誰にでもできる親孝行 ― 糸井重里が語る「親」という存在

Black Dog

「親」について、糸井重里さんがほぼ日刊イトイ新聞の「今日のダーリン」で語っていました。

ここ数日、親に対して申し訳ない気持ちが最高潮に達して、ズズズズと落ち込みがちだった私には、何ともタイムリーな話題でした。

しかも、本屋でブルータスの糸井さん特集を立ち読みしたばかりだったので、「あれ?糸井さん私にメッセージ送ってる?」と勘違いしてしまうほど。

あぁ、糸井さん、好きだ。

じゃなくて。

「親」という存在。

私は、病気になるまでずっと「親に『自慢の娘だ』って言ってもらえるような人間になるのだ!」と思って仕事に勉強に取り組んできました。

親に喜んでもらいたくて、こういう発想が生まれたわけですが、実はコレ「世間」の目も意識しているんですよね。

実際に人様の子どもと自分を比べて「その優劣を見せつけてやる!」なんてことは思っていませんし、うちの親も、家族のことをあーだこーだと言いふらすような人ではありません。

でも、口には出さなくても思ってたんですよね、「負けたくない」って。

やっぱり私は人と比べて生きてきたんだなーと思い知らされます。そりゃ、疲れるわ。

さらに私は、「親」の価値観を自分なりに想定して、これなら喜んでもらえるだろうと「親ウケ」の良い選択をするわけです。パパママがニコニコして応援してくれるような学校に行ったり、仕事に就いたり。

とは言っても、私もそれなりに反抗期があって、「親の言うままにはならぬ!」と強がった時期がありました。でも、結局「迷惑かけた分、恩返ししなきゃ!」と最初の「親のため」路線に戻る。

そうして我武者羅に走っているうちに、うつ病を発症。

親を喜ばすどころか、親を苦しめる最悪の結果になってしまった、と私は絶望します。

それでも親から「立派に働くことより、あなたの身体が一番大事」なんて愛のある言葉をもらった日には、申し訳ない気持ちがMAXに達します。

「こんなダメな人間でごめんなさい」
「恩返しできなくてごめんなさい」
「生きててごめんなさい」

ネガティブまっしぐらです。

これもうつ症状の一つなんですが、自分は親不孝だという思い込みがより一層自分を苦しめます。死んだ方がましだと考えてしまうほどに。

さらに、世間の「親」の存在も非常に大きくて。

糸井さんはこう言います。

ぼく自身が、そこそこ年齢のいった「親」でもあるけど、
世間の「親」のことが迷惑に思えてならないんですよね。
若い人たちが上手でないこともたくさんあるけれど、
その逆のほうがずっと多いと思うんですよ。
「親」という立場からのご意見がじゃましなければ、
世の中は、もっとのびのびすると思うなぁ。

こうやって優しく見守ってくれる「親」はやっぱり少ないですよね。

だからといって、多くの「親」が優しくないわけではなくて。彼らは自分の願いを伝えているだけで、決して悪気はない。むしろ、愛があるからこそ強い願いが生まれるのでしょう。

私自身、周囲が自分に期待してくれることが嬉しかったのも事実。それがモチベーションになって良い結果を残せたこともありました。

ただ、期待に応えることばかりに集中してしまうとよろしくありません。自分がどうしたいのかわからなくなってしまうから。

受け取る度合をバランス良く保てたら良いんですが、それがなかなか難しいところです。

 

「生きてることが一番の親孝行」

「親孝行したい」という思いとは裏腹に、くすぶっている毎日。

ことあるごとに思い浮かぶのは「こんな私でごめんなさい」。そういうことを考え出すと、「あー、私やっぱり生きてちゃダメな人だ」という極端な思考に陥ります。

よくよく考えてみれば、「こんな私」がダメなら「どんな私」ならいいの?って話です。今思い浮かぶのは、しっかり働いて、結婚して子どもを産んで、親のほしいものを買って恩返しすること。でも、そうじゃなきゃ親は喜ばないかといったらそうではなくて。

糸井さんはこう言います。

ぼくは、「親」が子にどうしてもと頼むのは、
「親より先に死んではいかん」ということだけだと思う。
ずっと前から、そう思い続けている願いごとです。

「親より先に死なない」

これは私の人生の目標。希死念慮が強かったときもこの思いを糧に何とか過ごしてきました。

この願いを叶えられたら親孝行になるのかな。そう思うと、ちょっと勇気が出ます。これさえ忘れなければ、多少は思い通りにいかなくても大丈夫なのかもしれません。

誰かのために生きるんじゃなくて、自分のために生きる。
自分で自分を喜ばせてあげる。

そうやって過ごしているうちに、周りも笑顔になってたらラッキーだよね。

そんな感覚を大切にしていけたら、心から笑えるようになるのかもしれません。

親や他人の意見ばかりに気を取られていると、自分らしい生き方を見失ってしまいます。「誰に何て思われてもいい」と言える強さを持てたら、糸井さんみたいに包容力のある自由な人間になれるのかなと思います。

