病と診断されたからといって、仕事を休むことはできない!」
「今休職しているけど、こんなに休んで大丈夫? 迷惑だよね?」
考えれば考えるほど焦りが膨らみます。しかし、何をするにも身体が資本。健康第一です。
今回は、休職の不安を解消し、うつ病治療に専念するためのポイントをまとめました。
もくじ
安心して会社を休むために知っておきたい3つのポイント
ポイント1:休職開始までの流れ
1.上司に病状と医師の診断を伝え、休職を打診する
なかなか言い出しにくいことではありますが、まずは直属の上司に相談してみましょう。
「うつ病と診断されたので、休職したい」
「このまま仕事を続けていては、かえって迷惑をかけてしまう」
診断書を示し、医師の指示だということも併せて伝えましょう。
伝え方のポイント
・言葉遣いは丁寧に。
・不調により出社できないことを伝える。
・謝罪と感謝の言葉を伝える。
言いにくいことをソフトな印象にするクッション言葉 |
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「恐れ入りますが」 「大変申し訳ないのですが」 「大変申し上げにくいことなのですが」 「ご迷惑かとは存じますが」 「勝手を申しまして恐縮ですが」 「お手数をお掛けしますが」 「お忙しいところ、申し訳ございません」 「大変心苦しいのですが」 |
その他のバリエーション |
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「伺うことができかねます」 「難しいと感じます」 「非常に困惑いたしております」 「どうしたものかと苦慮している次第でございます」 「残念な気持ちでいっぱいです」 「不本意でございます」 「このような結果になりましたことを、お許しください」 「休みをいただきたいのですがよろしいでしょうか」 |
2.休職に必要な書類を準備・記入し、提出する
休職が決まったら、必要な手続きを指示されると思いますので、書類をそろえて提出します。
手続き
・就業規則を確認する。
・休職願い・診断書を会社に提出する。
・休職申請の受理を確認する。
就業規則に基づいた手続きを踏み、休職に入ります。
※休職制度、手続きは会社によって違います。わからないことがあれば、担当の課(総務、労務人事)に確認してください。
3.ゆっくり休んで、治療に専念する
うつ病を治すためにも、職場復帰を果たすためにも休養が必要です。とにかく今は、仕事のことはいったん忘れて、しっかり休みましょう。
ポイント2:休職期間ってどれくらい?
休職期間は会社によっていろいろ。ケース・バイ・ケースです。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、休職期間の上限は以下の通り。
原則として、休職期間中に治らなければ退職となりますが、うつ病の症状・回復具合などにより休職期間が延長されることもあります。
最近では、休職期間を「通算」できる決まりを設定する企業が増えているようです。
ポイント3:休職中にもらえるお金は?
休職期間中の賃金は?
一般的にほとんどの会社では、「休職期間中は無給」としているようです。
傷病手当金
うつ病で休職する場合、健康保険の傷病手当金という制度を利用することができます。
支給のための条件
・病気療養のため、働けないとき
・4日以上休んだとき(そのうちの3日間は連続で休んでいること)
・会社から給与・手当をもらえないとき
支給期間
・最大1年6か月
支給額
・給料の約6割
手続き
ステップ1:申請書に必要事項を記入する
申請書はこちらからダウンロードできます。
傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書) | 全国健康保険協会
ステップ2:医師に証明欄を記入してもらう
申請には「病気で働くことができない」という医師の証明が必要です。申請書を病院に持って行き、記入をお願いしましょう。
ステップ3:事業主の証明欄を記入してもらう
申請書を会社に提出します。多くの場合、会社で手続きをしてくれます。
<自分で手続きをしなければいけない場合>
①会社に事業主の証明欄を記入してもらう
②添付書類を揃える
・出勤簿のコピー
・給料台帳のコピー
③お近くの全国健康保険協会窓口に直接提出するか、郵送する(支部一覧)
申請手続きについて、わからないことがあれば、担当の課(総務、労務、人事)に確認してみましょう。
労災保険
仕事が原因でうつ病になった場合は、労災保険から手当が出ます。
厚生労働省により新たな労災認定基準が定められました。
精神障害の労災認定 | 厚生労働省
<労災と認定された事例>
・事故や災害の体験
・長時間労働
・嫌がらせ、いじめ、暴行
・セクハラ
有給休暇
有休を使い切ってから休職することを提案される場合もありますが、復職後のことを考えると、有休は残しておいた方が安心です。うつ病は波がある病気です。再発の可能性もあります。復職後も調子が悪いときは、無理をせず、休みましょう。
傷病手当の待機期間を有休で消化することもできます。
事務的な処理は、会社によって異なります。有給の扱いや療養制度についての相談先も確認しておきましょう。
スムーズに休職するコツ
休職を申し出るとき
・丁重に申し出る。
・不調により出社できないことをはっきりと伝える。
・気持ちを伝えつつ、謝罪と感謝の言葉も添えて。
例)
「本意ではないのですが……」
「医師にもすぐ休職した方がいいと言われまして……」
「みなさんに迷惑をかけてしまうので心苦しいのですが……」
「このまま仕事を続けては、かえって迷惑をかけてしまうので……」
+プラス
「本当に申し訳ありません」
「ご理解いただきありがとうございます」
揉めることなく穏便に休職に入るために
・直属の上司を立て、味方につける。
・権利を主張し過ぎない。
負担を軽くするめに
・上司、同僚、産業医など、社内に相談相手を見つける。
・家族に協力してもらう。
休職中の基本スタンス
とにかく休む
うつ病を治すためにも、早く職場復帰するためにも、まずうつ病治療に専念しましょう。
今は頑張れなくて悔しいと思います。でも、病気が治って元気になれば、いくらでも取り戻すことができます。だから、大丈夫。今はゆっくり休みましょう。
重要な判断は先送りに
うつ病になると判断力が低下し、極端な考え方に取りつかれてしまうことがあります。
「もう辞めるしかない!」と衝動的に退職したものの、回復してから「他の選択肢もあったのではないか」と後悔した、という人も少なくありません。
うつ病のときに焦って重要な判断はしないこと。今は先のことをアレコレ考えず、症状が落ち着くのを待ちましょう。
割り切る
「職場のみんなに迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちは強いと思います。最初は、仕事のことが頭から離れず、ゆっくり休むことができないかもしれません。
しかし、何をするにも身体が資本です。「病気を治すために必要なこと」と割り切って、あまり深く考えすぎないようにしましょう。
会社からの連絡が頻繁にあって休めないときは、「今は判断が難しいので……」「もう少し調子が落ち着いてからでもよろしいでしょうか?」などと現状を伝え、できる範囲で対応しましょう。
家族にも協力してもらいながら、ベストな療養環境を整えてください。
うつ病休職Q&A
Q1.仕事の引き継ぎはどうしたらいいでしょうか?
