髪をとかしながら「自分を大切にする」とはどういうことか考えた

ブラシで丁寧に髪をとかしている女の子

「自分を大切にしましょう」とはよく言われる言葉です。

私も自分で自分によく言います。

でも、「自分を大切にする」とはどういうことなのでしょうか?

説明しろと言われると、うまく言葉にできません。

でも、私がこのことを理解する瞬間があります。

それは、丁寧に髪をとかしているときです。

今日は、自分の髪をブラッシングしながら考えることについてお話しようと思います。

美容師さんに教わった正しいブラッシング方法

正しい髪のとかし方をご存じですか?

・根元から毛先の方向へ
・優しく丁寧に
・何度も何度もくり返し

これが基本だそうです。

ブラッシングは、いきなり根元からとかすと抜けてしまうことがあるので、毛先の絡まりを直してから。

ドライヤーの熱を髪に当てるときも、髪のキューティクルを逆立てないように。常に「根元から毛先へ」を意識してね、と教えてもらいました。

タケノコで考えるとわかりやすいですね。逆向きに撫でようとしたらガガガってなって痛い。刺さる。これは良くない。非常に良くない。

そんなイメージを持ちつつ、丁寧にブラッシングします。

すると不思議。つやが出てキレイになるんです。

私の髪質はくせっ毛で広がりがち。なので、ストレートのさらさらヘアーには程遠いわけですが、言うことを聞かないなりにも、丁寧にブラッシングするとキレイになるんですよね。自分でも驚きます。

でですね、ここだけの話、わたくし頭をガリガリ掻きむしるクセがあるものですから、頭皮に傷があることも少なくありません。というか、大体いつもどこかしらが傷ついているし時に禿げている。

これについては半ば諦めの気持ちでいるのですが、それなりにキレイになった髪を見ると、「もっと頭皮を大切にしなくちゃな」と思います。とても素直な気持ちです。

「自分を大切にする」ってどういうこと?

さて、「自分を大切にする」とはどういうことでしょうか。

意味は何となくわかります。人に言われて納得もします。でも、実はよくわかっていない。

あれこれ考えているうちに「自分って何?」という疑問もわいてきます。

このとき頭に浮かぶ心象風景が2つあります。

犬猫兎をもふもふする

必ず思い浮かべるのは、犬や猫など動物を撫でるときのことです。

動物好きの優しい手つき、まさに「愛撫」と呼ぶにふさわしい光景が目に浮かびます。

同時に、自分が猫をなでなでさせてもらっているときのあの感覚も。あぁ、しあわせ。心地よい。

で、ブラッシングしているときって、これを自分にやっている状態なんだよなーと思うんですよね。

猫を撫でるときと同じ優しさで髪をとかす。

あぁ、そりゃ気持ちいいはずだわと。

『1Q84』の青豆さんと神殿

もう一つ思い出すのは、村上春樹の小説『1Q84』の一場面。

主人公の一人、青豆という女性が髪を丁寧にとかすシーンです。

有事に備えて自分の心身を整える時間。何か心惹かれるものがありました。

作中、こんな言葉が語られます。

肉体こそが人間にとっての神殿である

(『1Q84 BOOK1』第11章 p.232)

この言葉は、他の村上春樹作品やエッセイを読んでいても感じ取ることができるメッセージです。

神殿である体を整えることの重要性。

髪を丁寧にとかすことも、神殿を大切にする行為の一つと言えるでしょうか。

この言葉をじっくり味わってみると、身も心も引き締まるというか、スッと背筋が伸びるような……とても不思議な響きがあります。

青豆さんが髪をとかすシーンはどこか儀式めいたものにも感じられましたが、この言葉とあわせて考えてみると、納得できるような気がします。

自分を大切にするって優しく撫でることだと思う

こんなことを考えながら、私はいつも髪をとかしています。いや、いつもと言っても、丁寧に丁寧にブラッシングするのは気が向いたときだけですけどね。ごくたまにです。

ワンコやニャンコを優しく撫でるように、自分の髪をとかす。

これが、これこそが、今まさにこの瞬間が、自分を大切にすることだと言えるのではないか! などと心の中で主張しながらブラッシングします。

自分自身を優しく撫でる。

比喩的にそうとも言えるし、文字通り、私が「自分」と認識しているっぽい物体を優しく撫でるという意味でもあります。

髪の毛以外でもいいんです。皮膚でも爪でも何でもいい。体の表面、見えるところ、触れられるところ、撫でられるところ。

それを優しく扱う。これが自分をいたわるってことなのかなと思います。「手当て」という言葉もそうですよね。

昔の日記に書いてあったんですけど、「がんばって働いてくれてる心臓や脳や肺をはじめとする臓器のこと「よしよし」って撫でてあげたいけど、直接触れないんだよなー」みたいな内容がありまして、コレ人に見せたら痛い人って思われそうだなと思いつつも、面白いこと言うなと他人事みたいに読んでいたんですね。言われてみると確かに直接撫でられないよねー、自分の内側にあるものはねー、と。

でも、直接手で触ることはできなくても、表面を撫でることでそれは内部に伝わるのかもしれません。「浸透」という言葉もありますし。

イメージの力を借りて、ナデナデすることもできそうです。あるいはミニドラ的な小さな分身にお願いするとか?

自分を大切にしよう

心がトゲトゲしたときは、優しく髪をとかしましょう。

入浴後のリラックスタイムにゆっくりブラッシング。それだけで素敵な気持ちを味わえます。

どうやら、自分を丁寧に扱って(もらって)いるように感じられて、心が落ち着くみたいです。ケバケバに逆立っていたものが元に戻る。とても穏やかな時間です。

しかも、整えられたヘアーはキレイ。同時に、ひび割れたかかとにクリームを塗り込むのもよし。さすればきっとひび割れた心も潤うはず(今適当に書きましたけど「そうすれば」と「さする(擦る)」がかかっていますね!)。

猫を撫でているときの幸せに似た感覚を味わえるブラッシング。

心を落ち着かせたいときにおすすめです。

短髪の方は、スキンケア&マッサージがいいですかね。ネイルケアもよさそう。最近はメンズ用の美容ケア用品も充実しているので、男性もぜひ。

うつで全然無理なときは、余計なことを考えずに寝ましょう。

 

<本日の作品>
村上春樹 (2010)『1Q84』新潮社

<本日の猫>

撫でたい背中(猫)

撫でたい背中(猫)

1 COMMENT

あたま

更新ありがとうございます。
最近ネツトの広告で85歳のスーパーモデルさんの広告をよく見ます。キャッチコピーが、働いて笑おう。
自分を大切にとは、ちょっとニュアンス違いますけど、がんばらなきゃと思います。

余談ではありますが、村上春樹では、1973年のピンボールが一番好きです。

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