退職は、仕事ができなくなったときの最終手段。会社員であるメリットは大きいからです。しかしながら、
- 休職することができない
- 仕事を続けることが難しい
- 労働条件が劣悪
など、状況によっては会社を辞めざるを得ない場合や、退職をした方が安心して休養できる場合もあります。仕事をについてはメリット・デメリットをよく考えて、ご家族や主治医とも相談しながら決めましょう。焦らないことも大切です。
【関連】うつ病で仕事辞める?続ける? 答えを導く退職診断フローチャート
その上で、退職することを決めた人向けに、最低限必要な手続きをまとめました。
もくじ
退職までのスケジュール
一般的な流れをざっとまとめると、
退職の 2か月前 |
・直属の上司に相談する。 ・退職日の日程を決め、退職願を提出する。 |
2か月前 ~2週間前 |
・仕事の引き継ぎをする。 |
1週間前 | ・取引先、お世話になった人にあいさつ状を送る。 ・荷物、パソコンの中身を整理する。 ・会社に返却するもの、会社から受け取るものを確認する。 |
退職当日 | ・上司や同僚へのあいさつ。 |
ただし、うつ病で仕事ができないような状態ではこれらの手順を踏んで手続きをするのは難しいかもしれません。
会社に行けない場合、
1.上司に退職したい旨相談する。
2.手続きの書類を郵送する。
という流れになるかと思います。
まずは、直属の上司に現状を説明し、どのように手続きを進めていくか相談してみましょう。
退職する意向を伝える前に、就業規則の退職に関する事項も確認しておくと、スムーズに手続きを進められます。
【チェックポイント】
- 退職を申し出る時期
- 自己退職手続き
- 退職金制度
- 賞与(ボーナス) など
このとき一緒に、傷病手当金・雇用保険(失業給付)の支給要件もチェックしておきましょう。
退職が決まったらやること
最低限やることは3つ。
① 職場の荷物を持ち帰る
職場の人と顔を合わせるのが気まずいときは、休日に取りに行くのも一つです。
② 支給されたものを会社に返却する
【会社に返却するもの】
- 健康保険証
- 社員証、社章、IDカード
- 制服
- 通勤定期券 など
不調で会社に行けない場合は郵送しましょう。
③必要書類を受け取る
【会社から受け取るもの】
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 源泉徴収票
- 厚生年金基金加入員証(厚生年金に加入していた人)
離職票と源泉徴収票は退職当日にはもらえません。後日郵送で受け取るのが一般的です。
手続きや書類の確認が難しいときは、ご家族に手伝ってもらいながら進めていきましょう。
退職後にやること
医療保険の手続き
退職すると、会社の健康保険を使えなくなります。
① 家族の健康保険の扶養者になる。
② 会社の健康保険を継続する。
③ 国民健康保険に加入する。
いずれかの手続きが必要です。
ここでは多くの人が利用する国民健康保険の加入手続きについてまとめます。
国民健康保険の手続き
【窓口】
お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当課
【申請期間】
退職後14日以内
【必要なもの】
- 退職したことを証明できる書類
- 社会保険資格喪失証明書
- 離職票(ハローワークに提出する前に)
- 退職証明書
- 身分証明書
- 印鑑 など
【保険料】
- 加入する世帯の人数や、前年の所得などによって決まる。
- 市区町村によって保険料は異なる。
経済的な理由などにより保険料の支払いが難しい場合は、保険料を軽減してもらえる制度もあるので、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
<参考>
退職後の健康保険について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
国民年金への変更手続き
年金の種類は以下の3つ。
① 国民年金(自営業者、フリーター、学生、無職)
② 厚生年金(民間企業のサラリーマン・OL)
③ 共済年金(公務員、学校教職員)
退職された方は国民年金への加入手続きが必要です。
【窓口】
お住まいの市区町村役場の国民年金担当課
【申請期間】
退職後14日以内
【必要なもの】
- 国民年金被保険者資格取得届
- 年金手帳
- 身分証明書
- 印鑑
- 退職したことを証明できる書類 など
【保険料】
月額15,040円(平成25年度)
経済的な理由などにより保険料の支払いが難しい場合は、保険料を軽減してもらえる制度もあるので、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
<参考>
国民年金の手続きはお済みですか?(PDFファイル) | 日本年金機構
雇用保険(失業給付)
失業給付は、働く意思や能力がありながら仕事に就けない人に給付されるものです。
退職後、必要書類がそろったらすぐにハローワークで手続きをしましょう。
お住まいの管轄のハローワークはこちらから確認できます。
全国ハローワークの所在案内(都道府県を選択 → 右上の「管轄一覧表」をクリック)
