14歳女子「なんてブスな私」―『辛口サイショーの人生案内』より

色々なサボテン

「ブス」という言葉の破壊力は凄まじい。

この言葉を聞くと、私は息苦しくなります。

今日は、そんなコンプレックスのお話です。

人様の人生相談に乗っかって、自分の卑屈な感情を吐露します。

非常に個人的なぼやきです。

容姿の悩みはなかなか深刻です

ある日、最相葉月さんの本を見つけました。最相さんが回答者を務める人生相談の連載をまとめたものです。

「おっ」と思って、目次ページを開いたとき、あるお悩みが目に飛び込んできました。

14歳女子「なんてブスな私」

46ある相談の中から「ブス」を瞬時に選び取るって、どんだけ自分気にしてんだよ~と苦笑しつつ、ページをめくります。

 14歳の女子。私は醜い。そんな感情ばかりが頭の中をぐるぐる回っている。
 外へ出れば同年代の子がかわいい服を着て楽しそうにしている。私は劣等感を感じ家に戻る。外出時はなるべくブサイクが隠れるようにしている。(中略)
 私みたいなブスがかわいい服を着ても……と思いオシャレはできない。自分を長時間見ることに耐えられず化粧もできない。
 いくら性格を良くしようと、勉強を頑張ろうと、この顔が変わることはない。そう思うと、何をするにもやる気がなくなり、全てがおっくうになる。

このお悩み、めちゃくちゃ共感できます。

そしてこの言葉、

家族や友人は「誰もそんなに見てないから大丈夫だよ」と言う。いや、あんたらブスを見て笑ってんじゃん、と思う。

うわ~わかる~わかりすぎる~!

そうなのよ、人の容姿を見て笑ってるその口でよく言うよな~って。

もうさ、人の顔を一通り眺めて「ハン」と鼻で笑う奴の方が誠実なんじゃないかってね、いやそれはないけどね、でも、一貫性はあるよな~って。すごい個人的な恨み言ですけどね~。

人はね、少なくとも私は、見下されるのがすごく嫌だ。対等でありたいのです。

でも、「私の方が優れている」と見下してくる人間はいます(被害妄想も含まれていると思うが、絶対にそれだけではない)。

だから、「侮ルナヨ~」と思いつつも、「侮られても仕方ない、私はそれだけの人間なのだから」と悲しみに打ちひしがれるのです。

「なんでこんなに私は醜いんだ、死にたい、と布団にもぐって泣いて」しまう相談者の気持ちは痛いほどわかる。

そうでも思わなきゃ耐えられないんですよ。いや、耐えられないから泣いているんですけど、あまりにも痛みが強すぎて、その痛みを何とかしようと、さらにグサグサ自分を突き刺しながら泣き暮れる感じ。

ブスって言われるのもつらいし、自分が残念な容姿であることを自覚しなければいけないのも、けっこうつらい。

相談者の心理がこれと同じかはわからないですけど。

サイショー先生の心強いエール

で、最相葉月先生の回答が素晴らしいのです。

中盤のアツいお言葉を引用しましょう。

 だいたいあなたの手紙は相談文ではない。どうせ答えられないでしょ、とこちらを拒絶している。この出口なしの洞窟から抜け出すには強い意志が必要です。簡単ではない。
 でもあなたはできる。他人と比べてしまうのは、魅力的な女性になりたいという願望が人一倍強い証拠だから。要するに負けず嫌いなのです。(中略)死にたくなるほど勝ちたいから負けが大きな傷になる。その負のエネルギーを行動に変えたら凄まじい力を発揮するはず。

なんと心強いエールでしょうか。

いや、ほんとそうなのよ、自称ブスの嘆きって「どうせ答えられないでしょ」って態度がある。

全国の自称ブスの皆さんがどうかはわかりませんが、私はそうです。こじらせてるから、何を言っても通じないのね。

だからこそ、強い意志が必要だと。

まったくもってその通りです。

「でもあなたはできる」って。

すごい心強い言葉ですよね。めちゃ勇気づけられます。頑張ろうって思えます。

でも、別に勝ちたいわけじゃないんですよね。

ただ、見下されたくないだけ。バカにされたくないだけ。

ってさっきから自分の話になっちゃってますけど。

何にしても、一歩踏み出すしかないって話ですよね。

誰かと比べて落ち込むよりも、自分にできることをコツコツやっていくしかない。

っていつも自分で言ってることだ。

ほんとそれしかないんですよ。

「しない」と「できない」は大違いなのよ

ただ、事はそんなに単純じゃないのです。

相談者の

 私みたいなブスがかわいい服を着ても……と思いオシャレはできない。自分を長時間見ることに耐えられず化粧もできない。

この言葉に対して、サイショー先生はこう答えています。

 かわいい服は着ない。化粧もしない。性格を良くしようとも思わないし、勉強を頑張ろうとも思わない。だって私はブスだから。「私はブス」という呪文はあなたの願望や行動にブレーキをかける悪魔のようです。

そうなんです、そうなんですけどね、いやその通りなんですよ?

