直木賞作家・五木寛之さんの本を読みました。
五木さんが普段実践している身体のメンテナンス法について詳しく紹介されています。
と言っても、五木さんはその方法をゴリ押ししているわけではありません。「あなたの生活の楽しみを見つけるヒントにしてくださいね~」というメッセージを伝えるために「私はこんな感じですよ~」と軽く添える感じ。
私は五木さんのこのスタンスが好きです。自然な語り口で、読み進めていくうちにとても心がラクになります。
このブログもそんな穏やかな空間にしたいなぁ~と思いながら、今日も五木先生から盗みを働こうとしている私です。
身体の声を聞く
さて、今日は、体調いかがですか?
身体が重い? ダルい? 頭がボーっとしてる?
嫌な感覚ですよね。でも、それは身体があなたに訴えている大切なサイン。五木さんはこう説明します。
車には車の言葉がある。そのささやきや、苦情や、悲鳴を、ちゃんと聴かなくてはいけません。異音、異臭、異震動。そのどれかを敏感にききとって、故障の前ぶれと判断する。
人間の身体も同じことです。
身体は常に本人に語りかけています。それを仮に身体語と呼ぶことにします。
身体語には、単語の数もあれば、文法もあります。医学はそれを分析する科学です。しかし、文法は知らなくても、会話はできる。
私たちの身体が、毎日毎晩、いろんなかたちで発信している言葉に、謙虚に耳を傾ける必要があるのです。
車の例えはすごくわかりやすいですね。
ガソリンがなくなったら走れない。定期的にメンテナンスも必要。また、急発進、急ハンドルは危険ですし、周囲の状況をよく見て、事故が起こらないように注意しなければなりません。
<参考>
こころとの上手なつきあい方 ~こころのメンテをしよう! | 厚生労働省
こちらのサイトでも、不調の原因を車に例えて、わかりやすく説明しています。(※音が出ます)
細胞たちを優しく包み込む
「身体語」について考える際、こちらの話も参考になります。
先日、こんな説を耳にしました。
人間は、普通の生活をしていても、いろいろと無理がかかってきます。そこで細胞たちが必死に働くのですが、そのなかのいちばん熱意のあるものが、二倍も三倍もがんばって働く。その結果、暴走して「止めてくれー」と悲鳴をあげながら突っ走っている細胞、それこそががん細胞だというのです。
この働き者のがん細胞、あなたと似ていませんか?
さらに、私の頭にはこんなイメージが浮かびました。
私の中に、アメーバやミジンコのような小さな小さな細胞が数えきれない程たくさんいて、その一つ一つが私。その一人一人が組体操をするみたいに、手を取ったり、支えたり、上に乗ったりして、ひとつのまとまりを作っている。
その無数の「私」がしゃべる言葉が身体語。みんな自分勝手に好き放題主張します。泣いたり、わめいたり、叫んだり、笑ったり。
もうぐっちゃぐちゃ。カオス。収集つきません。みんなの意見を聞くのは大変、というか無理。だって私、全能なるゴッドじゃないし。
でも、できるだけ耳は傾けてあげたい。みんなの話を聞いてあげたいって思ってるよ。
……と、そんな感じで、数100兆個の小さな私を見守っていけばいいのかな~と。
※ヒトは、数100兆個の細胞からなる多細胞の真核生物(ウィキペディアより)
人間は元々ゆがんでいる
最近は、うつ病患者さんに認知行動療法を勧める病院が増えているようです。
認知行動療法とは、ガチガチの思考をほぐしてラクな受け止め方を身に付けるレッスン。よく「認知のゆがみを修正する」と表現されます。
でも、今までの考えや行動って「ゆがみ」なの?
五木さんはこう語りかけます。
古い考え方には、「八百八病」というものがあります。
人間の身体のなかには病気のもとが無数にあって、心身が不安定になったときにどれかが出てくるという考え方です。
また、病気のことを「不安」といいますが、これは「バランスが崩れる」という意味でもあるのです。つまり、人はどこかが悪いとき、歪むことでそのバランスを保とうとしているのだ、と考えることもできる。
その歪みを、なぜ歪んだかという原因を考えずに、歪みイコール悪と決め付けるべきではありません。
うん、そうなんですよね。これは精神面でも同じ。
「ゆがみは良くないから直しましょうね」「そういう考え方はダメよ」というアドバイスがあります。
それは間違っていません。ゆがみによって痛みを伴う場合は、負担を軽くした方がいいに決まってます。
でも、人間誰だって多少の「ゆがみ」はありますよね? その癖が「その人らしさ」だったりするわけで。バランスが取れているなら、ゆがんでても良いんじゃない?
