前回『サムサッカー』素敵な映画だったよ~という感想を書きまして、今回はその続きです。
今回はサウンドトラックについて。これがまたとても良いんですよ~という話です。
特に印象的だったのがエリオット・スミス。
彼の歌声は、優しくて儚げ。どこか危うさが漂うような雰囲気もあり、人生の不確かさを感じさせるような余韻がいつまでも残ります。
そんな彼の存在は、内向的な主人公ジャスティンと重なりました。
あるべき自分でいられないことに悩んで迷って葛藤して。いつも心許なくて、どうしたらいいかわからない。
悩めるジャスティンと、バックで流れる穏やかで切ないメロディ。
あぁぁ~~~とか思いながら見ておりました。胸がギュッとなると言ったらいいんでしょうか、いとしさと切なさとその他諸々がないまぜになった気持ちです。
というわけで以下、エリオット・スミスの話をします。
エリオット・スミスって誰?
エリオット・スミスは、アメリカのシンガーソングライターで、活動期間は1990年代から2000年代の初頭。
映画『グッド・ウィル・ハンティング』の主題歌「Miss Misery」が1997年のアカデミー歌曲賞にノミネートされ、一躍脚光を浴びました(ちなみにこの年の受賞はセリーヌ・ディオンが歌った『タイタニック』の超有名なあの曲)。
と、あたかも知っているかのように書きましたが、以上は全部Wikipedia調べで、私がエリオット・スミスの存在を知ったのはほんの1年程前。気軽にたくさんの曲を聞ける音楽配信サービスに感謝感謝でございます。
エリオット・スミスを初めて聴いたときの印象はそこまで強くなくて、「へぇ、いいね、優しいね」ぐらいの温度感。その後も特に熱心に聴くということはしませんでした。でも、不思議と名前を忘れることはなく、ずっと気になる存在であり続けていました。
34歳という若さで亡くなったミュージシャン、という事実が心に残ったんだろうと思います。
『サムサッカー』のサントラに残された3曲
当初『サムサッカー』の音楽は、エリオット・スミスが手がける予定だったそう。
しかし、プロジェクトが完成する前にエリオット・スミスが死んでしまった。
それでサウンドトラックに残ったのが3曲(カバー2曲とスミスによる1曲)ということらしいのですが、私としては「主人公ジャスティンにエリオット・スミスってぴったりじゃん」としみじみ味わっていたところでこの事実を知って、なんかもう打ちのめされるというか、「ああ、もう!」と叫んでしまうような。
そんな気持ちも込みで彼の曲を聴くと、ますます切なさや儚さが胸に迫ってくるようで、もう何というか、言葉につまる。
ああ、もう……!
と、思っても仕方がないことを思ってしまいます。
『サムサッカー』のサントラにある一曲「Let’s Get Lost」は、彼の死後発表されたアルバム『From a Basement on the Hill』に収録されています。
「Let’s Get Lost」は直訳すると「迷子になりましょう」? だとしたら、タイトルからして『サムサッカー』にぴったりですよね。みんな迷子な映画だから。
最後に
そんなわけで、最近はエリオット・スミスばかり聴いているのですが、なんでこんなに素敵なミュージシャンを私はスルーしちゃっていたんだろうと首をひねってしまうほど素晴らしい。まぁそのときどきでハマる音楽って違うんだろうなとは思うんですけどね。とにかくすごく良いのです。沁みます。ジワジワと染み込んで気づいたら抜けなくなっていた、というタイプの音楽なんですかね。染料? 草木染めかな?
2020年に25周年記念のアルバムが発売されたとのことで、素晴らしい作品はこうやって愛され続けていくのだなぁとしみじみ。
これで英語がわかったら最高なんだけどな~と思うので、何とか英語学習のモチベーションにつなげたい。つなげよう。つなげます。
さあ、丘の上の地下室から、迷子になりましょう。橋を燃やして。
エリオット・スミスのことばかり書いちゃいましたけど、彼のあとを引き継いだポリフォニック・スプリーの音楽も素敵です。マイク・ミルズ監督が彼らの公演に感銘を受けて依頼したとのこと。
「Let’s Get Lost」収録アルバム。
マイク・ミルズ監督は、「エリオットは常に私の芸術的ヒーローだった」と語っていて、また別の機会には「音楽を通して内面をさらけ出すことのできる勇気のある人」と評しています。
Elliott Smith, Polyphonics Bring Balance To ‘Thumbsucker’ Soundtrack – MTV
マイク・ミルズ監督×川勝正幸さんトークショー : 映画『サムサッカー』公式ブログ