やっぱり金は大事だと教えてくれるサイバラさんのすごい話

漫画家・西原理恵子さんの自伝エッセイ『この世でいちばん大事な「カネ」の話』を読みました。

西原さんがこれまでに見てきた現実、自身が辿った道のりがどのようなものだったか語りながら、生き方を教えてくれる本です。

さまざまな苦難を乗り越えてきた西原さんではありますが、決してそれを盾に説教をかましたりはしません。事実を事実として受け止めること、前進し続けること、ときには休むこと。それを伝えるメッセージには、強さと優しさが感じられます。

お金の幻想、嘘くさい建前を全部ぶっ飛ばしてくれるのもいいですね。それ以前に、お利口さんのスローガンを相手にしていない感じ。現実はそんなキレイなもんじゃないんだよゴルアァァ! と。

かなしみとか、せつなさとか、くやしさとか、そういう気持ちにも目を向けて、優しく肩にポンッと手をのせてくれる、そんな西原さんの存在を感じさせてくれる読了感でした。

西原さんの本を読んで考えたこと

「お金がない!」がもたらす不安や焦り

仕事を辞めて自由に使えるお金がなくなったとき痛感したことですが、カネがないと心まで貧しくなりますね。いつもお金のことばかり考えて、いかに金銭を使わないかに心血を注ぐ日々。お陰で(?)カネに関してめちゃくちゃシビアになりました。

働けないとき、カネがない事実は自分を攻撃してきます。

収入がない
→ 稼ぐ能力がない
 → 私はダメ人間

これがなかなかつらい。

「自分が甘えているだけ」
「弱いからいけない」

そうやって過剰に自分を責めるようになると、さらにつらい。

いつも消えないカネの悩み。お金がない。先が見えない。不安しかない。

こんな毎日はつらい。ただひたすらにつらい。めっちゃつらい。

早く何とかしなければ……!

働けないつらさ・申し訳なさ・肩身の狭さ

不調で働けないときは、周囲のサポートが不可欠です。でも、誰かに頼るのは心苦しいものです。だって「お互い様」じゃないから。とてもありがたいんだけれど、申し訳ない。甘えっぱなしで何も返せない。そんな自分が情けない。

お金を自分の力で生み出せない事実は、自信を喪失させます。

10年、20年ずっと不調が続いている。多くの人が当たり前にやっていることができず、もどかしい思いをしている。自立したいのにできない。

それもすっごくつらいこと。

みんなが頑張っている中で、自分だけ休むのは難しい。病気のときは休むべきだとわかっていても、焦るばかりで休めない。「ラクできていいわ~」なんて思えるわけがない。まして、それをなじられたら……。

私はどうしたらいい?

今の自分にできることをする。

それ以外にありません。

回復のためにできることをする。自分を責めることはプラスになりません。必要なのは「嬉しい」「楽しい」「快い」を見い出して、大切にすることです。

「つらい。どうしたらいい?」

「耐えろ」

端的に言ってしまえばそういうことになるのですが、場合によっては耐える以外の選択も重要です。そうじゃなきゃ死んじゃうから。

西原さんは休むことの必要性を説いています。

「いくらがんばっても、どうにもならない」ってことを知ることは、とても大事なことだと思う。あまりにも疲れてしまっているのなら、ちゃんと休む。
 心と体を休めて、ちゃんとものが考えられるようになってから「じゃあ、これからどうしたらいいんだろう」って自分とじっくり向き合えばいい。
 自分の中の「ダメなところ」を、そんなに恥じることはないんだよ。肝心なのは、だめになったら、そこからどう切り返すかなんだから。どうやったら、そこで「自分なりの次の一手」を打てるかなんだからさ。

(p.192-193)

「1日1個がんばることを決めて、それ以外は自由!」

そんな目標を掲げて過ごすのもいいと思います。がんばることは何でもいい。今の自分にできること。

風呂に入る、テーブルをふく、花に水をやる、散歩する etc.

それ以外の自由時間は、自分が心地よく過ごすこと、心がラクになる方法を選ぶこと。それがルールです。

自分なりのやり方を探そう

美術専門の予備校で、成績が最下位だったという西原さん。もう後戻りができない状況で現実に打ちのめされ、「どうしようどうしよう」とグルグル悩んだと言います。でも、彼女は発奮します。

「肝心なのは、トップと自分の順位をくらべて卑屈になることじゃない。」

そうして始まる「最下位による、最下位からの戦い」。

西原さんはその人にはその人なりの戦い方があると教えてくれます。

あなたの戦い方はなんだろう?

それは既存のルールにとらわれないやり方かもしれません。ということは、自分で考えるしかないんですよね。マニュアルはないから。

自分で考えて、実際に動いて、自分の実力や限界を知ることが大事。さらに、「才能」は人から教えられるものだと西原さんは言います。人がみつけてくれた自分の「良さ」を信じて進め、と。

とにもかくにも、行動を起こすこと・自分に何が必要か問い続けること。

……と言われると、自分はどうしたらいいか、ついつい人に答えを求めたくなります。そういうときは喝を入れましょう。

「まず自分で考えろ!」

喝を入れられてばかりの私です。

西原さんの人生・私の人生

この本を読んだのは2回目で、最初に読んだのはまだまだ不調な時期でした。そのときの感想は、「生きててすみません」。自分がいかに頑張れていないか見せつけられたような気がして「やっぱり私はダメだ」と落ち込みました。自分みたいなダメ人間がのうのうと生きている罪悪感でいっぱい。「私のような者が呼吸などして申し訳ありません」。

でも、この本に書いてある現実は西原さんが見た現実であって、私の現実ではありません。私は西原さんの人生を歩むわけでも、歩まなければならないわけでもありません。そういう混同してはいけない部分を全部ごっちゃにして苦しくなっていたんですね。

改めて読んでみて感じたのは、これだけの事実を淡々と語れるのはすごいなぁということ。西原さんには、状況に応じてぐにゃんぐにゃん曲がってみせる面白さがあります。柔軟性とかバイタリティとか思いつく言葉はいくつかありますが、スマートにこなすというよりは、「なっはっは! どうだー!!」みたいな豪快さがあって楽しいなぁと。イラストのイメージにめちゃくちゃ引っぱられてる感はあると思うんですけど。

そんな西原さんの生気を感じながら、本書で語られた西原さんの知恵を自分の人生にどう活かすか考え出している私がいるのでした。

「西原さんのような人になりたい」ではなく、「西原さんのように自分の戦い方を見つけたい」。活力エコモードの私にパワーを注入する西原さんの言葉、アツいです。

ちなみに私は戦わない生き方を望みます。戦わない生き方で私は戦う。

どうしても言葉遊びみたいになってしまいますが、私には勇ましさが備わっていないようなので、それ以外の方向性を模索していきたいなぁと考えております。

ナマケモノにはナマケモノの戦い方があるのだ!

というわけで、寝ます。

 

<本日の一冊>
西原理恵子 (2008)『この世でいちばん大事な「カネ」の話』理論社

理論社が西原さんに印税を払えなくなってどうのこうのというエピソードもあるそうで、サイバラ先生は身をもって人生を教えてくれるなぁと感心するばかりです。

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