「できない自分」に失望したときは「60%できたら合格」と考えて気楽にいこう、という話を前回書きました。
でも、「60%できたら合格」という言葉は、どこかぼんやりしています。
そこで今日は、以下の2点を具体的に考えます。
- 「60%できる」とはどういうことか?
- 60%という数字の根拠は何か?
具体的なイメージをつかめれば、自分をうまくコントロールするための助けになるはずです。
「60%できる」ってどういう状態?
まずはっきりさせたいのは、「何が」60%できたら合格なのか、ということ。
60%という数字で、思いつくものを挙げてみます。
- 100点満点中60点
- 10個中6個
- 1時間のうち36分
- 1000円のものが600円
- 200mlのコップに120mlの水
- 握力30kgの人が18kgの力を出す
- 8等分カットのピザ4.8枚分
- 5kgの荷物のうち3kg
- 果汁60%ジュース
この中で注目したいのは、「握力30kgの人が18kgの力を出す」。主治医が私に伝えたかったのは、結果ではなく、どうやって力を出すか、「60%の力で握れば十分だよ」ということだったのだろうと思います。
目標を決めるときも、自分が目指す合格ラインの60%と考えるのが良いですね。
例えば、100点満点のテスト。これまで平均点を上回ることを目標にしていたならば、その点数の60%を目標にします。つまり、平均点が75点だったとしたら、目指すのは45点。
「45点取れたら合格」
この数字はしっくりきます。ふがいない点数で落ち込んでしまいそうですが、ちょっとは頑張りが必要。何もせずに取れる点数ではありません。
なんで60%? 精神科医の見解いろいろ
感覚的にしっくりきたと言っても、それは私の主観にすぎません。60%という数字に根拠はあるのでしょうか。
精神科医の見解を見てみましょう。
① Dr.林公一「七分目を心がけましょう」
精神科医・林公一氏による精神疾患Q&Aサイト「Dr林のこころと脳の相談室」にこんなアドバイスがあります。
ストレスは、ゆとりのある生活をすることである程度は軽くすることができます。仕事でも家事でも趣味でもどんなことでも、完璧を目指すのはやめ、八分目くらいを心がけるのがいいでしょう。七分目と言ったほうがいいかもしれません。うつ病になる人の八分目は、平均から見れば九分目以上であることが多いので。
(【0015】 うつ病の再発を予防するには何に気をつけたらいいでしょうか。より)
うん、腹八分と思ってもついお腹いっぱい食べちゃいますもんね。
② Dr.蟻塚亮二「100%ではなく、60%の出力で」
精神科医の蟻塚亮二氏は、飛行機に例えて説明しています。
100%ではなく、60%の出力で飛んでいく心の余裕が必要です。どこかで少し、力を抜く練習をしてください。
(『誤解だらけのうつ治療』 p.180)
確かに、飛行機がいきなり全速力で飛んだら怖いですよね。
③「3割仕事のススメ」
すみません、どこかの精神科医が「うつ病の人は3割の意識で~」みたいなことを言っていた記憶があるのですが、どこで見聞きしたのか思い出せません。
代わりに、こちらのサイトの「3割仕事」の提案を。
7割、6割、3割。これらの割合は感覚的なもので、特に根拠があるわけではなさそうです。探せば、力学的になんちゃらみたいな論文もあるのでしょうか? そのあたりは面倒なので割愛します。
イメージで考えてみよう(表・イラスト)
以上のことを踏まえて、どれくらいの力加減が適当か、数字とイメージイラストで考えてみましょう。
割合 | 300ml グラス |
---|---|
80% |
240ml
|
70% |
210ml
|
60% |
180ml
|
50% |
150ml
|
30% |
90ml
|
そのときどきの状況、自分の性格に合わせて、イメージを当てはめてみると良いですね。例えば、今は揺れが激しいから半分以上いれると危険だなとか。そうすることで、「ちょっときついかな」「これくらいなら大丈夫」という感覚がつかみやすくなります。
要するに「完璧禁止・全力禁止」ってこと
