「誰だってそうだよ」
うつ病のつらさを伝えたとき、このような言葉が返ってくることがあります。
この言葉が意味する内容はいろいろあって、「あなただけじゃないよ、安心して」という励ましだったり、「そんなに深刻に考えないで」という諭しだったり、「みんなつらくても頑張ってるのに甘えてんじゃねぇよ」という叱責だったり。
相手の気持ちを考えてみれば、必ずしも悪い言葉だとは言えないのですが、私はこの「誰だってつらい」のような言葉を聞くとモヤモヤしてしまいます。「なんでそんなことわかるの?」と。
確かに、すべての人に言える共通点はあります。
「誰だって生きているよ」
「誰だって自分のことを自分だと思っているよ」
「誰だっていつか死ぬよ」
考え方・感じ方について言うなら、「誰だって悲しいときは悲しいし、悲しくないときは悲しくないよ」とか「誰だって好きなものが好きだよ」とか。バカみたいに当たり前のことですが、人の気持ちはわからないので、当たり前のことしか言えません。
絶対に「誰だってそうだよ」と言えるもの。これを探すのはなかなか難しいことです。
この言葉にムカついたり、モヤついたりするのは、その内容が適切ではないから。あるいは、その人が想定する「誰だって」に当てはまる人が偏っているから。
というか、言葉の正しさ以前に、自分のつらさを単体で見てもらえないことが悲しい。
「私だってつらい」
「○○さんだってつらい」
「みんなだってつらい」
は? 知らんがな。ワイのつらさを実感できるのはワイだけだわアホ。
自分が知る世界がすべてだと信じている傲慢さ。悲しいことです。そして、それは私も同じ。反省。
主語を大きくして納得させる作戦はイヤ
「誰だってそうだよ」という言葉を見聞きするたびに思い出すのは、小学生のときのこと。
夏休み前の暑い日。教室は熱気がこもってみんな汗だく。「あぢぃ~~~」とダレながら、多くの子が下敷きでパタパタパタパタあおぎます。
授業が始まり、先生が言います。
「はい、あおぐのやめてー」
それでもなお下敷きをパタパタし続ける児童が一名。何度言ってもやめません。先生は声を荒げて注意します。
「暑いのはみんな一緒!」
私は「まったくだ」と心の中で頷きました。しかしながら、どうも釈然としなかったんですね。ことあるごとにこのエピソードを思い出しては「うーん」とうなっていました。
「みんな一緒って言い切れるかな?」
「パタパタしちゃダメな理由にはなってないんじゃ?」
みんな同じように暑いなら、先生もみんなも一緒にパタパタすればいいじゃん。パタパタされるのがウザイなら「目障りなんじゃバカチンが」って言えばいいじゃん。というか、パタパタするよりじーっとしてる方が不快感がましだよって教えてあげればいいのに。もしあの子が熱中症で倒れても先生は同じこと言うのかな? 石ちゃん(ホンジャマカ石塚さん)がパタパタしたら「もう、しょうがないなぁ~フフ」とか言いそうだよな……と、あれこれ考え続けるのでした。
そして、出した答えは「先生の言葉はナンセンスだ!」。
先生の行動が間違っていたとは思いません。でも、「暑いのはみんな一緒」かどうかはわからない。全員が暑いと感じていても、感じ方の度合いは人それぞれ違う。先生が「私が暑いのを我慢してテメェらのために授業してやってんのにパタパタしてんじゃねーよ!」と言っていれば、ここまでモヤモヤはしなかったと思います。あるいは、「他の子が授業に集中できないからやめなさい」とか「我慢することを覚えなさい」とか。
でも、やっぱりあのシチュエーションで一番しっくりくるのは「暑いのはみんな一緒!」と一喝することなんですよね。正確さを求めることが役に立たない好例でしょうか。頭でっかちはいけません。重箱の隅をつつくのもいけません。反省。
自分だけのつらみ・苦しみ・痛み・だるみ・死にたみ
こういうことを考えていくと、「あなたのつらさはあなたにしかわからない」という結論に行き着きます。
痛みや苦しみを誰かと比べることはできないし、それを他人がとやかく言えることでもない。
だから、「みんなつらくても頑張ってるんだぞ」みたいな発言は気にしなくてOK! 「つらいもんはつらいんじゃい!」と自信を持って苦しがればいいのです。(ただし、自己中心的なつらいアピールは疎まれるので注意)
と言っても、それで苦しみが解消されるわけではないので、根本的な解決にはならないのですが、自分のことを必要以上に責めてしまう人は自責の念が回復のじゃまをしていると思うので、これがけっこう重要なポイントなんじゃないかなと思います。
「みんなつらくても頑張ってるのに、こんなことで苦しいと言ってる自分はダメだ」と思ったら、「みんなつらいかどうかはわからないな」「まったく同じレベルの頑張りかどうかはわからないな」と考えてみると、少しは気持ちがラクになるのではないでしょうか。
私はあなたのつらさがどのようなものか実感として知ることはできませんが、つらい中でも踏ん張ってるあなたはすごいよ! と思っています。
みんながどう思うかは知りません。
