ずっと気になっていた映画を観ました。鑑賞後の余韻が独特で、言葉にするのが難しいのですが、いろいろ印象的なところがあったので頑張って書いてみようと思います。
ネタバレなしのつもりですが、一部内容にふれているので、まっさらな気持ちで観たい方は、作品をご覧になってからどうぞ。
『スーパー!』
Super / ジェームズ・ガン監督・脚本 / 2010年 / アメリカ
気弱で冴えない中年男が正義のヒーロー・クリムゾンボルトに大変身! イカれた相棒ボルティーと大暴れするお話。
これほどまでに何とも言えない余韻を残す映画、今までにあったかなぁ。ブラックコメディの「いやいやそりゃやりすぎだよ~HAHA」ぐらいの笑いで終わるのかと思いきや、なんなのこの味わいは。グロい、キモい、ダサい、オシャレ、ポップ、ピュア、可愛い、楽しい、切ない、情けない、面白い、残虐、純愛、哀愁、狂気、醜悪、などなどなど。さまざまな感情が入り混じってぐちゃぐちゃです。
ゆるいスプラッター映画と紹介すればいいのか、愛と正義を貫く男の物語と紹介すればいいのか、ああもうわからない。
筋書きもツッコミどころが多いんだけれども面白かったです。でも「何度でも観たい!」とは思わない。すんごい痛いから……。なかなか人に「おすすめだよ!」とは言いがたい作品です。
しかしながら、そんな本作を「映画の中で一番好き」と表明する人がいたのです。ナンバーワンと明言できるって相当強い気持ちですよね。これはチェックせねばと作品ページを即確認。
2010年のアメリカ映画『スーパー!』。HARIBOグミのパッケージみたいなポスタービジュアルが面白そうだなーと好印象。ヒーローものは積極的に観ませんが、これは楽しく観られそう。というわけで、観たい映画リスト上位に位置づけられたのでした。
それから何年も経って、ようやく観る機会を得た本作。観終わった直後の感想は先に述べたとおり「なんなんだ、何とも言えないこの気持ちは……」といった具合で、よくわからない余韻が残ります。これに加えて「この映画を一番に挙げるってどういうこと?!」という思いが生じるのです。
いや、わからなくはないんです。面白いところはたくさんあります。
※以下、一部細かい内容にふれています。
例えば、ダサダサコスチュームを必死にミシンがけする主人公の丸まった背中とか、日本が誇るHENTAI文化からの覚醒とか、遊び心満載でよかったと思います。思わず笑っちゃう小ネタが多いし、音楽もイケてる。凶暴なヒーローと狂気のヒロインのヤバさ、それに対する平常時の情けなさとマヌケさの対比がまあ何とも印象的。主人公を駆り立てる動機にいじらしさも感じます。
スプラッター描写はえぐいですが、血が好きな人は大好物だろうし(好きな人からすれば物足りないかも?)、ムカつく奴に制裁を加えるスカッとジャパン的な要素もあって痛快といえば痛快(と言うのは抵抗がありますが)。
既存のヒーロー物語を皮肉っていると捉えたらいろいろ語れるような気もするし、「正義とは何か」みたいな問題提起にもなりそう。定番のヒーロー映画とは違った切り口で、考えるきっかけを与えてくれる作品。そう思うと、ナンバーワンとして挙げるのにも納得……? 残念な感じの主人公に共感するところは大きいのかも。
ぜひともこの映画の魅力について詳しく聞きたい。……あーそうだ、音楽が素晴らしいようなことを言っていた気がします。私も音楽いいなーと思いました。あとはビジュアルが好みかな。ゆるい手書きイラストも可愛い。……あれ? なんかとってもイケてる作品のような気がしてきたぞ? 時間が経って記憶が改変されてる??? いや、普通に面白いと思ったんだけれども、暴力がすごすぎてね……。観てるだけで「痛いッ!」って目つぶっちゃうから。
ともあれ、ずっと気になっていた作品だったので観られて満足なのでありました。
残虐凶暴なやばい主人公と言えば『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を思い出します。この二人には情けなさや哀愁はなく、殺害シーンやら何やらとにかく振り切っていて、凄惨で強烈で凄まじい。こちらも一言では表せない余韻が続きましたけれども、『スーパー!』鑑賞後のこんなによくわからん気持ちにはなりませんでした。違いは何かと言ったら、情けなさや哀愁、おマヌケさ、ダサさ。ここがポイントなのでしょうね。ネガティブな要素こそが人の心を動かすことって多分にありますものね。
人間の残酷さとか野蛮な心性とか、それっぽいことを考えるフリしながら、よくわからない感情を把握しきれないでいます。
多分こういう状態を維持することが大事なんだと思います。
これからも言葉にできない感情をたくさんゲットするぞ~。