冬になると、落ち込みがひどくなったり、眠気が強くなったりすることはありませんか?
「季節の変わり目は体調を崩しやすいものだけど、どう考えてもそういう軽いものじゃない……」
そんなときは、晴れた日に外へ出て1時間ボーっとしましょう。
それだけで、抗うつ効果が期待できるかも……!
冬季うつ病と日照時間の関係、光療法の解説から学んだことです。
もくじ
冬季うつ病のメカニズム
冬季うつ病(季節性情動障害:SAD)は、冬にうつ症状があらわれる脳機能障害です。
「NATIONAL GEOGRAPHIC」におもしろい連載がありました。
第13回 もっと光を! 冬の日照不足とうつの深~い関係
第14回 もっとバナナ を! 冬季うつの自己治療
第15回 光は「いつ浴びるか」より「浴びた量」 冬季うつのメカニズム
一般人1,000名を対象に行った調査によると、北国では3~4%、全国平均では1%の人が冬季うつ病とわかったそうです。
ちなみに、うつ病を経験した人の割合は15人に1人と言われます(日本の生涯有病率 6.7%)。
100人中、うつ病になる人が6~7人、冬季うつ病になる人は1人? そう考えると、特別な病気ではないことがわかります。
とはいえ、「気候の変化で体調が変わるのはみんなそうでしょ」という思いもあります。
が、それも明確な個人差があるらしいのです。
「晴れた日は明るくて気持ちいいよね~」という感覚は、心理的・視覚的なものだけではない。
冬季うつ病のメカニズムはまだわかっていない部分もあるのですが、データは出ているようです。
「昼間の長さが大事なんじゃない?」
「光のタイミングより量が重要なんじゃない?」
などなど、現在もいろいろ研究中だそうです。
<生涯有病率について>
・日本生物学的精神医学会「うつ病対策の総合的提言」(PDF)
・うつ病 | 厚生労働省
【光の作用】日光は気分を上げてくれる?
光には2つのいいことがあります。
1.物が見える(光の視覚性作用)
光は物を見るために必要なもの。真っ暗闇では何も見えません。光があるから物が見える、ありがたいことです。
2.心と体の働きを調節する(光の非視覚性作用)
光は物を見るためのものだけではありません。
脳には、光の情報に反応する神経細胞・メラノプシン君がいます。彼は光を受けるとシグナルを発します。彼のシグナルを脳が察知すると気分の調節などをします。
そのうちの一つが抗うつ効果。はっきりわかるものではないので、あまり実感することはありませんが、他にもさまざまな働きをします。
ただし、光であれば何でもOKというわけではありません。
室内照明があれば、真夜中でも活動できます。でも、その光で心身の働きは調節されません。そこにメラノプシン君を元気にするものはないのです。
それが「見えてるだけじゃダメなんだ!」というメッセージなんですね。
冬季うつ病と日照時間の関係
「冬季うつ」は日照時間と関係している、という話はよく見聞きします。「確かに冬は日照時間が短くなるもんねぇ」と感覚的にも納得できます。
でも、統計を見ると、「北国=冬季うつになりやすい」というだけではないそうな。
冬季うつ病のハイリスク者が多い場所ランキング
先の一般人1,000名を対象にした調査結果(参考)
1位:秋田(4.0%)
2位:札幌(2.9%)
北国で冬季うつ病ハイリスク者の割合が高くなっています。が、鹿児島県奄美市でも割合が高かった! 南国なのに!
そこから導き出された共通点が「日照時間の短さ」。
日照時間が短い場所ランキング
気象庁による30年間の観測値(1981年~2010年・平年値)
1位:秋田市
全国の地方気象台で見ると、
1位:山形県の新庄(約1323時間)
2位:鹿児島県の奄美市 (約1360時間)
奄美市の日照時間が短い理由は、雲が多いから。いくらあたたかくても光がないとダメみたいです。
つまり、「冬季うつ」は、
・暑さ、寒さは関係ない
・緯度も関係ない
ポイントは、日照時間が短いこと。
<日照時間データ>
・気象庁 年ごとの日照時間 平年比(%)
・気象庁 各地の気象台・施設等機関
まぁ、これ見たってよくわかんないですけど、いろいろ眺めてるとおもしろいです。
冬季うつ病の人は光に敏感?
