壊れたグラス、砕け散ったガラスは捨てるしかないのか?

ダメな自分にガッカリしたとき、どうやって気持ちを落ち着かせていますか?

ここ数回にわたり、「グラスに注がれた水」をイメージしながら考えてきました。

六つ子グラス

「でも、そのグラスが割れていたら?」
「水を注ぐことさえできないじゃないか」

そう言いたくなった人もいるのではないでしょうか? 今日はそんなあなたと一緒に考えたいことがあります。

役割を果たせなくなった自分には価値がないと感じている人、「私には何もできない」と嘆いている人に、ぜひ知っていただきたいことです。

壊れたグラスは捨てるしかないのか?

グラスは落とすと割れます。割れたグラスは使えません。

「病気になった自分は割れたグラスと同じ。役立たず。価値がない」

果たして本当にそうでしょうか?

グラスの破片を集めて接着剤でくっつけてみたら……? つぎはぎのグラスは美しくないですね。だからといって、バラバラのまま放っておくわけにもいきません。欠けた部分は危ないですものね。ケガをしてしまいます。

「ほらやっぱり捨てるしかないじゃないか」

処分する以外に方法はないのでしょうか?

破損した部分を修理・リメイク

壊れたグラスを修理してくれる職人さんがいます。

欠けた部分を削って新品同様に。
大きく派損したグラスはキャンドルカップに。
脚の折れたワイングラスをぐい呑みに。
ロックグラスを小物入れや灰皿に。

バラバラに割れてしまったグラスも、金継ぎ・銀継ぎで修理。欠片のない部分は漆で作って仕上げてくれるのだとか。

丁寧に、時間と手間をかけて行われる作業。さまざまな人の思いに支えられて、割れたグラスは生まれ変わります。

ガラスを熔かして作りなおす

ガラスは再利用ができます。ガラス工房では、割れたガラスを色分けし、熔かしてまた使うのだそうです。1)

ガラスに関する興味深い言葉があります。「fiasco」という単語です。Weblio辞書によると、

fiascoとは
(野心的な企てがこっけいな結果で終わるような)大失敗

研究社 新英和中辞典の語源には、

【語源】
イタリア語「瓶」の意; ガラス製品作りに失敗した材料から「瓶」を作ったことから

とあります。さらにその語源はラテン語の「flasco(フラスコのような瓶、酒を飲む器)」なのだそうです。2)

ガラス瓶作りと「失敗」がつながるのは面白いですね。これらの話から受ける印象は、それほど深刻なものではありません。失敗を咎められることはあっても、絶望してはいない、「あちゃー、やっちゃった」的なニュアンス。実際のところはどうなのでしょうか。 

何にせよ、失敗しても、そのガラスを捨てるわけではないということです。

絶対に取り戻せないもの・失敗してもやり直せること

割れたガラスは元に戻りません。粉々に砕け散ったグラスは、器としての役割を果たせません。

しかし、手を加えれば、何らかの価値を手に入れることができます。手間と時間をかけて修理する。熔かして一から作り直す。気の遠くなる作業かもしれませんが、不可能ではありません。

捨ててしまえば、それでおしまい。

だから、見限ってしまう前に、一度考えたい。

とりあえず接着剤でくっつける?
割れた部分をカット、リメイクする?
すべて熔かして作り直す?

悲しみに耐えられないときは、号泣してから考えるという選択もあります。

再生の道はある

療養期間は、グラスを新たに作り直すための時間なのかもしれません。ガラスを熔かして作り直すのは、今までの価値観を疑うこと、生き方を選び直すこと。それは不可能なことではありません。現実的な話です。

私は粉々に砕け散ったグラスを修理しました。いびつで脆い器ですが、味があって気に入っています。もちろん気に入らないところもたくさんあります。むしろ嫌いな部分の方が多い。でも、取り戻せないと絶望していたものが、形を変えて今ここにある。それは確かなことです。

生きものは、グラスとは違います。しかし、熔かされたガラスを見れば、似ているところがあると気づきます。どちらも固定されていないし、姿かたちを変える。

以前とまったく同じ姿には戻れません。それでも、新たな形でスタートを切ることはできます。

あなたのそのグラスは、さぁ、どうでしょうか?
 

ガラスの靴

<参考サイト>

1) 琉球ガラス村

2) fiasco|今日の英単語
fiasco|words and phrases I encountered
フラスク(flask)|Windsor-Heritage for Gentleman

1 COMMENT

rdg

ナミさんは”砕けても”なのか、”砕けたことがあるから”なのかとても強くて魅力的なグラスなんだと思います。
私はとりあえず号泣する所から始めたいと思います。そしてそのあとナミさんのようなグラスを目指したいです。

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