あなたが今、抱えている悩みは何ですか?
うまく言えないけど、モヤッとしていることはありませんか?
何でもいいから、ヒントが欲しい。
そんな人(私だ!)が手に取りそうな本を読みました。
タイトルの通り、本好き女子のお悩みに回答する本書。相談者の気分に合いそうな本を3冊づつ紹介していくスタイルです。
著者は南陀楼綾繁さん。なんだろうあやしげ。南陀楼さんは、一箱古本市というイベントの発案者で、全国のブックイベントに足を運び、出版や本に関するあれこれをフォローするライター・編集者、だそうです。
一箱古本市とは、一日だけの「本屋さんごっこ」。参加者は、ひとつの箱に自分が選んだ本を並べて売ります。フリマみたいな感じかな? 今やこのイベントは全国に広がっているのだとか。
そんな一箱古本市で出会った女性たちが登場する本書。面白かったです。
共感できる悩みは「わかるな~」と仲間意識を持って読めるし、自分とは全然違う人生を歩んでいる人の話は、「そんな生き方もあるのか」と刺激をもらえます。もちろんそこまで突飛は話はないのですが、「人生いろいろだなぁ」と改めて感じられて、しみじみと時間の流れに思いを馳せると言いますか。
そして、お悩み回答の最後に提示される3つの本がまた興味深い。テーマに沿った選書は「へぇ、この作品とこの作品が並ぶか~」と感心するし、今まで知らなかった本との出会いもあります。気になった本を「読みたいリスト」に登録しながら読み進めるのがワクワクして楽しい! この瞬間が私にとっての幸せなのかもなーとも感じました。
ズバリ言わない回答に癒やされる
特に「ここが印象的だった!」という強烈な部分はないのですが、いろいろな人の人生を少しずつ垣間見れるのが面白いです。色んなフレイバーが詰め合わせになったお菓子のアソートパックを食べてるみたい。
南陀楼綾繁さんの押しつけない回答がまたいい感じ。優しく肯定しつつ、自分を下げることで相手を持ち上げたり、さりげなくふわっと人柄の難点を指摘してみたり(短所は長所になりうるよね的なニュアンスで)。行きつけの喫茶店でたまに話す、気のいい穏やかな常連さんみたいなイメージです。
ソフトな語り口が心地よく、安心して読み進められます。
人生のヒントが見つかる…かも?
『本好き女子のお悩み相談室』は、本(小説やエッセイ)が好きな人は楽しく読めると思います。
反対に、「小説とか興味ない」「おすすめ本の紹介とかいらない」「具体的な解決策を教えてくれ」という人は、ガッカリする内容かも。端的な答えは示されていないから。
これについては、南陀楼さんも「本というのは即効性のあるものではない」と言っています。受け取った何かしらのものがじわじわじわと染み込んで、ふとしたときに思い出す、ささいなきっかけで腑に落ちる、本ってそういうものなんですよね。もちろん、稲妻が走り天啓を得た、みたいなこともたまにあるんですけど。
あとは、モヤッとした悩みを抱えている人も、何かヒントが得られるかもしれません。この本に登場するのはすべて女性ですが、性別関係ない悩みが多いので、あまり気にせず読めます。
どんなブックイベントで出会ったか、イベント内容や土地柄も紹介されているので、一箱古本市に興味がある人はガイド本としても使えそう。読んでいると、ここもあそこも行ってみたいという気持ちが高まってきます。
「弱ったときは原点に戻るのが一番」
この本に登場する人は、幼少期から本に慣れ親しんでいる人が多くて、それをちょっと羨ましく思いました。最近、事あるごとに「もっと本読どけばよかったなぁー」と思うから。まぁ今いろいろ読むようになったからいいんですけどね。
私がうつ病と診断されたのは、約10年前(その後、双極Ⅱ型障害に診断名変更)。
病気になってよかったと思ったことは一度もありませんが、長い長い療養期間に、本を読む楽しさを思い出せたのはよかったと思います。本を読む習慣ができたからこそ、こういう本にも出会えるわけですしね。新たなページをめくるたび、知らなかった世界の扉が開かれる。それが本当に楽しいです。
抑うつ症状が重いときにはページをめくることも困難になりますが、不思議とグイグイ読める本もあるんですよね。言葉で説明できないけれど、引き寄せ合う作品ってあるのかなーと。逆に、あのときには読めたけど今は読めない作品もあります。
そのときの気分にフィットした作品に出会えると嬉しくなるし、心が解放されてスッキリする。それが読書の醍醐味ですかね。
弱ったときは原点に戻るのが一番(p.54)
南陀楼さんの言葉です。ほんとそうだな~と気づかされました。昔好きだった本を読み返したくなります。こういう人を動かす言葉って素敵。
人の話を聞くことで、自分自身のこれまでをふり返ったり、これからどう進んでいくか考えるきっかけになるような本です。
自分だったらどんな本をおすすめするかなー? と考えながら読むのもおすすめです。
更新ありがとうございます。
人の出会いと、本の出会い、なんか似ているような気がする。