『まったく同じ3人の他人』というアメリカのドキュメンタリー映画を観ました。原題は『Three Identical Strangers』。Amazonではタイトルが『同じ遺伝子の3人の他人』となっています。
かなり引き込まれました。面白かったです(という言い方は不適切かもしれませんが)。
こんな内容
本作は、生後6か月で別々の家族のもとへ養子に出され、自分に兄弟がいることを知らないまま育った三つ子に焦点を当てたドキュメンタリー映画。
実際の映像やインタビュー、再現映像などを交えて、彼らがどんな人生を歩んできたのか描かれています。
ネタバレ感想
ドキュメンタリーにネタバレとかあるのかって感じですが、一応お断りを入れておきます。作品を観た前提で書きます。まっさらな気持ちで観たい方は、本編をご覧になってからどうぞ(Amazonでは配信が終了してしまったようですが……)。
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「遺伝と環境は互角」?
三つ子の彼らは、なぜ、別々の家族のもとへ養子に出されたのか?
それは「生まれか育ちか」を調べる双生児研究の被験者として選ばれたから。
ひどい。ひどすぎる。昔は(と言ってもわりと最近)倫理的にヤバい研究がいろいろあったと聞きますが、赤ちゃんの頃から被験者にされて、育ての家族にも知らせず、勝手に実験!? ちょっとどうなのよ?! と驚きおののきつつ本編を見ることになるのです。はー、しんどい。といっても、これが明かされるのは中盤以降なのですが。
この研究に関しては、「遺伝と環境は互角」という言葉が印象に残りました。なんやかんやの末に出た言葉だったので、すごく納得感があったというか。
同時に「ま、そうだよね」とも思いました。人格形成の要因として何が優位かって、明確に示すのは難しいですよね。
でも、だからこそ何としてでも調べたいと思うのが研究者というものなのでしょうか……?
というか、明確に示すことが難しいなら、互角とも言えないですね。「わからない」が正解? うーん。
ドキュメンタリーなのに劇的すぎやしないかい?
私は淡々と事実が紡がれるドキュメンタリーが好きだなぁとこの映画を観ながら思いました。
というのも、本作はドキュメンタリーにしてはドラマチックすぎる気がしたんですよね。音楽の入れ方も出演者の話し方や仕草も演出されているように感じました。
そのせいで何だかこちらの感情をコントロールされそうな気がして、「うぎぎぎぎ」と踏ん張りながら観ている瞬間が何度もありました。
例えば、エディは死んでしまったのに、3人揃って楽しかった頃のこと、あんなに陽気に活き活きと語れるものだろうか? とか。だから、話者に演技指導が入っているのではとちょっと思ってしまいました(でも、楽しかった思い出を語ると思わず笑顔になるし、サービス精神旺盛な性格なら、そういうこともあるのかなぁ? でもシリアスなシーンとの落差があまりにも大きかったような……)。
さらに、インタビューで語られていないことはいくつもあるはずなのに、「こう感じるのが正解」という雰囲気がこの映画にはあって、今自分が抱いている感想もその効果に引っ張られているんじゃ? という疑いが否定できなくて、エピソードが追加されるたび、あわわわわーわからないーと泡を食いました。
まぁでも、そういう構成だからこそ、飽きることなく、ぐぐぐっと引き込まれて最後まで観られたのかなとは思うのですが。
そう、とにかく構成が劇的な展開になっていたんですよね。「こんなに素晴らしい日々が待っていたのです」「なななんと! この後まさかの展開が!」みたいな感じで、「びっくりでしょ?」と言いたげな構成だと感じました。
まぁ実際びっくりして「えーっ」とか言っちゃってたんですけど。
ドキュメンタリーとして、これはどうなんでしょうか?
数えるほどしか観たことがないのでわからない……。
監督の意図と私の解釈、視聴者は試されている
こういう視点を手に入れるきっかけとなったのは、森達也監督の『FAKE』を観たこと。
私にとってすごく重要な作品になりました。あまり映画を観てこなかったから強く印象に残っただけという気もしますが。
意図と解釈。ありのまま真実をわかりやすく取り出すことなんてできないんだよなぁと改めて思いました。
そして、倫理的にヤバい研究って、他にもいっぱいいっぱいあったんだろうなぁとも(先日もCIAのMKウルトラ計画関連の作品を鑑賞したところなので余計にあれこれ気になり中)。
人類は進化していると思います。もっとよくなりたいですね。