その人の考えはその人にしかわからないから。
【感じ方は人それぞれ】
こんにちは~
いつも読んでます。うつ歴10ヶ月の新参者ですが、発病当初ドクターショッピングして、病院4件変えて、入院~転院のわがまま放題して来まして、退院後7ヶ月経ち病院も3週間に一度薬も1日2回合計6錠に落ち着きました。気に入ってる無料アプリがあるのでご紹介します。(頭痛ーる)っていうんですが、気圧の変化が解って、自分が調子悪い時は気圧のせいに出来るんで結構有効活用出来ます~じゃあ又お邪魔します。
コウイチさん、コメントありがとうございます。
病院を4件変えたということは、3カ月で5つの病院を回られたということでしょうか。今は落ち着いたとのことで何よりです。有用なアプリのご紹介もありがとうございます。暑い日が続きますので、ご自愛ください。
この感覚すごく共感します。
うつ病の症状は、もともとストレスからくる症状だと言うこともあって、言葉にしてしまうと誰もが一度は経験したことのあるようなことだったりして、話をすると「そりゃそうだろ」とか「規則正しい生活送ればそのうち治るよ」みたいなことを言われることがあって、その度に「あぁ、なんかしょうもない発言して返って落ち込んだ、、、」と思うようなことがなん度もありました。
無理をして疲労がたまって首の後ろが凝りだして結果家事がろくにできなくなったり、朝起きるのがとにかく辛くて無理やり出勤したのはいいけど1日の大半をボーっとして過ごして疲労困憊状態で自宅に帰るとか、言ってしまえば「疲れた時は誰だってそうなるよ!」って言えてしまう、、、自分だけが特別なんて思ってる方が非常識な感じがします。。。
でも、元気だった時の自分とはあきらかに違う感覚があって、でも他人に本当の意味で自分の状況を伝えるのはかなり困難で、孤独を感じてしまいます。
今は社会復帰に備えてアルバイトを週4で始めていて、ただ、ストレスに対する免疫力の低下だったり、すぐに疲労してしまうのでモチベーションの維持や社会に対する不安や恐怖感に毎日頭の中が占拠されて、どうしようもない時はこうしてネット上に上がっているさまざまな記事を読むことによって少しでも安心しようと思ってます。
この記事以外にもいろいろと読ませていただきました。これからも時々助けを求めて訪れることもあるかと思います。
このようなブログを開設してくださりありがとうございます。
うつ回復期さん、コメントありがとうございます。そんなふうに言っていただけると嬉しいです。
そうなんですよね、自分でも「これって病気? 気合が足りないだけでは?」という不信感が常に拭えなくて。うつ回復期さんがおっしゃるように、「元気だった時の自分とはあきらかに違う感覚」を伝えるのは難しいですね。言葉にしたら一緒になってしまいますもんねぇ。自分の捉え方が甘いんじゃないかと思えてくるのもつらいし、周りから取り残されたような疎外感もつらいしで、二次的な苦悩がのしかかってくるという……。
渦中にいるときにはわかりませんでしたが、症状が落ち着いて不都合なく生活できるようになった今、痛感しています。「あれは完全におかしかったわ」と。
ストレス耐性の低下や、不安・恐怖感も負担が大きいですね。少しずつ慣らしていくしかないとわかっていても、感情をコントロールするのは簡単ではなくて。それでも、無理のないペースで、じっくり確実に進んでいきたいものです。ホッとできる時間や心の余裕も大切にしたいですね。
暑い日が続いていますので、お身体に気をつけてお過ごしください。うつ回復期さんのまたのお越しをお待ちしております。
はじめまして、こんにちは。
確かナミさんのブログを読むのは初めてではなくて、気持ちが惹かれた記事から読み漁りました。
読んでいて、言葉が適切だなあと感じ、自分もそうだなあと思う事がたくさんあって。
私は現在は病院に行っていないので、うつ病なのか、何かこじらせているのか、何でもないのか、わかりません。でも、ずっと辛かった。
今日の夜は眠りに落ちるまで、落ち着いた気持ちで横になっていられそうです。
いまの最後の文を一番お伝えしたかったのですが、前が長くなってしまい、きれいな言葉で伝えられず申し訳ないです。ありがとうございます。
にーやさん、はじめまして。
あたたかいメッセージをありがとうございます。読み漁っていただけたなんて感激です。にーやさんの言葉はまっすぐできれいですよ~。心にすっと入ってきました。こんなふうに言っていただけて、すごく嬉しいです。
私は完全にいろいろこじらせています。きっとブログににじみ出ちゃってますよね。抑うつ症状に苦しんでいたことは確かなのですが、私の場合、あまりにも未熟で、病気以外に改善すべきところがたくさんあるなと痛切に感じています。きっとそういう部分が「つらい」「しんどい」という気持ちのもとになっていたんでしょうね。
それぞれの苦しさを共有することで、少しでも気持ちを軽くすることができたらいいなと思います。
にーやさんに穏やかな日々が訪れますように。