焦ってばかりいる私に主治医が言いたかったのは、「あなたの頑張りたい気持ちはわかるけど、60%のところで抑えてやっていきましょうね」ということ。数字はたぶん適当。うつ病になる人は真面目で頑張りすぎちゃう人が多いから、少な目に見積もっておくといいよね、そんな医師の感覚で示した数字なのでしょう。
「『半分できたらOK』だとあなたの場合ちょっと物足りないでしょ?」
「まぁ自分に合った出力割合でやってくれ」
「無理すんなよ」
そんなメッセージ。
100%を目指して暴走しがちな私は、さまざまなバリエーションの「焦らず、ゆっくり」をいただいていたわけです。ありがたや、ありがたや。
(※現在の私の診断名は双極Ⅱ型ですが、どのような状態であれ、焦りがちな人に共通のアドバイスだと思います)
力を抜く練習をしよう
うつ病回復、再発防止のためには、今までと違うやり方を取り入れることが大事。
パワー:出力は60%でOK
ゆとり:40%の余裕を持たせる
疲れたときやつらくなったときは、ゆとりのあるイメージを思い出しましょう。
どうぞ手加減・火加減・お湯加減に気をつけて。
ご自分に合った割合をお選び下さい。
>>次のページ:「器が大きい」は素晴らしい?人と比べて落胆したとき考えるべきこと
「グラスに注がれた水」シリーズ
- 「当たり前」ができなくて落ち込んだとき必要な考え方
- 「60%できたら合格」ってどういうこと?なんで60%なの?
- 「器が大きい」は素晴らしい?人と比べて落胆したとき考えるべきこと
- 壊れたグラス、砕け散ったガラスは捨てるしかないのか?
<参考書籍>
蟻塚亮二 上野玲 (2009)『誤解だらけのうつ治療』 集英社
いつもこんな私で良いんだなぁって思わせていただけます。
3級の手帳持ちを言わないで就職しているので、私は60%って思っててもむこうは容赦なくどんどん要求してくるので本当に疲れます。
今考えると、全ツッパという感じだった自分・・仕事を完璧に、しかも早く時間をかけずという、100%やらなければと思っていました。それは、やっぱり認知が歪んでいたことがわかりますが、暗黙に「あたりまえにやる」「できないなんて、あり得ない」みたいな風潮の組織と人間関係・・そんな環境の中でも、頑張った自分を認めようと思う。うつ病になって、いろんなことに気づきました。物事は、思った通りいかないこと、間違えやミスもあること、人生一度限りだから、一瞬を感じながら生きること。他人に影響されないこと。真面目がだめということではないが、なんとなく緩くやる(ファジーな)という考えを持つ。しかも、自然に・・できたらいいんだよなあと思います。
ナミさんありがとうございます。
100パーセント以外はダメだと思っていました。というか100パーセントじゃないと納得できませんでした。誰からも認められる自分しか認めたくなかったのです。そんなことを言っている割には、誰からも相手にされていない私でした。気難しいやつ、ひねくれものと避けられていました。最後の水の入ったグラスの画像を見て、60パーでも結構いっぱいじゃん、というか飲食店で出てくる水ってだいたいこんなくらいだけど、今までそれを不満に思ったことないなと思い、なんだか肩の力がすとんと抜けました。逆に満杯の水をそろそろと持ってこられてもびっくりしますね 笑 私は今まで、水が溢れそうなグラスを両手に持って歩こうとして、周囲から引かれ、失敗するとなんで!!と怒りくるっていたみたいです。アホですね。なんのことはない、水を減らせば良かったわけですね。ナミさんのブログからは気づかされることがたくさんあります。ナミさんのように、今までの固定概念をちょっとどかして、多面的な視点で物を見られるように訓練したいと思います。
あれもこれもやらなきゃ出来てないと焦ってしまって、それを表に出してはいけないと必死に我慢して、それでもぐるぐる考えこんでしまいしんどかったのですが、60%でいいっていうこと、水の入ったコップのイラストで自分が今どこまでだとしんどいのかがわかり、少し落ち着きました。
本当に辛い時こちらにお世話になっています
ありがとうございました