あなたも私も堂々と生きてよし/『無能の鷹』感想

自分に自信がない。

すぐ胃が痛くなる。

「お前の実力を見てやろう」と視線を向けられたら、もう無理。逃げ出したくなる。

そんなあなたに救いの手が伸びる!

……のかどうかわかりませんが、『無能の鷹』というマンガが面白かったので、感想を書きます。

『無能の鷹』は、めちゃめちゃ仕事デキる人に見えるのに、実際は無能な(エクセルの操作どころか名称さえ把握できているか怪しい)鷹野ツメ子と、自分に自信がなく胃腸薬常備の弱めメンタルだが堅実に仕事をこなす同僚の鶸田(ひわだ)がタッグを組んでやっていくお仕事マンガ。

めちゃ笑いました。夜更けにページをめくりニヤッとしたり小さく吹き出したり。鷹野のデキる人オーラにより、取引先の人たちが勝手に勘違いしてくれる流れが本当に面白くて。

で、なんかうまいこといっちゃうの、「いやいやいや!」って言いながら笑っちゃう。

現実ではこんなうまいこといかないよ、ってのは間違いなく、鷹野がやっていけるのはマンガだからこそなんですが(尻拭いしてる人のことを考えると泣ける)、間合いとか立ち居振る舞いのちぐはぐさが面白い。「全然できない、何もわかっていないのに、その顔、その態度!?」って。

そう、とにかく、主人公の鷹野ツメ子さんが最高。すごい仕事できそう、なのに無能! というギャップ。

鷹野は、在る。純粋に、ただそこに在るのです。

鷹ではない。動物というより植物っぽい。樹木、大木、あるいは葦? 水や大気のようなものかも……。

要するに、弱肉強食的な意図がない。純然、超然とした存在。

鷹野は、仕事ができないからといって誰かに八つ当たりすることはありません。自分の失敗を隠したりごまかしたりもしません。「私はあなたよりすごい」と虚勢を張ることもないし、反対に自分のダメさを嘆くこともない。怒られても呆れられても全然落ち込まない。強すぎる。

 
このマンガを読んで、かつての知り合いを思い出しました。その人はプレゼンがうまくて、めちゃめちゃ説得力がありました。堂々としていて、声もよく通る。彼が話しているのを見るたび私は「すごいな~!」と見上げるばかり。

が、あるとき知りました。共通の友人がいるとわかって、世間話するようになったのですが、普段の彼に「すごい!」「さすが!」みたいな感じは一切ないのです。むしろ凡庸? あれ、あのオーラは一体? 私に似たダメさを感じるのは気のせいかな? よくよく話を聞いていると、みんなの前で力強く語っていた信念も特にないような……。

それでもやっぱりプレゼンはうまい。今はもう、大したことを言っていない当たり前体操レベルだと知っている。なのに、耳を傾けてしまう。内容はないのに引きつけられる。まさに鷹野ツメ子!(その知り合いは全然無能ではなかったですけど)

ハッタリって重要ですね。いや、ハッタリではなく、堂々とした態度が大事なんでしょうね。人の心を動かすし、引きつける。話す内容が3割増し以上になる。自信満々で言われると、人は納得しちゃうのです(私が丸め込まれやすいだけ?)。

私も堂々とした態度でいたいけど、難しいなぁ。

とりあえず、発声と姿勢は大事だなと思うので、良くなるように心がけたいです。

それから、心の片隅に、鷹野ツメ子さんを住まわせようと思います。

あと、鷹野の同僚であり相棒の鶸田には共感するところがあります(すぐ胃が痛くなるところとか)。鷹野と鶸田のコンビがいい。早く続きが読みたいなー。

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