「ゆがみをなおす」と言うよりは、「自分の型以外のもの(考え方)を知る」と言った方が私はしっくりきます。
って、こういう細かいこだわりが自分を縛っている側面もあるんでしょうか……うーん。
「なおす」ではなく「おさめる」
「ゆがみをなおす」という表現について考えていると、またまた素晴らしいご意見が。「腰痛キャリア」、五木さまのお話。
それにしても、腰痛なんてものを治すという考えが、そもそも傲慢なのです。人間がそんなもの治せるわけがない。あれは、「なおす」ではなく、「おさめる」と読むのです。
元々あるものが、表に出てきて、障害が出てくる。それをなんとか説得して内側に引っ込んでもらう。それが「治(おさ)める」ということです。
「おさめる」なんと優しい響きでしょうか。ゆとりがありますね。
「なおす」と言うと、「背筋をピッと伸ばさなきゃ!」と思ってしまいますが、「おさめる」にはそういった強制力がない。「なおした方が良いけど、まぁ、それなりにね」といったソフトな感触です。
最後に
今日の内容を一言で表すなら、「もっと自分に優しくしよ?」。
強めに縛られるのが好きな方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの方はきっとソフトな方がお好みではないかと思います。せいぜい「痛気持ち良い」ぐらいまでですかね。
具体的な身体のほぐし方については、五木さんの本にイラスト入りの詳しい説明があります。「怠け者でも続く五木メソッド38」「今すぐにできる五木メソッド17」などなど、充実の内容です。ちなみに私はこれらの実践を怠けましたけれども。
では、最後に五木さんのお言葉でお開きとしましょう。
養生は、楽しんでやることがなにより重要だ、というのが私のモットーです。
それも、無理に探し出したりせず、一日の生活のなかから、自然に楽しみを見つけられるようになるのが一番です。
では、また。
<本日の一冊>
五木寛之 (2011)『きょう一日。 非常時を生き抜く究極の五木メソッド55』徳間書店
旧ブログのほうから飛んできました。
うつ病なのですが、先々月より体調がすぐれず、
年末まで入院し、病棟での主治医によると
服薬している薬が多すぎるとのことで、
大幅に減薬し、特に問題なく退院しました。
なのですが、退院後1週間ほどでお金のことがとても
不安になり、「このままではいつか生きていけなくなる」と夜も眠れなくなってしまっていました。
貯金もあるし、少しながら働いてもいますし、
足りない分は障害年金でフォローできているにも
かかわらず、不安でおしつぶされそうでした。
それを貧困妄想というと知り、調べたところ
貴ブログにたどり着きました。
「今はちょっとくらい答えを先延ばしにしてもいい」との言葉に、涙が出ました。
ほんとにそうですよね。
実は足にも障害があってどこででも働けるというのでは
ないので、そのことも不安のひとつだったように思います。
(今のところを辞めたらどうなるんだろう、とか)
お金のことは今はお休みして、しっかり治療して以降と思います。
長々とごめんなさい、本当に苦しかったのですが、
貧困妄想当事者へのメッセージが、ネットでは
なかなか見つからなかったので、うれしくて
沢山書いてしまいました。
この記事で紹介してくださっている本も、ぜひ
入手してみたいと思っています。
本当にありがとうございました。
>Mappyさん
コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。励みになります。
「お金がない!」という考えに取りつかれて、いても立ってもいられない状況。これは私も経験しましたので、そのつらさよーくわかります。とにかく強迫的なまでに考えてしまうんですよね。それでも不安は簡単に消えませんし、病気を抱えながら現状を変えるのは難しいですし……。
Mappyさんがそのような苦しい日々を過ごされてきたことを思うと胸が痛みます。さらに、足の障害があるとのことで、私の知らない苦労もたくさん経験してこられたんでしょうね。よくぞここまで耐えてこられました……! 私はそんなMappyさんを称えます。
不安に押しつぶされそうになったときは、またいつでもここにその思いを吐き出しに来てください。お待ちしていますね。
どうぞお大事に。
貧困妄想って言葉を初めて聞きました。
私は作業所での賃金が少しと障害年金で暮らしています。
それだけでは、足りないのですが同居してる娘が居るので
助けてもらってます。
娘は知的障害者で彼女も障害年金をもらってます。
そして障害者雇用で働いてます。
その娘が近々、自立したいと家を出てグループホームへ入居する
手続きを始めた所です。
そうすると私一人の収入で食べて行けるのか?将来の為の蓄えは?
色々と考えてしまいます。
もっと賃金の高い事業所へ移ろうか、それとも思い切って
一般就労してみようかと日々、悩んでます。
タカちゃんさん、コメントありがとうございます。
うーん、そうですか。経済的な問題は切実ですね。作業所の賃金だけでは厳しいという話は聞いたことがあります。将来のことを考えると不安は広がりますよね。
作業所と一般就労、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、無理のないペースで働けるといいですね。社会制度に詳しいケースワーカーさんなどに相談しながら、タカちゃんさんに合った選択をしていただけたらと思います。
季節の変わり目ですので、どうぞお身体に気をつけてお過ごしくださいませ。