前回ちらっと引用した『居場所がないのがつらいです』。毎日新聞に連載された高橋源一郎さんの「人生相談」を書籍化した本です。
以前、三好愛さんのイラストを見かけるたびに引き寄せられると書いたのですが(しんどくなったらこれをやる:サボテンを見つめ、一編のエッセイを読み、ルンバを見守る)、本書もご多分に漏れずです。三好愛さんの装画イラストに引き寄せられました(正確には「高橋源一郎」のコーナーを眺めていたら、その中に好きなイラストを見つけてオッ!となった)。そして素晴らしいことに、内容とイラストがものすごくマッチしているんですよね。
相談者の悩みを読む。高橋さんの回答を読む。「そうだなぁ~」と頷く。同時に「どうしたもんかなぁ」と思いながら、相談回答を反芻し、イラストを見る。「ああまさにこんな感じだな」と思う。
不思議と納得するんですよね。何も答えは出ていないのに。「ああ、答えは出ないんだ」と納得するのかな。そうか、答えを出せないこの気持ちに接続する何かが三好さんのイラストにはあるのか。
人生相談の回答って難しいよなぁと思います。だって、限られた情報だけで答えなくちゃいけないですもんね。そんなの、無責任にならざるを得ないじゃんって。毎回どこか賭けみたいな状況で、答えを出さなくちゃいけないわけですよね。「お手紙だけからは何ともいえませんね」「どうするかはあなた次第です」なんて答えは誰も期待してないだろうから。
そう考えると、感心します。
自分の経験談や周りの人の話、文芸作品から共通点を示しつつ、質問者に気づかせるとか、すごい。高橋さんの場合は、下から目線、自分を下げて語るスタンスが多い印象。回答には個性が出ますね。面白い。
人生相談は「人類史上最高のエンタテインメント」だと最相葉月さんが書いていたことを毎度思い出します。投稿された相談は、コンパクトに編集された質問文ではあるんだけども、短い文章からもその人となりが伝わってくるので、本当に、いろいんな人がいるなぁと思います。同時に、いろんな人生があるなぁと映画の断片を見ているような気にもなります。
本書で特に印象に残ったところは、前回書いた「ほめること」についての回答。
その他には、
- おとなしい、従順な、いい子といわれたら屈辱だと思うくらいでいい
- 「信じる」ことは「愛する」ことと同じ
という話。孤独で無気力にさいなまれる人間についての言葉も印象的でした。
高橋源一郎さんの小説、ずっと気になりつつ読んでいないものが多数あるのですけれど、今こそ読むタイミングですね。
本当は、小説を読んでから本書の感想を書こうと思ったのですが、そうするといつになるかわからないので、取り急ぎご連絡まで的な気分で今回の投稿とします。
「読む本リスト」「気になる本リスト」の増殖が止まらないんだぜ!