ただ、「しない」と「できない」は大違いなんです。

あえて「しない」を選んでいるのではないのです。

本当は「したい」けど「する」を選ぶことが困難なのです。

「する」を選ぶ抵抗感が強すぎるから、おのずと「しない」になってしまうのです。

「しない」と「できない」は同じではないのです。

それは言い訳だと言われたら、それまでなのですが……。

ブスの呪いが解けるとき

ブスの呪いは簡単には解けません。

相談者が言っているように、みんながブスを笑っている限り難しい。

ちょっとしたきっかけで、傷が疼きます。

これはもう白馬の王子様でも現れなきゃ無理でしょ、と思います。

そして、多くは自分にとっての王子様が現れるので、めでたしめでたしになります。だから、この相談者の女の子もきっとそうなると思うよって他人事だから思います。

でも自分は違うと思うんですよ。

そう、自分だけは特別なんですよね~。「私だけは変わらないに違いない」みたいにね。はぁ~も~。そういう態度こそが、理想的な現実を遠ざけてるって話ですよね~。

外見で優劣をつけようとする人への対応策

サイショー先生は、「そこそこで割り切るのも前進」と書いていて、まさにそうだと思います。

私も10代20代を過ぎて、そこそこで割り切ることができてるんじゃないの、前進できてるんじゃないの、とは感じています。

だってもう仕方ないからね、受け入れるしかない。

ふとしたときに、自分が映り込んだ鏡やガラスを見て「うぎゃ~!!!」となりますけど、まあ仕方ない。

それに、自分はブスだから云々っていうのは、外見で人を差別することにもつながっていますからね。

差別はよくないですから、ちゃんと内面に目を向けようと思ってね。過去のことは過去のこと。たとえうまくできなくても、理想を目指していこう、内面を見てくれる人を探していこうって。

それでも、外見で優劣をつけようとする人がいるのが現実ですから、そういう人に対しては、頑張ってこう思うのです。

私のおかげで、皆さんが美しく見えるのだから、感謝しなさいねって。

ホント全員美人だったら美人は存在できないんだからな! 鼻で笑ってないで心から感謝しろよな!

……すぐに取り乱してしまい、申し訳ありません。

複雑なメンタリティも愛せたら

劣等感とか卑屈な感情はまったく役に立たないので、何とかした方がいいですね。

具体的にはどうしたらいいと思いますか?

知っている人がいたら、ぜひ教えてください。

まあ「どうせ答えられないでしょ、とこちらを拒絶している」人にアドバイスすることはかなり困難な仕事ですけどね(と言うことによってアドバイスを寄こすなと牽制している)。

みたいな感じで、劣等感や卑屈な感情を持っているとかなり面倒臭いメンタリティになってしまうので大変です。こういったコンプレックスを解消するのは難しい……。

私自身もそうだし、似たような感覚を持っている人の言動を見ていても、そうなんだろうなと思います。

解決策は、承認か諦めのどちらかですね。

 

素直な人間になりたいものです。

 

<本日の一冊>
最相葉月 (2015)『辛口サイショーの人生案内 (コーヒーと一冊)』ミシマ社

ノンフィクションライターの最相葉月さんが回答者を続ける、読売新聞の人気連載「人生案内」。その中から46本を選んで収録した本です。

最初パラパラ~と読んだ時は、別に辛口じゃないじゃん優しいじゃんと思いましたが、通して読んでみたら、確かに辛口なところもありました。核心とズバリと突かれて「うぐぐ…」と唸ってしまう感じ。

でも、どの回答にも愛がある。人間と本気で向き合っている人じゃないと紡げない言葉だな~と思いました。

人類史上最高のエンタテインメントが人生相談だとサイショー先生がおっしゃる通り、共感したり、心配したり、呆れたり、いろんな気持ちを楽しめる一冊。

おしゃれなカフェと相性の良さそうな装丁もまた魅力です。

1 COMMENT

あたま

お久しぶりです。
的を射ているかちょっとわかりませんが、ネットの記事で気になったものがあります。

アメリカで85歳以上のかたに、人生で後悔は、ありませんか、  という問いに7割の人が同じ答えだったそうです。
それは、 挑戦しなかったこと。
なんか、心にしみます。

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