12年ぶりに帰って来た『THE 3名様』を観ました。
THE3名様～リモートだけじゃ無理じゃね？～ Blu-ray | ポニーキャニオン
ファミレスで3人がダラダラしゃべっているだけのお話です。
大したことは何も起こらず、どうしようもない感じがひたすら続く。
でも、そこで生まれるゆるい空気がとてもよいのです。
似た者同士のようでいて、三者三様、タイプの違う者たちです。
異なる人間が集まるからこそ生まれる独特の雰囲気。
話し方、姿勢、間の取り方、人それぞれのリズムとテンポがあります。
それらが掛け合わされ、まるでジャズセッションのように会話が進んでいく。
即興風のかけあいに心が踊るようです。
目的もなく、ただ思いつきを口にする。予想外の反応が返ってくると嬉しい。そのくり返し。
一人じゃ思いつかないような面白いやりとりができます。
乱雑さ、無作為性は愉快さを生み出すのですね。
ファミレスという舞台で気持ちが通じ合う。気持ちを通じ合わせる。
何気ない一コマ、何気ない一瞬が心を満たす。
彼らが共有するのは、そんな心地よさ。
それだけで安心できるし、「生きていてもいいんだ」と思える。
人から何と言われようとも関係ない。そんなことよりトゥンカロン。
そんな世界が私は好きです。好きの根源は多分ここ。
彼らは変わりません。ドリンクバーで長時間ねばるし、テーブルの上を散らかすし、急に騒ぎ出すし、ただの迷惑客じゃんと思うこともある。
だけど、いい歳こいてああやって変わらず駄弁れる友がいるってほんとに貴重なことだよなぁ、としみじみ思うのです。
変わらないとは言ったけれど、作品全体として見てみれば、時間を経ることで生じる変化もあります。
変わらないからこそ、その違いが引き立つ。
失われたものに思いを馳せる。ただ静かに見つめる。
ジーーーンときてしまいました。
そんな瞬間も時にはある。しょうもない人間にだってシリアスな瞬間はあるのです。
この作品をすてきに引き立ててくれる小物の存在も忘れてはいけません。このチョイスが好きだー。昨今の情勢、サービスも多数取り入れられており楽しい。ちょっとしたスパイスになっています。
心をいい感じにゆるませてくれる65分でした。