何のために生きるのか。
あなたはその問いに答えられますか?
私はこれといった答えを持ち合わせていないのですが、それはさておき、今日は植物ってすごいよねという話をしたいと思います。
そう、植物はすごいし面白いのです。
「何のために生きるのか、そんなこと知らん、とにかく俺たちは生きるんだ」
そんな強さを感じます。いや、そんな意志すらない。生きることが当たり前すぎて「何のために生きるのか」なんて問いが陳腐に感じられるほど。何なんでしょう、植物やばいと感心するばかり。
そんなことを思ったのは『たたかう植物』という本を読んだからです。
さまざまな植物の生態を紹介する本書。
その場から動けない植物。まわりはすべてが敵。「弱肉強食」「適者生存」の自然界をどうやって生き抜くか、植物のしたたかさには感服するところがいっぱいです。
植物の生存戦略に学ぶところは大いにありそうだなと前のめりになって読みました。
キャベツ vs. モンシロチョウの「共進化」
本書ではさまざまな植物の生存戦略が紹介されているのですが、中でも興味深かったのは、キャベツとモンシロチョウの「共進化」の話。
昆虫は偏食家が多く、特定の植物しか食べないものが多い。その例として挙げられていたのがモンシロチョウの幼虫。彼らが食べるのは、キャベツなどアブラナ科の植物だけ。他の植物は食べられないそう。
「キャベツ vs. モンシロチョウ」です。
キャベツは、モンシロチョウの幼虫に食べられないように毒を作って対抗します。するとモンシロチョウもその毒に対応して進化します。するとキャベツがさらに新しい毒を作ります。モンシロチョウはその毒に対応します。
モンシロチョウがキャベツにこだわるのは、今さら他の植物に手を出して一から攻略するより、今まで食べてきた植物を工夫して食べた方が早いから。
そんなこんなで、互いの攻防が繰り返され、一対一の関係で進化が進んでいくのが「共進化」。
他の昆虫は置いてけぼり。キャベツとモンシロチョウが切磋琢磨するライバルだったなんて。周りのものたちを差し置いてバトルを繰り広げているってのも面白いなと微笑んでしまいます。いや当事者たちは「殺るか殺られるか」の仁義なき戦いをくり広げているわけなんですけれど。
植物学者のメッセージとハイロウズの「モンシロチョウ」
こうして多様な植物の生態を知り、外敵(他の植物、環境、病原菌、昆虫、動物)との戦い、そして人間とどうやりあってきたかを知った上であとがきを読むと、著者のメッセージは、なんとも示唆に富んでいるなと考えさせられます。
人類の愚かさを批判しているのか、ただ単に事実と可能性を提示しているだけなのか。皮肉にしては妙にクールだし、突き放したような見方、その視線にゾクゾク感を覚えます。
そして私は気づきました、これはまさにハイロウズの「モンシロチョウ」じゃないかと。
日本のロックバンド、ザ・ハイロウズが1999年にリリースした4thアルバムに収録された「モンシロチョウ」。「モンシロチョウ キャベツ畑」と繰り返される曲です。これまたなかなかすごい歌詞なんですけど、とてもカッコいい曲で……ってそれは置いといて。
モンシロチョウとキャベツの「共進化」のパートを読んだときからずっとこの曲は頭の中で流れ続けていたのですが、読み終わって完全に本書のテーマ曲じゃないか、いやもはやこの本が伝えるあれこれをそのまま歌にしましたみたいな感じじゃないのと興奮したのです。
今までは、キャベツ畑をひらひら舞うモンシロチョウと人間の残虐さや愚かさの対比を風刺的なものとしてぼんやりと楽しんでいたんだけれど、やっぱそれだけじゃないんだなと。
主語に何を持ってくるか、どの視点で見るかによって内容はいかようにも変わりそうですが、例えば本書の内容に寄せるなら、
地球にやさしくだと
お余計なお世話だババア
イルカやクジラよりも
森林やオゾンよりも
第三次世界大戦だ
ワクワクするぜ突撃だ
第三次世界大戦に突撃しそうな人類が、現在進行形で自然を破壊しながら、持続可能ななんたらSDGsうんたらと言っているそのちぐはぐさ。
この曲が発表された当時にはSDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)という言葉はまだなかったけれど、矛盾や欺瞞を暴く歌なのかな、あるいはそんな意図はなく、事実を歌っただけなのかな、まるで『たたかう植物』のあとがきみたいだ! とビビビッときちゃったのです(でも同時にこんな解釈を当てるのはナンセンスだとも思うんですけどね。バーカバーカ、ガハハハハの素敵表現みたいなところあるじゃないですかブルハハイロウズクロマニヨンズって。言葉じゃなくて音楽なの)。
ちなみに、「オレはひどい咳だぜ コデインをお願いします」という歌詞もあるのですが、コデインは咳止めに使われる薬。ケシから取れる成分です。ケシには種類がいろいろあって、ポピーとして愛でられる種もある一方、麻薬の原料となるモルヒネやコデインを含有する種は栽培禁止と法律で決まっているそうです。
そんな植物に含まれる毒についても本書では解説されています。毒使いの植物すごいなとここでも感心。
「絞め殺し植物」と呼ばれる名前がやたら物騒なタイプもいます。元の植物を乗っ取る戦略……怖いですね……。
さあ、あなたはどの戦略でいきますか?