休職が必要な程に追い込まれた状態のときは、まず休養することを最優先に考えることが必要です。主治医や上司と相談しながら、無理のない範囲で進めてください。
可能であれば、スケジュールや資料、必要事項をリストアップしたものをまとめて、上司や代理の担当者に渡しましょう。
きっちり引き継ぎできるにこしたことはありませんが、無理をすることで症状が悪化してしまうこともあります。時には、「病気で休む人が考えることではない」「自分の代わりはいくらでもいる」という割り切りも必要です。
どうしても心配な場合は、気になっていることなどを簡単に書き出して、メール・郵送でお知らせしましょう。
Q2.一度会社に来るように言われましたが、調子が悪くて行けそうにありません。
どうしても会社に行くのが難しい場合や、上司と話をするのもつらい場合は、電話やメールで連絡し、郵送のやり取りでもいいか聞いてみましょう。
例)
「大変申し訳ないのですが、不調により、お伺いするのが難しいので……」
「本来ならば直接お伺いするべきなのですが、どうしても調子が優れずお伺いできる状態ではないので……、郵送でもよろしいでしょうか……?」
場合によっては、家族に連絡をお願いするのも一つ。病気を治すことを優先し、無理をしないことが大切です。
Q3.会社が対応してくれません。
就業規則に休職の取り決めがあり、その条件を満たしていれば、会社は休職を拒否することはできません。
<休職を拒否されたときの対応>
・就業規則を確認する。
・休職願い・診断書を会社に提出する。
・休職申請の受理を確認する。
就業規則に基づいて手続きをしましょう。
困ったことがあれば、職場の産業医・カウンセラーなどの専門家や、信頼できる上司や先輩に相談してみましょう。医学的な説明が難しいときは、主治医から説明をしてもらうことも一つです。
Q4.休職を申し出たら、退職をすすめられました。
就業規則に休職の取り決めがある場合、会社は休職を拒否することはできません。一方的に辞めさせることもできません。
嫌味を言われたり、厳しい言葉で責められてしまうこともあるかもしれませんが、できるだけ冷静に、まずは就業規則にのっとって手続きを進めましょう。
【ポイント】
休職する権利を主張する前に、会社や上司の立場も考えながら丁寧にお願いする。
退職を迫られたときの対応
・会社側の提案に納得できないときは退職を断る。
・意に反する退職願は書かない。
・書類を提出してしまった場合は、早めに取り消しの意向を伝える。
・就業規則を確認しておく。
・会社側の発言内容や言動を記録しておく。
解雇には正当な理由が必要ですので、会社側の提案に納得できないときは「退職するつもりはない」「働き続けたい」とはっきり伝えます。退職願などの書類への署名捺印も避けてください。
このような話し合いをするときには、「言った」「言わない」「そんなつもりで言っていない」などの言い争いになることもあります。退職の基準や理由などについては、書面での説明を求めましょう。発言内容の記録もつけておくと、第三者に相談して調整するときに役立ちます。
Q5.就業規則に休職の規定がありません。
休職の取り決めがない場合、長期にわたって休みをもらうことは難しいようです。とは言え、病気を理由に即日解雇という対応は一般的ではありません。
退職を考える前に
不調により今の仕事がこなせないときは、配置転換をお願いするというのも一つです。
・仕事の量を調整してもらう。
・他の仕事に変えてもらう。
・担当部署を変更してもらう。
一度、上司に相談してみましょう。
解雇について
休職に法的な義務はありませんが、解雇には正当な理由が必要です。仕事が原因で発病した場合、病気を理由に解雇することはできません。
会社が解雇するときには、以下の2点が義務付けられています。
・30日以上前に知らせる。
・予告のない場合は、30日分の給料を支払う。
納得できない場合は、書面での説明を求めましょう。
困ったときの相談窓口
会社との話し合いがうまくいかないとき、問題の対処法に困ったときは、専門機関に相談窓口を利用することができます。
・自治体の労働相談窓口
総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
・労働基準監督署
全国労働基準監督署の所在案内(厚生労働省)
【利用時間】平日 8:30~17:15
・会社の労働組合
全国の連合労働相談窓口(日本労働組合総連合会)
・社会保険労務士
職場のトラブル相談ダイヤル(全国社会保険労務士会連合会)
・産業カウンセラー
働く人の悩みホットライン(日本産業カウンセラー協会)
<ヒント>
どうやって相談したらいい?
公的労働相談機関利用時のポイント
<参考書籍>