「煮詰まっていますね……」
ある日の診察で主治医にかけられた言葉。
そう、まさに私は行き詰っていました。
抗うつ薬を飲んでも効果を感じられない。
休んでも休んでも改善が見られない。
少しずつリハビリを始めようとするものの、何もできない。
もうダメだ。もはやなす術なし。
……と。
「煮詰まる」は悪いことじゃないんですって
「煮詰まる」と聞いてパッと思い浮かぶのは、肉じゃが。
煮詰まる=コトコト鍋で煮ていて、水分がなくなった状態。
「まーくんの好きな肉じゃが作ったんだけどぉ、煮詰まって辛くなっちゃったぁ~ん」とペロッと舌を出すブリっ子奥さんに「大丈夫、オレ煮詰まってる方が好きだから」とフォローする旦那。
そんなドラマが私の脳内で再生されます。奥様的には「煮詰まる=NG」のニュアンスですが、肉じゃがって煮詰めるものですよね。
水分シャビシャビの肉じゃがは嫌だ。
そう思うわけです。もちろん、塩っ辛いのも嫌なんですけど。
でですね、手元の辞書を引いてみました。
【煮詰まる】
煮えて水分がなくなる。〔会議などで、議論が出尽くして、論点が限定され問題が解決に近づく意にも用いられる。〕
「問題が解決に近づく」?!
「こんなまずい肉じゃが食えるかよ!」というニュアンスはまったくありません。
味が濃くなっちゃうのは、煮詰めたからではなく、調味料の配分を間違えただけってこと? あ、でも、汁全部吸っちゃったらその分味濃くなるから、やっぱり煮詰め過ぎに問題アリ? 私料理苦手なんでよくわかんないんですけど。
何にしても、煮詰めすぎは良くないけど、「煮詰まる=希望に近づく」と捉えていいんですよね?
ってことは、冒頭の主治医の言葉も本当は「もう暗いトンネルから抜け出せるよ」というメッセージだったってことですよね?
ね!?
うつ病治療も基本は同じではなかろうか
さらに、肉じゃがのレシピをいろいろ眺めてましたら、こんな言葉を発見。
煮ふくめる。
何この優しい響き。意味は……
【煮含める】
煮物の中まで味がしみこむように、時間をかけて、よく煮る。
あらまぁ、語釈まで優しい。あぁ、私も美味しい煮汁に包み込まれたい……。
「日本料理の基本は、煮ふくめる!」
これは、つまり、
「うつ病治療の基本は、煮ふくめる!」
どうでしょう? そう思うのは私だけでしょうか?
劇的な治療法ではなく、じっくり時間をかけて治していくという意味で似ているような気がします。こじつけかもしれませんけど。
ゆっくりじっくり煮詰めよう
そう言えば、以前「見つめるナベは煮えない」という言葉を学びました。
どんなに頑張っても時間をかけないと解決しないこともある。
「パン生地は一晩寝かせましょう」
「プリンを冷蔵庫で冷やして固めましょう」
こうやって時には放っておくことも必要だよ、と。
煮詰まったときは、ちょっと問題は横に置いて気分転換するのが得策なのかもしれませんね。
(じっくりコトコト煮込んだスープ全然関係ないニャ~)