池波正太郎の映画論『映画を見ると得をする もっと映画が面白くなる』感想

映画って本当に素晴らしいものですね~と水野晴郎さんみたいなことを毎度言ってしまうのですが、本当に映画は素晴らしい。観るのめちゃくちゃ楽しい。我が人生における数少ない楽しみと言っていいでしょう。映画を観るために何とか頑張って生きてる。ほんとに。欲を言えばシネマ通いできたら最高なんですけどね。こんなご時世ですっかり映画館からは足が遠のいてしまいました。

というわけで「映画」の文字を見かけると思わず手に取るようになりまして、先日読み終えたのが池波正太郎著『映画を見ると得をする もっと映画が面白くなる』です。

池波正太郎。小説家で『鬼平犯科帳』や『剣客商売』を書いた人。小説を読んだことはありませんが、めちゃ知ってる感があります。テレビドラマや漫画をチラ見したことがあるから? うん、多分そう。時代小説の大御所作家という認識でいいのでしょうか。そんな池波正太郎さんの映画評。

面白かったです。映画にも文法があるんですね。構図とか切り取り方とか、カメラの向け方、キャスティング、シナリオ、音楽など、着眼ポイントたくさん。見方の幅が広がります。映画・演劇・小説の違いも「なるほどな、ふむふむふむ……」と頷きながら読みました。

昔の映画は知らない作品が多いので、そのあたりも参考になりました。やたら『エイリアン』推しなのがちょっと面白い。『駅馬車』も頻出。要チェックです。やっぱり自分と違う年代の人の話は興味深いですね。

 

さて、本書のタイトルには「映画を見ると得をする」とあります。最初これを見たとき「別に得したいから見てるわけじゃないよ」と思いましたが、中身を読んだら納得しました。

映画は物語だけでなく、映像や音楽や衣装メイクなど、ありとあらゆるものが入っている。自分とは違う人生を「隣の人間がやっているのを見るように、目と耳でもって何もかも全部見聞きすることができる」。しかも2時間かそこらで。全部含まれているからこそ、好奇心をかきたてる要素が非常に多い。そんな全部入りの映画は超お得! 好奇心あふれる人ほど得られるものが多いのだ! と。

確かに、映画をよく観るようになってから「あれも知りたい、これも知りたい」という気持ちは強くなっています。映画きっかけで何か調べることも増えました。確実に興味の幅は広がっています。

 
さらにこんな主張もありました。

芝居・映画を観続けることで、人間のことがわかってくる。物事に対する理解力も育ち、批判精神も強くなるという話から。

 だからぼくは、政治家に、
「総理大臣官邸で一週間に一回、映画をやりなさい」
 といいたいのだ。つまらぬ会議などをやっているよりはね。与党・野党がそのとき一緒に観る。週一回、わずか二時間ぐらいだろう。その気があれば観られないはずはない。
(第三章 なぜ映画を観るのかといえば より)

これには大賛成です。ほんと政治家のみなさん鑑賞会やった方がいいと思います。犬を撫でたり紅茶を飲んだりする動画を見たとき、これを投稿しちゃう感性まじでやばいなと思いましたので……。ほんと、いろんな意味で衝撃を受けましたですよ……。

 
それはさておき、この他に細かい部分で共感したのは、「隠しているから色気がある。抑制されているほど色気は強く出る」というところ。ほんとこれ。モロ出しだと味わいが違っちゃうんですよね。目で語るってのも大事。

あと、音響効果の例えで「おならの音のようなサキソホンの音」と書かれていたのは笑いました。すごいわかる!と思って。ヌーベルバーグとかニューシネマ風だったらどうやるかという話の流れだったですかね。私、古い映画って、オープニングクレジットで「ね、眠い……!」ってなるんですよね、あの独特の音楽というか音質というか、ちゃーん!みたいなやつ。で、「おならの音のようなサキソホンの音」がムーディな感じで鳴る。ふふ。

 

そんなこんなで、この本を読んだら、もっとたくさんの映画を観たくなりました。

同じ映画をくり返し観ることで得られる面白さもあると言うし、注目ポイントも教えてもらったので、これからはタイトル通り「もっと映画が面白くなる」ことでしょう。

あぁ、時間が足りない……。

 

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