最後のこの言葉がその象徴です。

「変人」って思われても、あんまりその被害ってないよね。

うん、やっぱり糸井さん、好きだなぁ。

 

【付記】
この記事を書きながら、親のいない人はどうなんだろうと考えました。それぞれの事情によって感じることは違うと思います。私が想像する以上に複雑な思いを抱えて苦しんでいる方もいらっしゃるでしょう。でも、きっと「人に誇れる自分でいたい」という思いは共通なんじゃないかなという気がします。自分の心にある親の存在。あるいは、自分と関わる人々の存在。親に限らず、自分の大切な人たちに笑顔で「ありがとう」と言える生き方をすることが一番の恩返しになるのかなと感じています。

4 COMMENTS

とむ

『親孝行』という文字を見て、「あ~、この記事は読むと凹むだろうからスルーしようかな。」と思いましたが、読んでみて良かったです。

僕も、知らず知らずのうちに、親の期待(するであろう)の人生を過ごしてきたと思います。
進学、就職、同居、など、その時その時の決断は自分の意思でしてたつもりが、気付けば『~するべきだ』にとらわれ、『~したい』をどこかでおろそかにしていたと思います。
いわゆる、いい子ちゃんをしていたわけですね。

その選択に後悔はしていませんが、結果として親に頼ることになってしまっている現状に憤りを感じます。

『生きる目的がわからない』とカウンセラーさんに相談した時、『人は生きてるだけでいい』と言われましたが、その真意が飲み込めず悶々としました。
しかし、『親より先に死なない』ことなら、何かスッキリした気がします。

糸井さん、僕も好きです。
そんな深みのある大人になりたいな、と、またしても欲をかく思考にふたをして、とりあえず日々を生きていたいと思います。

気づきをありがとうございます。

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ナミ

>とむさん

コメントありがとうございます。

私も親孝行について考えると大抵へこみます。なかなか危険なキーワードですよね。それにもかかわらず、この記事を読んでくださったことに感謝。

そうなんです、自分でも気づかないうちに「いい子ちゃん」になってて。私も「~すべきだ」という思考にはかなり支配されてきましたね。今は、この支配からの卒業~!ともがいているところです。

後悔はしていないけれど、現状に憤りを感じるということについても、同感です。このやりきれなさは一体どうしたらいいんでしょうね。

生きる目的、私もいまだにわかりません。「意味なんてないよ」という答えが今のところしっくりきていますが、「親より先に死なない」だと、より具体的でわかりやすいですよね。

糸井さん素敵ですよね~。そして、とむさんも深みのある人だと思いますよ。だって、ここまで大変な思いをされてきたわけじゃないですか。そういう苦悩を肯定することには抵抗がありますが、とむさんの優しさや感性はパワーアップしているのではないかと。

でも確かに、欲をかきすぎると自分を苦しめてしまうこともありますよね。私も気を付けないと。「ほぼ日」のようなほっこり感、「~したい」という素直な気持ちを大切に日々を過ごしていきたいものです。

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ラミンバ

ナミさん、初めまして…
私は去年の夏からうつになりぶっちゃけ去年は地獄でした。
でも家族や友達や先生のおかげで今年から少しずつ良くなり、今月から仕事も始めました‼︎
本当に辛い時ナミさんのブログに何度も助けられました。
まだ病院には通っていますが薬も減って順調です。
だから今辛い思いをしている人にも「大丈夫」と自信を持って言えます‼︎いい人はやめました笑
自分を1番大切に☻
ナミさん、ありがとうございました‼︎

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ナミ

>ラミンバさん

初めまして。コメントありがとうございます。

地獄の日々を乗り越えて、今は仕事ができるまでに回復されたとのこと。大変なこともあったでしょうし、たくさんの努力を重ねてこられたんだと思います。これまでのことが良い結果につながって本当に良かったですね。ラミンバさんの喜びの声を聞けてすごく嬉しいです。

このブログを見てくださったことも感激です。こうしてあたたかいメッセージをいただき、私の方こそラミンバさんに励まされています。ありがとうございます。

こうやって周囲の人への感謝を忘れないラミンバさんには、きっと素敵なことがたくさん起りますね。「大丈夫」の言葉にも優しさと力強さを感じます。「いい人」から「愛のある人」にパワーアップ!って感じでしょうか。う~ん、素敵です。

自分を大切に、笑顔で日々を過ごしていきたいですね。

お身体に気を付けて、お仕事行ってらっしゃいませ。陰ながら応援しています。

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