自由を愛する蛭子さん『ひとりぼっちを笑うな』感想

漫画家で、タレントとしても活躍する蛭子能収さんの『ひとりぼっちを笑うな』を読みました。

「うんうん、そうだよね」と頷く部分が多かったです。中にはちょっと違うかなと思う部分もありましたが、一般的な感覚ではあると思います。10年前の本だし、価値観にはどうしてもズレが出てくるでしょう。私の考えだって10年前のものは古くなっているんだろうし。

全体通して語られる蛭子さんのポリシーは「嫌われないように心がける」、これをはっきり示すのは面白いなぁと思いながら読んでいました。そういう人ってあまり見ないから新鮮で。だって、よく見聞きするのは「嫌われたくないと思ってしまう」というネガティブな捉え方だと思うんですよね。嫌われないように行動したら嫌われたなんて話もよくあるし。「嫌われないように人の目を伺っている人が嫌い」と公言する人もいますよね。

蛭子さんは、人の頼みを断れない性格なんだそう。こうやって自分の性格をありのまま受け入れているのもすごい。こういうのってどうしてもネガティブに捉えてしまうじゃないですか、卑屈になってしまうというか。蛭子さんにはそういう卑屈さがないんですよね。それがいい。

とはいえ、悪気なく言った言葉が相手を不快にさせていることもあるよってことはもう少し知っておいた方がいいような……とちょっと心配も生じます。でも、相手が何を思うかは自由って感じでそれも受け入れちゃうんだろうなーと気づいて、なんか蛭子さんすごいやーと天を仰ぎました。

自由が第一、相手に何かを強いないところがとてもいい。これがあるから、考えを押しつけられて嫌な気持ちになることがない。これって簡単なことじゃないですよね。ついつい自分の考えが正しいと主張したくなってしまいますから。

孤独に関する記述にも興味深いところがありました。蛭子さんは、孤独には“よい孤独”と“悪い孤独”があると書いています。タイトルにもなっている「ひとりぼっち」、本書で語られるのは“よい孤独”についてです。ひとりぼっちでいることは全然悪いことじゃない、孤独に過ごす時間から生まれる素晴らしいものはたくさんあるんだと。

一方で、心を蝕む“悪い孤独”についてはあまりふれられていません。私としてはそのあたりの話も気になるので、ちょっと物足りなかったかな。このあたりの話は改めてまたブログに書こうかなと思っています。

蛭子さん、いつもヘラヘラ笑ってごまかすことについても書いていて、あ、自分のことそんな客観視してたんだーと思ったんですけど、漫画家だからそういう視点が優れているのは当然だなと気づいて、蛭子さんのマンガが猛烈に読みたくなりました。

折しも蛭子能収コレクションが電子版として復刊されたとのことで、思わずヘラヘラしました。
 

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