最近よく「新型うつ」という言葉を耳にしますよね。その症状を聞いてみると、典型的なうつ病の症状と違いがあるようで……。
今日は「うつ」関連の精神疾患について簡単にまとめました。あなたの「うつ」にどんな特徴があるのか知るための参考にしていただければ幸いです。
うつ病の種類
今回ご紹介する7つの「うつ」。それぞれの位置関係を示すと次のようになります。(『うつ病診療最前線 ― 再発させない治療法』より)
実際には、このような境界線を引くことは難しく、診断が難しいケースも多々あるようです。
【関連】「うつ病は甘えではない」が前提の『「うつ」は病気か甘えか。』
7つの「うつ」タイプ
メランコリー親和型うつ病
気質 | メランコリー性格、粘着気質 |
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病前性格 | 社会的役割、ルール・決まりを大切にする。 配慮があり、几帳面。 頑固で義理堅く、忍耐強い。仕事熱心。 |
特徴 | 焦り、考えがまとまらない、物覚えが悪くなる。 疲れやすい、罪悪感、申し訳ないと思う。 自殺企図(確実に死に至る方法を考える)。 |
経過 | 初めは「うつ病」の診断を受け入れられない。 治療を重ねるうちに、新しい考え方を身につけていく。 |
薬効 | ほとんどは治る。 抗うつ薬(SSRI、NaSSA)の効果がアメリカで証明されている。 |
ディスチミア親和型うつ病
気質 | スチューデント・アパシー、退却神経症 |
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病前性格 | 自分大好き、自分が一番大切。 ルールや決まりがストレスになる。 自分は何でもできると感じる。 もともと仕事熱心ではない。 |
特徴 | 不全感(うまくいかない)。 倦怠(どうでもいい、やる気にならない)。 回避、他人を非難する。 |
経過 | 初めから「うつ病」診断に協力的。 常にうつ症状を気にし、そこからの離脱が難しく慢性化しやすい。 「うつの私」にこだわり、新しい考え方が形成されにくい。 置かれた環境の変化で急速に改善することがある。 |
薬効 | 抗うつ薬が効きにくい。 多くは部分的効果にとどまる。 |
非定型うつ病
気質 | 不安気質 |
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病前性格 | 拒絶や批判を受けると、過剰に意気消沈したり、怒ったりする。 家事や仕事上の重大な責任を放棄する。 否定されることを恐れ、親密な対人関係を回避する。 現実生活での好ましいできごとに反応して気分が明るくなる。 |
特徴 | 不安障害(パニック障害など)との併発が多い。 衝動的な過食傾向。 過眠(1週間に3日以上、1日10時間以上)。 |
経過 | 社会的成熟度を増し、安定的なメランコリー親和型になることも。 慢性化しやすい。 |
薬効 | SSRI単独:△ 気分安定薬の併用:〇 |
双極性障害(躁うつ病)
気質 | 循環気質、マニー型性格 |
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病前性格 | 社交的で親切、ユーモアがある。 温厚で人当たりが良く、誠実で真面目。 秩序や周りからの圧力を嫌う。 |
特徴 | <躁病エピソード> 何でもできそうな気がする。考えがどんどん湧いてくる。 睡眠が短くなる。活動的でよくしゃべる。 注意が散漫になり、正確さを求められる作業に支障が生じる。 ※パーソナリティ障害との診断が難しい。 |
経過 | ほとんどの場合回復するが、深いうつ状態に苦しむことも。 再発することが多い。 |
薬効 | 通常の抗うつ薬があまり効かない。 パルプロ酸:躁病予防〇、うつ病予防× |
※パーソナリティ障害……うつ状態、不安定な対人関係・空虚感・不適切な怒り・見捨てられることへの不安などを特徴とする病気。
【関連】抗うつ薬を飲んでいるのにうつ病が治らない理由 ― うつ病患者の4割は躁うつ病?!
軽症うつ病
気質 | 執着性格、軽い強迫性格 |
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病前性格 | まじめで責任感が強い頑張り屋。 配慮があり、几帳面。 |
特徴 | うつ症状が全部揃うわけではない。 (「軽症」は治りやすいという意味ではない) |
経過 | 社会復帰が難しい場合もある。 |
薬効 | 薬がなかなか効きづらい。 |
適応障害
病前性格 | 真面目で責任感があり、忍耐強い。 |
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特徴 | うつ状態があらわれる。 ストレス状態から解放されるとまた自然に元に戻る。 |
経過 | 軽度のうつ病と区別がつきにくい。 放置しているとうつ病になり、悪化する場合がある。 |
薬効 | 薬だけでは効果が出にくい。 |
気分変調症
特徴 | 2年以上、軽度のうつ状態が持続する。 |
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経過 | ストレスが解消されれば症状は治まる。 (6ヶ月以上症状は持続しない) |
薬効 | 薬がまったく効かない場合もある。 |
その他
難治性うつ病
経過 | 【メランコリー親和型以外のうつ病】難治性、遷延化のリスクが高い。 【双極性障害】深いうつ状態に苦しむケースがよくある。 【非定型うつ病】だるさ、気分の浮き沈み、自己不全感、自己否定感が再発・難治化の原因となる。 |
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薬効 | うつ状態の中にパーソナリティ障害、境界型パーソナリティ障害が隠れている場合、薬は効きにくい。 |
※境界型パーソナリティ障害……不安定な自己 – 他者のイメージ、感情・思考の制御不全、衝動的な自己破壊行為などを特徴とする障害。ボーダーラインとも呼ばれる。
新型うつ(病)
症状 | 非定型うつ病か双極Ⅱ型である可能性が高い。 メランコリー親和型うつ病のイメージに当てはまらない。 (便宜上「新型うつ」と呼ばれているが、正式な医学用語、病名ではない) |
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最後に
それぞれに特徴があるとは言え、病気になったときのつらさは共通です。そのつらさを少しでも軽くするためにも、自分の症状を把握することで回復を目指していけたらと思います。
今回、参考にした本の中でも指摘されていますが、これらの診断はあくまでも症状をわかりやすく理解するためのもの。医師と患者が一緒に前進していくための道標です。独断は危険ですから、プロに相談しながら治療を進めましょう。
<参考文献>
唐渡雅行 (2010)『うつ病診療最前線 ― 再発させない治療法』時事通信出版局