よい映画を観たので感想を書きます。
中年独身男性ジョニー(ホアキン・フェニックス)は、ラジオジャーナリストとしてニューヨークで暮らしている。あるとき、妹に頼まれ、9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を数日間みることになり……。
なんか””人生””を見せられてるなぁ~と思いました。9歳の甥っ子ジェシー君が「fuckin’ life」と言うシーンがあるんですけど、ほんとにライフなんだよ、ああ、これが生きるってことだと納得できるのです。これってけっこうすごくないですか。マイクミルズすごいよね、それをさらっとやっちゃうんだもん、ハァ~などと今も回想しているのですが。
物語のメインではないけれど、ジョニーの妹ヴィヴのしんどさを思うとほんとうにもうしんどくてやりきれなくて胸がぎゅっとなります。母親の介護、精神病の夫の看病や付き添いやフォロー、そして子育て。兄貴がそこまで助けてくれるわけでもなく、一人で何とか頑張るしかないという……つら。ちょうがんばってるヴィヴ、どうか報われてほしい。
それにしても甥っ子ジェシー、うまいこと描かれてるよなぁ~と感心します。子供のかわいさと賢さと憎たらしさと愛おしさが全部全部つまってる。子供だから視野が狭い部分はある、深みや奥行きや複雑さを想像する力は大人に負けることもあるかもしれない。でも、大人が気にするようなどうでもいい余計な部分にとらわれることがないから、時に大人より大事なことに気づけていたりするんですよね。
子供と大人が向き合う。大人だって子供と変わらない、子供だって大人と変わらない。目の前にいる相手のことを考えて考えて考えて向き合うしかないんですよね。そして気持ちを表現しなくちゃいけない。感情を押し殺すことは、問題を先送りにするだけ。「○○だから我慢しなくちゃ」じゃなくて、うまく表現する方法や昇華する方法を知ることが成長するってことなんでしょうね。前回書いたロールレタリングの話と関連するところだと思います。
それにしても、ジェシーは本当に可愛い。でも、子供の試し行動はしんどい。けど、そうやって自分の気持ちを表現できるのは良いことなんだよなと痛感しました。そして、それを受けとめられる大人にならなくちゃいけない、子供を「いい子」にさせちゃいけないんだなと。これもまたロールレタリングの本を読みながら感じたことと通じます。
本作では、随所にジョニーによるラジオインタビューが挟まれます。子供や若者たちが自分の思いを語るシーンです。これが効いてる。これによって、いろんな人がいるんだと気づかされます。自分の視野の狭さに気づけるのです。
人は、生は、ライフは、一筋縄ではいかないんだよね、ほんとに。愛おしいね。
そんなふうにしみじみとさせられる素敵な映画でございました。