すみません、ちょっと教えていただいたいことがあるんですけど、いいですか?
何の本で読んだか忘れてしまったんですが、ある小話がありまして。確か故事成語のようなものだった気がするのですが、調べても見つからず……。
誰の話かわかりませんが、私なりの解釈でお話させていただきます。
おっさんの言葉が心に響いて元気をもらえた話
あるところに、人生に疲れた一人の若者がおりました。とっても今どきの青年です。
遠くをぼんやりと眺めながら、彼は回想します。
世の中には、凶悪犯罪や不正があふれていて、悪意のある人間ばかり。毎日、人間の愚かさや醜さが目について、なぜこんな世界で生きなければならないのか考えずにはいられない。
それでも、大人たちは訳知り顔で言う。
「人生は素晴らしい」
「清く、正しく、美しく」
「思いやりの心を忘れずに生きよう」
それを真に受けた自分がバカだった。親や先生、皆に尊敬されている偉人たちも言うことだからと、自分もそうやって生きてきた。でも、人間はみな汚い。
そんなことを考えながら、彼はとぼとぼと川べりを歩いていました。力なくしゃがみ込んで川を眺めていると、ボートに乗った一人の男が声をかけてきました。
おっさん:「おい、兄ちゃん、何してんの?」
青年:「いえ、特に何も」
おっさん:「んあ? 何だか元気ねぇな、どうしたよ? あ?」
青年:「……どうして人間はこの川のように穏やかでいられないんでしょうね」
おっさん:「あぁ、確かに最近はみんなせかせかしてるでなぁ。ま、オレには関係ねぇ話だけどな! ハハハ!」
青年:「僕はもう疲れてしまいました。こんな醜い世界で生きていること、もうウンザリです」
おっさん:「そーかい、そりゃ大変だな~。でも、この川もそんなキレイなもんじゃあねぇよ。よく見てみろぃ」
青年:「……?」
おっさん:「ほれ、近くで見りゃ虫もいるし変なもんも浮いてるぞ」
青年:「はぁ」
おっさん:「けどまぁ、飲み水にはできねぇけども、足を洗うには充分すぎるほどキレイだな。ま、オレはしょっちゅう飲んでるけどな、ハハハ!」
その男の言葉に、青年の心は洗われるようでした。汚い水でも足くらいは洗えると言って笑う船頭のおっさん。
彼はもう少し生きてみようと思い直しました。
チャンチャン。
……という感じのお話です。かなりアレンジしちゃってますけど。誰の話だったでしょうか?
断舎離に憧れる片付けられないうつ病女の気持ち
詳しく覚えていない割に、私はこの話が好きで、「あーもー嫌だ!」となったときによく思い出します。
「汚い水でも足くらいは洗える」
そう自分に言い聞かせると、イライラしたりモヤモヤしたりしたときでも「まぁ、しょーがないから我慢してやろう」と思えるんです。ハイ、上から目線です。
そもそも、そんなこと言ってる自分だって身体から汚物を排出していますしね。汚れがない人間なんてありえないのです。だから人生にも汚れがあって当然。キレイすぎるのは不自然。
と、ある種の言い訳と共に日々を過ごしています。心と身体に飽き足らず、部屋もとっ散らかしながら。
最近話題の「断舎離」の人、ゆるりまいさんが見たら発狂するレベルかもしれません。
◆きちんとできない私の精一杯の生活
これだけでOK!心のホコリを落とす3つの小技
◆スッキリの達人ゆるりまいさんの生活
なんにもないぶろぐ
私も「捨て変態」になりたい。でも、きっと今後も「溜め変態」として生きていくことになるでしょう。ホコリや垢が溜まっても、生きていければ充分ですから。
合言葉は「それなりに」。
船頭のおっさん目指そうと思います。
適当に言ってます。
ごきげんよう。
……と、思ったら(追記)
記事を投稿してから見つけました。船頭のおっさんの話。
五木寛之さんの『大河の一滴』より。
中国戦国時代、楚の政治家・屈原と、地方の漁師とのやりとり。滄浪という大きな川での出会いです。そして別れ際、漁師はこんな歌を口にするのです。
滄浪の水が清らかに澄んだときは
自分の冠のひもを洗えばよい
もし滄浪の水が濁ったときは
自分の足でも洗えばよい
川を例えにするなら、
それぞれが川をそれ以上汚さないように、
ゴミ拾いを続ける必要がある。
そうしなければ、ゴミは増え、そのうち腐臭すらしてくるだろう。
だからこそ、それが建前であれ、本音であれ、
正しいと思うものを基準として自己責任で行動する必要性がある。
人の醜さの本質は、裏切る事でも、騙す事でもない。
誤魔化す事だ。人間も動物。身勝手な行動は当たり前だし、本能や衝動のままに行動することも何ら不思議ではない。
しかしそれでも、自分を心から醜い存在、穢い存在だと認められないし、認められたとしても社会から、そう評される事を心から受け入れられない。堂々とできない。
自分が悪いんじゃない、コイツがわるい、アイツがわるい、社会が悪い。自分は綺麗なままだと。あるいは許されて綺麗に戻ると信じて疑わない。実に滑稽で幼稚で、醜い。