落ち込んだり、腹が立ったり、悲しくなったりしたとき、どうやってその苦しみをやり過ごしていますか?
「悪いのは私」
「こんなふうに怒っちゃいけない」
「だから私はダメなんだ」
自然な感情を悪いものとして扱い、自分を押さえつけてしまうと、ますますつらくなってしまいます。
今日は、そんなとき手軽に取り入れられるモヤモヤ整理法をご紹介します。
気持ちを鎮めるダブルカラム法
頭の中のぐちゃぐちゃを整理するために、さっそく紙とペンを用意して試してみましょう。ダブル(2つ)のカラム(列)に思考を書き出すだけの簡単ワークです。
- 紙の真ん中に一本縦線を引く
- 左側に好ましくない考えを書く
- 右側に合理的な考えを書く
左側の「好ましくない考え」には、
- いつも自分が思っていること
- 嫌なことが起こったときに浮かんだ考え
- 自分を卑下する考えや批判
右側の「合理的な考え」には、
- 自分を擁護・尊重する考え
- 違う視点から見た考え
- 対処法
を書き加えていきます。
間違っていてもいいので、思い浮かんだことを書き出していきます。
こういった作業をすることによって、高ぶった感情は落ち着きます。そして、堂々巡りに陥りそうになった思考をストップさせることができます。
「めんどくさい!」
抑うつ症状が強いときには、紙に書くという作業だけでも大変です。そういうときは無理をせず、休みましょう。できることなら、眠ってしまうのが良いと思います。
単純に「めんどくさくてやってられるか!」というときも同様です。無理にやるもんじゃございません。気が向いたときに試してみてください。
書けるところだけ
自分が思っていることを言葉にするのは意外に難しいものです。そういうときは、左側だけ書いて右側は空けておくというやり方もアリかなと思います。
そして、
- 何か違う考えが思い浮かんだら、右側の空欄にその考えをメモする。
- 時間があるときや気が向いたときに、ダブルカラムの記録を眺めて他の考え方はないか考えてみる。
- 何も思いつかなかったら空欄のままにしておく。
時間をおくことで冷静になれます。そして、空欄は空欄でそれがヒントになっているのでOK。例えば、今信じている考えを手放すことへの抵抗感、変化への恐れがある、というように。
ただし、左側のネガティブな考えに取り込まれないよう気持ちを切り替えることが重要です。右側を記入せず過ごしてみるとわかるのですが、「合理的な考え」を書き出すことが切替スイッチになっているんですね。なので、とりあえず合理的っぽい考えを書いてみましょう。うまく表現できなくても間違っていてもいいから。
まずは「ちょっとやってみようかな」という気持ちを大切にすることから始めていきたいですね。
応用編:ダブルカラム法で鬱々軽減
紙の真ん中に縦線を一本引いて、両側にそれぞれの考えを書いていくという方法。
「好ましくない考え」「合理的な考え」を書く以外にも使えます。ここでは3つのお悩み解決策をご紹介します。どれも偏りがちな思考をフラットな状態に戻してくれます。
ベストな答えを見つける
「~しなければならない」「~すべき」という考えは、やる気を奪います。強制的な言葉は、好ましくない点をクローズアップしたり、メリットが何もないような錯覚を起こさせたりするようです。
「やった方がいいってわかってるのにできない」というときは、メリットあるいはデメリットが見えなくなっているのかもしれません。
そんなときに役立つのが「損益比較表」と呼ばれる方法です。
問題となっている行動の利益・不利益を書き出して、自分にとってベストな選択を見つけます。
思いつくものをすべて書き出したら、メリット・デメリットを比較して、どちらがどれだけ大きいかを数字で表します。
ここでは100%の比率で考えて、メリット30:デメリット70となりました。書類作成を先延ばしにすることはデメリットの方が多いので、頑張って片づけてしまいましょう。「超絶面倒くさい各種手続きを片付ける3つのコツ」が参考になるかもしれません。
このように、数字に置き換えることで、より冷静な視点を得ることができます。
また、どちらを選ぶか迷ったときの意思決定ツールとしても役立ちます。先ほどと同様に、よい面・悪い面に注目していきます。
すべて書き出したら、賛成理由・反対理由の一つ一つを数値に置き換えます。ここでは「自分にとっての重要度」で適当なポイントをつけました。
それぞれのポイントの合計点は、賛成25・反対55。仕事を辞めるのは先延ばしにした方がよさそうです。詳しくは「うつ病で仕事辞める?続ける?答えを導く退職診断フローチャート」が参考になるかもしれません。
落ち込み回避&動機づけ
「やらなきゃいけないけど、気分が乗らない」
そんなときにもダブルカラムが役立ちます。
やる気が出ないときは考え方に注目。「やりたくない」気持ちを左側に、「そんなことないよ」的な考えを右側に書いていきます。
こうしてみると自分を落ち込ませる考えやマイナスの予想がよくわかります。これを「ちょっとだけやってみよう」というプラスの方向に置き換えていきます。
すると、ほんの少し前向きな気持ちになりませんか? 少なくとも落ち込む必要はないとわかります。
仕事・作業を細かく分割してみると、おっくうな気持ちがましになります。
【関連】やろうと思ったことができなくて落ち込んだときの気持ちの切り替え方
「であるべきルール」の見直し
「こうすべきだ」「あのようにすべきではなかった」と、いつも自分を縛りつけるルールはないでしょうか。
自分を苦しめたり問題を引き起こしたりするのは、非現実なルールに従っているからかもしれません。
「すべき思考」を柔軟にするための方法は、「~しなければならない」を次の言葉に言い換えること。
「~できたらいいな」
「~にこしたことはない」
「~なら素晴らしい」
そのための思考過程を紙に書き出してみましょう。
まず、自分を縛りつけるルールを書き出し、それに対して反論していきます。
こうやって書き出してみると、白黒はっきりつけようとする癖や完璧主義な自分に気づけます。これらのカチコチ思考を柔らかくほぐしていけば、心がラクになります。そして、ウィットに富んだ対応ができるようになれば、あなたの魅力は今まで以上に増すことでしょう。
【関連】警告!ネバネバ・ベキベキ思考を止めなければ苦しみからは解放されません
最後に
何だかんだと説明していくと、とてつもなく面倒な作業に思えますが、やることは至ってシンプル。
- 紙の真ん中に一本線を引く
- 左側に好ましくない考えを書く
- 右側に合理的な考えを書く
たったこれだけ。
それでも面倒っちゃー面倒なんですが、嫌な~気持ちを持て余して落ち込んでしまう方が多大なエネルギーを消耗して疲れるので、ちょっと頑張って試してみるといいと思います。どうしてもダメなときは寝ましょう。
合言葉は「適当」「いい加減」です。
<参考書籍>
デビット・D・バーンズ(1990)『いやな気分よ、さようなら ― 自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(野村総一郎ほか訳) 星和書店