『ロールレタリング:手紙を書く心理療法の理論と実践』感想

ロールレタリングという心理療法があります。平たく言えば、ロールプレイングの書く版。役割をもって手紙を書き、自分自身や他者との関係を考える心理技法です。

私がロールレタリングを知ったのは、自分を客観視するにはどうすればいいのだろうかと考えていたときだったと思います。相手の目を通して自分の姿を見てみる、そのことによって違う視点が得られるのではないかと。

いくつか関連がありそうな書籍を眺めている中で、気になった本があったので読んでみました。

タイトルの通り、理論の解説と、実際のやり方として8つの事例を紹介しています。

なるほどと思うところがたくさんありました。カウンセラーとクライエントの対話、実際に書かれた手紙は、読んでいて心を揺さぶられます。そして何より、どの事例をとっても「こんなに変化するのか」と驚きます。

心の奥底に抑圧していた思いや感情を吐き出すことで、すっきりとした気分が得られる。このカタルシス効果がロールレタリング最大の効果である、と筆者はいいます。

わかりやすい例えとして、「毎朝うんちを出して、しっかりご飯を食べなさいよ」という話が挙げられています。ウンチ=嫌な気分、ご飯=愛情、ということです。確かに便秘になると身体に不調が現れますよね。納得感があります。

ロールレタリングの効果
・吐き出しによるカタルシス効果
・自己理解
・他者理解
・自己受容と他者受容
・自己表現力の向上
・認知と行動の変化
・性格の変化

自分の心の内にある相反する感情、己の問題行動への気づき。本音を吐き出すことで、現状と問題が見えてくる。

他者に教えられるのではなく、自分で気づくことが重要というのは、本当にそうなのよねと実感をもって納得できます。

そうして自分を理解できると、自然に相手のことが理解できるようになる。

吐き出しによるカタルシス効果 → 自己理解 → 他者理解 → 自己受容 → 他者受容

この流れに逆はありません。

 

まずは自分の気持ちを吐き出し、自身の内面と向き合うこと。この第一ステップの重要性を本書全体通して実感します。

この本をヒントに、何か取り入れられることがあればいいなと思ったのですが、ロールレタリングで自分と向き合うには、信頼できるカウンセラーが必須。一人でやるのは難しいですね。話を聞いてもらって、励ましてもらえることが力になる。カウンセラーに守られている安心感があるから、問題と向き合える。適切なタイミングでの助言も必要です。

刑務所での活用事例についても同じく、気持ちの吐き出しの重要性を筆者は訴えています。いきなり被害者のつらさを考えなさいと言っても効果はない。まずは自分の気持ちを吐き出し受け止めてもらうことから始まるのだと。

このあたり、ベストセラーとなった書籍『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治著)と共通する部分だなぁと思いながら読んでいたら、宮口さんが言及していた『反省させると犯罪者になります』の著者が、今回読んだロールレタリング本の著者、岡本茂樹さんだと気づいてびっくり&納得。

全然別の入口から入ったのに、気づいたら同じ場所にたどり着いたって、何だか面白いですね。そんな驚きもあって、とても印象的な読書体験となりました。

 

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