臨床心理士・信田さよ子さんの『コミュニケーション断念のすすめ』という本を読んだので、その感想と私なりに考えたことを書きます。
読み進める中で、「うんうん、やっぱりそうだよね!」と頷ける指摘がいくつかありました。なるほど~と納得する部分も多数。カウンセラーとしての視点だけではなく、一人の女性としての考えも知ることができます。専門書というよりは、エッセイのような感覚で読めました。
人間関係に悩んでいる方、人の心理に興味がある方には楽しめる内容だと思います。
コミュニケーションって何だよ?
この本は「コミュニケーションって何だよ? あン? 言ってみろよ?」という内容だと私は解釈しました。つまり、スマートっぽい言葉で核心を適当にごまかしてるよねーというお話です。
就職活動をしていたときにも、この言葉はよく聞きました。常に「コミュニケーション能力を高めましょう」とアドバイスされましたし、実際に面接で「コミュニケーションとは何ですか?」と聞かれたこともあります。何と答えたかは忘れてしまいました。どうせ中身より受け答えの姿勢や瞬発力を見られているだけだからと、キレイごとを並べてごまかしたんだと思われます。
聞いた側だって、コミュニケーションが何たるかなんてよくわかっていなくて、「何となく耳触りのいい言葉だからとドヤ顔で言ってみたかっただけなんだろ」と今思い出しても感じます。
相手の顔色や空気をうかがって場をなごませることだったり、明るくキラキラした笑顔で良好な人間関係を築いて、物事を無難にこなす能力だったり。必死にそれを手に入れようと頑張っていた当時の自分が気の毒に思えてきます。いえ、もちろん全部が全部悪いことじゃないんですけどね。
そんなこともあって、私の中にも「コミュニケーションって何だよ?!」とモヤモヤしたものがずっとありました。それがどういうことなのか、この本は気付かせてくれました。
自分がダメな人間に思えてしまう理由
コミュニケーションは一人がいくら頑張っても全体の半分にしかなりません。コミュニケーションは一方通行ではなく双方向、相手に自分の気持ちが通じて、さらに相手の気持ちがこちらに伝わることで始めて成立するものだから。
相手によっては、いくら“コミュニケーション能力”が優れていても意思疎通できない場合もあります。
そのときに、コミュニケーションが相互のやりとりだという前提を忘れてしまうと、相手を追いつめてしまうこともあるかもしれません。
そういう状況について、信田さんは「相手を追いつめる4つのセリフ」を挙げています。
相手を追いつめる4つのセリフ
①「努力すればできないことはない」
②「なぜだ、理由を言ってみろ」
③「キミのためを思ってやっている」
④ いかにも論理的な正論
これらのセリフは、親→子、夫(妻)→妻(夫)、上司→部下……というように伝えられます。その「強い」側が主張するコミュニケーションは独りよがりだという信田さんの解説には、まったくその通りだなぁと思わず納得です。
このような質問や励ましにより追いつめられる。
↓
自分を責め続ける。
↓
うつになる。
この感じ、身に覚えがあります。うつ症状がひどくて神経が過敏なときほど、被害妄想が激しく傷ついてしまう。
さらに、人から言われるだけではなく、自分で自分に「やればできる!」「なぜできないんだ?!」と叱咤することもあります。私も同じような言葉をかけてきたんだと思います。他人に期待を押し付けることもありました。あぁ、反省……。
こうやって弱音を吐けない状況まで人を追いつめる心理は、多くの人の心に染みついているものなんでしょうね。悪気はないし、無意識なんですが。
「コミュニケーション」は便利な言葉だけど中身はからっぽ
この本を読んで思ったのは、「コミュニケーション」を結果として捉えるとわかりやすいのかなということです。
親しい人とのコミュニケーションは、お互いの気持ちが通じ合えたときに初めて実感できるもの。いくら「人間関係を良好にするために、コミュニケーションを大切にしましょう」と言っても、しょせんそれは机上の空論。それができたら困ってないし、「コミュニケーションを大切に」って具体的に何をすればいいのかよくわかりません。
多分「じっくり話をしましょう」「笑顔で挨拶しましょう」という意味合いですよね。でも、「コミュニケーション」と言った途端にわかったような気がしてしまいます。それがこの言葉の功罪。軽々しく使わない方がよさそうです。
「達成感」という言葉に似ているかもしれません。「達成感を得るために頑張ろう」と口にしても、それを実感することはできません。ただひたすらに努力を重ねて、その結果として物事を達成する喜びを感じられるわけで。
達成感達成感言ってるだけじゃ意味ないよ、一人でコミュニケーションコミュニケーション言っててもそれはただの独りよがり、中身はからっぽだよ、そんなふうに言われている気がしました。
息苦しさ、刷り込みの苦しみから逃れるために
読み終わってから「コミュニケーション断念」という言葉を噛みしめると、ちょっとだけ気持ちが軽くなっていることに気付きます。今まで自分をガッチリ縛っていたものをゆるめても大丈夫だよということを教えてもらったからです。
常識や世間の価値観は、任意に作られたもの。真理でも本来的なものでもないと信田さんは言います。中でも家族の問題は政治・経済の影響も大きく、私たちはそれを幼いころから刷り込まれてきたわけです。
ある意味洗脳とも言える「こうあるべき」という価値観。そこに自分がどっぷり浸かっていると気付くのは簡単ではありません。それでも、「あれ? 何かおかしいぞ?」「これがすべてじゃないよね」と気付けば少しラクになれます。
闇雲に自分を責めるだけではなく、周囲の環境にも疑いの目を向けてみることが重要。「自己責任」という考えが強い人や、すべてを抱え込んで一人で頑張ってしまう人は特に。
これらの価値観を客観的に知るためには、日本の歴史を学ぶことが役立つという信田さんのアドバイスもあります。明治以降の近代家族論から得られる学びは大きいようです。というわけで、単純な私はさっそく日本史のテキストを引っ張り出してきました。ちゃんと読めるのか不明ですが。
自分を肯定できなくて生きづらさを感じている方、この本を読むことで気持ちを上向かせるとっかかりを見つけられるかもしれません。
ただし、AKB48が大好きな方は信田さんに敵意を抱く可能性がありますので、お読みになる際はご注意ください。韓流・K-POPが大好きな方は共感できる内容だと思います。
そんな自由で楽しい本の紹介でした。おしまい。
<日本の歴史を勉強しよう!>
ナミさんこんにちは!
先日コメントした2日後にうつの波がひきました…!
調子がよくて自分でもびっくりしています。一ヶ月ほどでしょうか…長い長い波でした。
ナミさんの以前のブログエントリにも書いてあったように陽気な波乗りジョニーを目指したいですね。
つらいときにこぼせるナミさんのブログという存在があってしあわせだなあと思います。感謝です!
ひろこさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
調子がよくなったとのことで、ホッとしました。良かったですね。1か月もの長い長いうつの波、お疲れ様でした。
体調が落ち着いたときの喜びは大切にしたいといつも思います。波乗りも簡単ではありませんが、心身を整えながらコツを学んでいきたいですね。