雇用保険手続きの流れ
① 求職の申し込み
【必要なもの】
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 写真(縦3cm×横2.5cm)
- 身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 振込先に指定した口座の預金通帳
- 印鑑
② 雇用保険受給者説明会に出席
③ 失業の認定(4週間に1回)
④ 基本手当の受け取り
<参考>
雇用保険手続きのご案内 | ハローワークインターネットサービス
病気ですぐに働けない場合は、受給期間を最長で3年間延長することができます。郵送や代理人による申請も認められています。
失業給付と傷病手当金について
失業給付と傷病手当金の両方をもらうことはできません。
・就職できる能力がある → 失業給付
・就職できる能力がない → 傷病手当金
傷病手当金を受け取っている場合は、受給期間の延長はできません。
住民税の納め方
退職すると住民税の納め方も変わります。住民税は後払いで、前年の所得によって金額が決まります。高額の請求がきてびっくりしないように準備しておきましょう。
退職月 | 納税方法 |
---|---|
1~4月 | 5月までに払う予定の住民税の残額が、給料または退職金から一度に引かれる。 ◆1月退職 → 1~5月の5か月分 ◆2月退職 → 2~5月の5か月分 ◆3月退職 → 3~5月の5か月分 ◆4月退職 → 4~5月の5か月分 |
5月 | 5月分だけが引かれる。 |
6~12月 | 翌年5月までに払う予定の残額は、市区町村に直接納付する。 申し出れば給料または退職金から一度に引かれる。 |
(『失業生活完全対応入門編』より)
支払いが遅いと遅延料がかかります。経済的な理由などにより支払いが難しい場合は、お住まいの市区町村の窓口で、現在の収入などの状況を話して相談してみましょう。(原則的に住民税を免除してもらうことはできません)
払いすぎた所得税を取り戻す
年の途中で退職した場合、所得税が払いすぎになっている場合があります。確定申告をして払いすぎた所得税を還付してもらいましょう。
<参考>
初めて確定申告される方へ | 国税庁
うつ病退職Q&A
Q1. 退職のあいさつに行けそうにありません。
あいさつに行けるのであれば、それにこしたことはありません。
ただ、不調により会社に行くのが難しいような場合は、体調を第一に考えて、自分が納得できる選択をしましょう。
職場のスタッフやお世話になった方などとの関係が気になる場合は、手紙やメールであいさつしておくといいかもしれません。体調が落ち着いてから改めてあいさつに行くというのも一つです。
Q2. 退職前の有休消化はできますか?
有給休暇は働く人に認められた権利です。
- 6か月継続して働いた
- その期間の8割以上出勤した
この条件を満たせば、10日有給休暇をもらえます(日数は勤務状況・勤続年数に応じて変わります)。
ただし、法律的には認められていても、引き継ぎなしに退職まで有休を使って休むのは難しいと思われます。権利ばかりを主張するのではなく、会社や職場の人との関係も考えましょう。
Q3. 退職させてもらえません。
まずは就業規則を確認し、ルールに従って改めて会社に退職する意向を伝えてください。民法では、14日前に退職を申し出れば辞めることができると決められています。
もし「損害賠償を請求する」「離職票を出さない」などと圧力をかけられた場合は、自治体の労働相談窓口や労働基準監督署などに相談しましょう。
<参考>
辞めさせてくれない | 労働問題相談室(労働相談Q&A) | TOKYOはたらくネット
Q4. 退職後の生活費はどうしたらいいでしょうか?
ここでご紹介した傷病手当金や失業手当の他に、生活費や医療費をフォローするさまざまな制度があります。
- 自立支援医療制度(医療費負担が3割→1割に)
- 障害者年金
- 生活福祉資金貸付制度 など
体調が落ち着くまでは、家族や親戚などにサポートをお願いしましょう。
それでも生活するのが苦しい場合(貯金がない、頼れる人がいない、働けないなど)、生活保護を受けるという選択もあります。
【関連】「お金がない!」うつ病・無職・貧乏暮らしをサポートする制度
困ったときの相談窓口
会社との話し合いがうまくいかないとき、問題の対処法に困ったときは、専門機関に相談してみましょう。
・自治体の労働相談窓口
総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
・労働基準監督署
全国労働基準監督署の所在案内(厚生労働省)
【利用時間】平日 8:30~17:15
・会社の労働組合
全国の連合労働相談窓口(日本労働組合総連合会)
・法テラス
法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ(日本司法支援センター)
・社会保険労務士
職場のトラブル相談ダイヤル(全国社会保険労務士会連合会)
・産業カウンセラー
働く人の悩みホットライン(日本産業カウンセラー協会)
<参考サイト>
公的労働相談機関利用時のポイント
<参考書籍>