前回、アニマルセラピーの効果についてまとめました。今日はペットロスについて書いていこうと思います。引き続き、『知りたい!やってみたい!アニマルセラピー』を参考にしています。
ペットロス症候群とは
ペットとの別れがきっかけで生じた心身の症状のこと。
ペットロスという言葉には、「ペットを失って悲しむこと」以外にもさまざまな意味が含まれます。
悲嘆反応
深い悲しみによって生じた心身の変化(悲嘆反応)には次のようなものがあります。
感情的反応 | 悲しみ、孤独感、怒り、自責の念、罪悪感、感情鈍麻、不安、抑うつ など |
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認知的反応 | 否認・否定、幻覚(幻視・幻聴)、無力感、非現実感 など |
行動的反応 | 泣く、探索行動、過活動、引きこもり など |
生理的・ 身体的反応 |
胃の痛み、食欲障害、睡眠障害、息切れ、音への過敏 など |
(p.89)
悲嘆反応は自然な変化であり、時間とともに少しずつ消えていくもの。ただ、これらの反応が強い場合や長く続く場合には、心の専門家のサポートが必要です。
悲嘆プロセス
深い悲しみから立ち直るまでのプロセスには、いくつかの理論があります。ペットロスの悲嘆プロセスとして主に紹介されるのが次のもの。
実際には、それぞれの段階を行ったり来たりしながら、少しずつ少しずつ変化していきます。
このプロセスには、心身の障害を受け入れていくプロセスにも共通するところがあります。どの段階も大切で、一気に飛び越えられるものではないこと。前の自分に戻るのではなく、新たな生き方を模索し、再び歩み始めること。
それまでの経過は人それぞれ。苦しい日々を過ごすのは本当につらいことですが、そのときそのときの感情を大事にすることで、きっとまた笑えるようになる。そう信じて生きていけたらと思います。
大切なペットの死と向き合うために
大切なペットとの別れ。
そんなことは考えたくない。
想像しただけで泣いてしまいそう。
これは動物に限らず、人間でも同じこと。別れを恐れる気持ちは拭えないものです。それでも私は「生きているものは死ぬ」という前提を忘れてはいけないと思っています。それを知るからこそ、同じ時を共有する尊さを感じることができます。「ありがとう」という温かな気持ちを思い出すことができます。
喪失や悲嘆を複雑化・重篤化させないための準備として、次の5つが示されています。
1) 先に訪れるペットの死の自覚
2) ペットに依存しすぎない
3) ペット仲間を作る
4) ペットロスの知識
5) 信頼できる獣医師と納得のいく治療(p.97)
仲間や獣医師との関係は、深い悲しみを前にしたときの大きな支えになります。
また、ペットが突然亡くなったとき、自分の対処が間違っていたのではないかという自責や罪悪感に苛まれることもあります。後悔を最小限にとどめるために重要なのは、
- 獣医療者と十分に話し合い、納得のいく治療を進めること。
- 信頼できる動物病院・かかりつけ医を見つけておくこと。
動物との絆が強ければ強いほど悲しみは大きくなりますが、周りの人たちとのつながりを大切にすることで、ペットとの関係性を客観的に知ることができるのではないかと思います。同時に、愛情を再確認することもできるのではないでしょうか。
ペットロス症候群の克服
ペットロスの対処
- 泣くことによる悲しみの解放
- 言葉による悲しみの解放
- 身体の作業
- 心の作業
(p.99)
思い切り泣く、これがとても大事なことです。涙を流すことで、つらい気持ちは浄化されます。すぐに苦しみが解消されなくても、我慢せず吐き出すことで、気持ちを整理することができます。
苦しみから適応へ向かうため作業は「グリーフワーク」と呼ばれます。
グリーフワークには具体的な型があるわけではありませんが、例として次のようなものがあります。
- 思い出をふり返る
- 日記を書く
- メモリアルアルバムを作る
- 亡くなった動物を身近に感じる
- 写真で偲ぶ
- 語り合う
- 手紙を書く
- 儀式を行う
- 親しい人やペット仲間と話をする
今の社会においては、ペットの死を人間の死と同じ悲しみとして悲しむことができない現状があります。そのことがペットロスからの立ち直りを遅らせる要因ともなっているようです。
大切なものを失った悲しみは、人も動物も違いはありません。しかしながら、動物の社会的位置づけが認知されていない。ペットを失う悲しみに涙することを受け入れてもらえないどころか、「いつまで泣いてるの」と非難されてしまうこともある。
そんなときペット仲間の存在が一つの支えになるかもしれません。最近は、ネット上でペットを失った人の体験談を読むことができます。ブログ・写真・動画を公開している人も少なくありません。SNSや掲示板でやりとりすることもできます。
ペットの死を人の死と同じように弔うこと。死別の悲しみは自然な反応であると知ること。大切なのは、自分の気持ちを尊重することです。
最後に:ペットを飼っていない人から見たペットロス
私は犬や猫などのペットを飼った経験がありませんが、動物は大好きです。
とは言ってもやはり動物と家族同然に暮らしている人と同じ感覚ではないんだろうなと思います。それでもペットロスについて知ることで、動物と生活を共にする人の気持ちに少しは寄り添える自分になれたような気がします。
今まではペットロスについて、人間の死と同様に捉えて考えればいいのだろうと思っていたのですが、やはり人間と同じ捉え方だけではカバーできない悲しみがあります。それは例えば、「動物は家族同然」という意識を理解してもらえないことや、社会的に認められない権利がたくさんあること。
もちろん、動物との向き合い方は人それぞれですし、アレルギーがあって近づけないというケースもあります。「動物を人間と同じに扱うなんて」という意識を持っている人もいるでしょう。
おそらく私も無意識にそういう考え方をしている部分があるのだと思います。頭で理解するのと、実感として理解するのでは大きな違いがあります。もしかしたら自分の何気ない言葉が、ペットを大切にしている人を傷つけてしまうかもしれないという恐れも持っています。
だからこそ、それぞれの考え方を皆が共有して、それぞれの立場を尊重し合えたらいいなと思います。大切なものを失った悲しみを当たり前に悲しめる社会になるように。
現実的に考えるとなかなか難しいと思う場面もあるのですが、できることから少しずつ。まずは知ることから始めたいですね。
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