ある日のこと。たまたま居合わせたおじさんが何かを間違えたらしく、こう言いました。
「あー、誤算だ、誤算……ごさん15」
おじさんの絶妙な間。私の中で笑いが巻き起こりました。
同時に、九九の歌が流れ始めました。子供の頃に何度も聞いたあの歌。
それからしばらく九九の歌が日々のBGMとなりました。
それにしても懐かしい。九九の歌。楽しい。
あまりにも頭から離れないので、思わずネットで検索しました。
私が何度も聞いていたのは「童夢くんの九九カセット」。学研の付録で、たしか誰かにもらった物だったと思います。かなりレアっぽいですが……
ありました。しかもフル音源。
基本的にオフィシャル動画以外は視聴しないことにしているのですが、こればかりは我慢できず、再生ボタンを押しました。
めちゃくちゃ興奮しました。
耳から離れないメロディ、つなぎの小話、絶妙な間。アレンジも素晴らしい。なんとしてでも後世に残してほしい。
そんな大絶賛したくなる内容です(刷り込みパワーと懐かしフィルターにより評価爆上がり)。
著作権的にはどうなんでしょう。ダメっぽい気がするけど、他に聞く手段がありません。もはや幻のカセットテープといっていいのかもしれません。学研に問い合わせても入手できるか怪しそうです。
いや~、それにしても「童夢くんの九九カセット」は素晴らしい。
細かな曲のアレンジは忘れている部分も多かったのですが、改めて聞いてみるとかなり良い。
元気いっぱいの行進曲でいくのかと思いきや、しっとりとしたワルツがあり、多様なパーカッションが鳴り響くサンバ風もある。ちょっと不穏なテクノ風だったり、耳馴染みのいいベースラインの上で妖精が飛んでるみたいな装飾音が鳴っていたり。昭和の雰囲気を漂わせる曲まであって飽きません。
これらのメロディは、大人になってからも、ふとした瞬間に頭の中で流れました。特にばっちり覚えていたのは4の段、8の段、9の段。このあたりが苦手だったのでしょうか。それともメロディが好きだったのかな?
断片的とは言え、完全に忘れることはなかったってことがすごい。
何より、九九の歌のあいだに挟み込まれる小話とつなぎの宣言がめっちゃ好き。
「誤算だ、誤算……ごさん15」と口にしたおじさんと同じ、あの絶妙な間です。
カセットでは、童夢くんが冒険しながら九九の歌をうたう物語仕立てになっていて、「蜂に刺される…! 蜂に…蜂に……はちに16! 八の段!」とか言うんですけど、何回聞いても笑っちゃう。
特に9の段、ピンチに陥ってからの切り替えっぷりがすごい。「誰か助けてぇ~! 苦しい~苦しいよう……く…く…く……くく81! 九の段!」ですからね。これはめっちゃ覚えてた。
いや~、懐かしさと相まってもうダメですね。
マツケンサンバを聞いて思わず嬉しくなってしまう感覚に近いです。楽しい。
というわけで、最後に一言。
懐メロ番組よろしく、知らない人を置いてきぼりにする話題になってしまったことを反省しています。
しかし、学びもありました。
この「懐かしさ」によるパワーは、きっと何かに活かせるはずです。
またいろいろ考えてみたいと思います。