さらに、研究者のあいだでは「日照時間と日長時間、どっちが大事?」ということも調べられているそうです。
・日照時間(晴れて日が照っている時間)
・日長時間(日の出から日没までの時間)
日長は「昼間の明るい時間」と考えるとわかりやすいですかね。
お天気によって変わる日照時間。
季節によって変わる日長時間。
今までは、「日長時間が大事なんじゃない?」と言われてきたんですって。
理由は、冬季うつ病患者さんは光に敏感みたいだから。
これは、体内時刻を伝えるメラトニンというホルモンが関係しているそうです。メラトニンは、ダークホルモン(暗闇を伝えるホルモン)とも呼ばれていて、夜にたくさん分泌されるそう。
【夏】夜が短い → メラトニン少ない
【冬】夜が長い → メラトニン多い
メラトニンの分泌量から、鳥やネズミなどの動物は季節を感知しています。
人間はその能力が弱くなったけれど、冬季うつ病患者さんにはそれが残っているのではないか? と。
・なぜ、季節を感知する能力が弱くなったのか?
・なぜ、光に敏感だとうつ症状が出るのか?
これはまだわかっていないそうですが、光環境の落差に何らかの原因があるのではないか、ということらしいです。なかなか興味深いですねぇ。
光療法は朝じゃなくてもOK
ここまでの話を簡単にまとめると、
【冬は光が少ない → メラノプシン弱る → 抗うつ効果うすい】
これを受けて、「じゃあ、こうすればいいんじゃない?」と言った人がいました。
【光を増やす → メラノプシン元気 → 抗うつ効果 → ハッピー】
このアイデアから生まれたのが光療法。6~7割の患者さんに効果があるそうです。
そして、人口光を使う治療で多くの先生が気づきました。
「光療法の時間帯って朝じゃなくてもよくない?」
「タイミングより量が重要なんじゃない?」
検証すると、それは正しいとわかりました。「光療法はどの時間帯でも効果アリらしいぞ」と。
でも、夜の光療法はダメですって。体内時計を大幅に夜型にしてしまうし、そもそも眠れなくなるから。そりゃそうですよね。
うつ病回復のためにできること
光療法は、冬季うつ病以外のうつ病にも効果があるそうです。
そのためには、1万ルクスの光を1時間浴びること。自然の光を浴びられるのが理想です。
こちらの資料によると、
100,000ルクス | 晴れた日の屋外 |
10,000ルクス | くもりの日の屋外 |
5,000ルクス | 雨の日の屋外 |
2,500ルクス | 晴れた日の室内 (東や南側に窓) |
晴れ、くもりの日に外へ出て1時間すごせばOK。
これなら気軽にできます。起きられないときは、カーテンを開けて日光を浴びるだけでも違いますね。
あとは、
・生活リズム
・食習慣
に気をつけながら過ごせたら最高。
規則正しい生活のためには、軽めの運動を取り入れるとGood! 疲れると早く眠れるし、早く寝れば早く起きられます。……うん、行き着くところはやっぱりここですね。
あとは、自分を責めないこと。
「体調を崩すのは個人の好き嫌いや感情とは関係ない」「生物的な反応だ」と思えば、「私は怠けているだけ」と自分を責める必要はないとわかります。
回復のために、日々の生活を整える。それで合格。
さぁ、日向ぼっこしながら、のんびり過ごしましょう。
だらりん&ごろりん
ナミさんこんにちは(^^)
本当にナミさんのブログは勉強になります。今朝晴れていて調子も良かったので片道20分ほどの図書館に歩いて行きました。調子が悪い日は途中で引き返したり、それ以前に外に出るのも億劫なときが結構あるんですが、今日はなんとか行くことができました。
晴れ・くもりの日に1時間日光浴をするのは元気のないときもできそうです。
ナミさんの記事を読むたびに、「あー、悩んでいるのは自分独りじゃないんだ」と感じ、「起きてちょっとだけがんばってみようかな」という気分になれます。いつもありがとうございます。
ひころこさん、こちらこそ、いつもありがとうございます。
図書館まで片道20分となると結構な距離。達成感が大きそうです。健康のためには30分~1時間程度の散歩やウォーキングが理想と言いますし、不調の中でこれだけ頑張れたらバッチリですね。
その日の調子に合わせて、無理なくできる小さな目標を用意しておくと「できなかった……」という落ち込みを防げますよね。”ちょっと頑張れそうなとき用プラン”“元気が出ないとき用プラン”などを考えて記録していくのも楽しいですし。まぁ、ナーバスなときはそれも難しいんですが。
ひろこさんの前向きな姿に励まされている方もたくさんいらっしゃると思います。いつもお話を聞かせてくださり、ありがとうございます。
まだまだ寒い日が続きますので、お身体に気をつけてお過ごしくださいませ。