最近出会ったお気に入りの言葉があります。
もし僕らのことばがウィスキーであったなら
村上春樹さんが綴るスコットランド・アイルランド旅行記のタイトルです。
ウィスキーをテーマに、その土地の美しい景色や人々の暮らしを紹介しています。写真とともに語られる自然や現地の空気が伝わってくる本です。
「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」
続く言葉がまた印象的です。
もし僕らのことばがウィスキーであったなら、もちろん、これほど苦労することもなかったはずだ。僕は黙ってグラスを差し出し、あなたはそれを受け取って静かに喉に送り込む、それだけですんだはずだ。とてもシンプルで、とても親密で、とても正確だ。
なんと粋なセリフでしょう。私の口から語られることは絶対にないなと思いながら、何度も読み返しました。
村上さんは続けます。
僕らはことばがことばであり、ことばでしかない世界に住んでいる。僕らはすべてのものごとを、何かべつの素面(しらふ)のものに置き換えて語り、その限定性の中で生きていくしかない。
何かを伝えるとき、人は言葉を使います。それが「素面のものに置き換える」ことだというのは、まったくその通りだなぁと感じ入るところです。
自分の内にあるフワフワしたものを、伝わる形に置き換えた瞬間、別のものになってしまう。そんな経験はきっと誰にでもあるはず。言葉は便利だけど、万能じゃない。
ウィスキーで通じ合えるものは、言葉よりももっと深いものかもしれないと思ったら、今すぐ誰かとウィスキーを片手に語り合いたい気分になりました。
のんびりほっこり いい旅・夢気分
わざわざこんなことを言う必要はないのかもしれませんが、一応私の率直な感想を記しておくと、「酒飲めない。旅行行く金ない。とほほ」。そして、アルコール依存症の方には危険な本だなということ。いやはや、どうしても現実的なことが頭をよぎりますね。
元々私はお酒が好きで「いつか世界の酒を制覇するのだ」という夢を持っていました。が、薬を飲み始めてからアルコールを控えるようになり、かつての小さな希望も忘れていました。この本はそのときの気持ちを思い出させてくれます。残念に思う気持ちも一緒に。
ページをめくるたびに、ほろ酔い気分を味わえます。香りが漂ってくるようなオシャレなバーの写真、ウィスキーの魅力を伝える小説のような文章からも現地の雰囲気が伝わってきます。
村上さんはこの旅行記を「ウィスキーの匂いのする小さな旅の本」と言っていましたが、まさにその通りの内容でした。
インドア派の私は、これくらいの旅行気分で十分満足できます。のんびりほっこり良い旅となりました。
ちょっといいこと
緊張したとき、心がこわばったときは、「ウィスキー」と声に出してみてください。
自然と口角が上がりますよ。
<本日の一冊>
先日、二年前に退職してからはじめて健康診査を受けてみたらびっくり。
肝臓がボロボロ。
在職中では異状はなかったのに。どこでどうなってこうなったか、記憶にない方が怖くなりました。
おたがい、イメージがわかないですが
想像上でカンパイしましょう。
カンパイ!
と言っても、いま朝ですけど。
紙一重さん、コメントありがとうございます。
肝臓ボロボロ……、おぉぉ、怖いですね……。どうぞお大事になさってくださいませ。
イメージなら朝でも夜でも自由に乾杯できますね。
紙一重さんとの出会いにカンパイ!